棋士から個人投資家への転身〜桐谷広人さんインタビュー【後編】
株主優待券を消費するため、優待券でパンパンにふくれた「優待財布」を手に東奔西走する、個人投資家の桐谷広人さん。桐谷さんが保有する700社以上の銘柄の中から、お気に入りの優待銘柄を教えてもらいました。
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桐谷さんの大晦日
「月末は忙しいんですよ。優待券の使用期限はだいたい月末ですからね。まして先月は12月(取材した2017年1月時点)。いくつもの優待券の期限が重なり、慌ただしかったですねぇ――」
そう言いながら桐谷さんは大晦日の行動を、振り返ってくれた。
「午前中は品物の検討です。ベルーナやコロワイドはカタログなどから好きな品物を選ぶこともできるのですが、その申込期限でしたから。選び終わったら財布を整理し、利用する見込みのない優待券をひとつ金券ショップへ換金しにいきました」
忙しい大晦日に換金せずとも……と思うのだが、残りの有効期限が「3ヵ月以上」か、「3ヵ月未満」かで買取額に違いが出るそうだ。3月末が有効期限であれば、大晦日までに換金することで翌日以降に換金するより買取額UPが見込める、ということになる。
優待券用のポーチから優待券を取り出す桐谷さん
湯を沸かすほどの熱い優待愛
「昼食はファミリーレストランの『和食さと』ですね。サトレストランシステムズの株主優待でもらった食事券を使って昼食をとり、午後は新宿で『湯を沸かすほどの熱い愛』という映画を鑑賞しました」
もちろん映画鑑賞に利用したのも株主優待。武蔵野興業からもらった、この日が有効期限の「新宿武蔵野館映画無料優待券」だ。
「映画を見終えてからヤマダ電機へ行き、こたつとイヤホンを買って帰宅しました。家に着くともう夜でしたから、再び『和食さと』へ行きました。というのも、大晦日が有効期限の5500円分の優待券があって、昼食だけでは使いきれなかったんです。夜はしゃぶしゃぶの食べ放題を注文しましたが、それでも余ってしまい、カツ丼弁当と天丼をテイクアウトしました」
結局この日だけで5社の株主優待を消費したことになる。移動の足となった自転車も、サイクルベースあさひを展開するあさひの優待券を利用して購入したものだ。
桐谷さんお気に入りの優待銘柄を公開!
使い道に困ってしまうほどたくさんの優待をもらう桐谷さん。「あんなふうになりたい」と思っても、「最初はどの銘柄から始めよう」と迷ってしまうかも。
桐谷さんが実際に保有する数百もの銘柄の中から、お気に入りの優待銘柄をピックアップしてもらった。
「まずはオリックスですね。配当利回りが2%台後半で、さらにカタログギフトなどの株主優待がもらえるためずっと保有しています。私が買った時の株価から大きく上がったわけではありませんが、株主優待と配当で充分もとはとれています。一昨年は、カタログギフトからすみだ水族館の年間パスポートを2枚もらいました。素敵な女子と一緒に行ければよかったのですが行く相手が見つからなかったので、仕事先の女性にプレゼントしました」
すみだ水族館の年間パスポートは大人1枚4100円なので、2枚で8200円分ということになる。
「優待は女性へのプレゼントにもいいですね。シーボンでは、自社製品の育毛剤はもらいましたが、サロンの無料体験招待は妹にプレゼントしました」
優待新設の発表直後に即購入した銘柄も
「クリエイト・レストランツ・ホールディングスは、株主優待を新設した2012年、発表されてすぐに買いましたね」
前回、桐谷さんが教えてくれた優待投資のコツは「いいなと思う株主優待の新設があったらすぐ買うこと」だった。
「ブロードリーフは2016年11月に株主優待の新設を発表しました。いい内容だったので、これも発表直後に買いました」
株価が横ばいでも優待があれば楽しめる!
「私がサンリオを最初に買った時、株価が2800円くらいでしたが、業績悪化で一時2000円を割ったことがありました。『アナと雪の女王』大ヒットのあおりで欧州のサンリオの売り場が縮小されたことも一因だったようです。そんな風に安くなったときに100株追加で買って、上がったところで売却するんです。優待用に100株だけは残しておきますが」
このように細かな売買も合わせて優待を楽しむのは、やや上級者向けかもしれないが、慣れてきたらチャレンジしてもいいかもしれない。
「山喜は優待の内容はいいし、IR(投資家への広報活動)にも熱心ですが、株価はあまり上がりません。ただIRに熱心ですから、そう簡単に株主優待を廃止したり改悪することはなさそうです。キタムラも優待は魅力的ですが、買値からあまり変わらないですね」
優待が魅力的な銘柄だったら株価は下がらないでくれれば御の字だったりもする。株価横ばいでも優待、それに配当の楽しみがあるわけだ。
「配当が魅力的なのはディア・ライフですね。配当利回りだけで3.8%あるのに、優待品として1000円相当のQUOカードがもらえます」
投資は「経済へ貢献したお礼」、快く受け取ろう
こんな調子で優待について話し始めると、桐谷さんはノンストップ。驚くべき記憶力で銘柄や優待の内容、自分の買った値段などを繰り出していく。
ヤマダ電機は「薬や食品などの日用品も売っている店舗があるので使い勝手がいい」し、カッパ・クリエイトは「冒頭で紹介したコロワイドのグループ会社ですが、コロワイドの優待よりもお得感がある」。自社ベーカリーの優待券がもらえるアクトコールは「100株なら2000円相当ですが、200株だと8000円相当になる」――。
桐谷さんをそこまで熱くさせる優待投資、その魅力とは一体?
「株はギャンブルではないんですよ。私のイメージとしては、『いいな』と思った会社にお金を預けて運用してもらうことに等しい。その会社を応援する意味で株主になるわけですから、日本経済に貢献することにもなる。株主優待や配当は、日本経済に貢献したお礼としてもらうものです。若い人にもどんどん挑戦してもらいたいですね」
信用取引やバブルなどを経験し、最終的に桐谷さんが選んだ株主優待。桐谷さんのお気に入り銘柄以外にも、遊園地で使える優待など、優待の種類はとても幅広い。優待の検索ページなどを活用して、あなたも優待生活を始めてみてはいかが?