トラブ語文法(要約)


1.アルファベット

・母音
 a, e, i, o, u の5個で、日本語とほぼ同じ発音です。

・子音
 b, c, d, f, g, h, j, k, l, m, n, p, q, r, s, t, v, w, x, y, z の21個で、ほとんどローマ字読みです。
 ローマ字と違う読み方をするのはc, q, x の3個で、それぞれ英語の「ts」「ch」「sh」に当たります。

・大文字について
 英語と変わりません。文頭、固有名詞は大文字で書き始めます。

2.発音

トラブ語では音の長短が母音・子音ともに区別されます。
母音はそれぞれ明確 (eやi は口を横に引き、oやuは口を丸くします) に発音します。
二重母音は存在しません。日本語のように2音節として数えます。
そして、一語一語はっきりと発音します。

3.アクセント

トラブ語のアクセントは高低アクセントです。
アクセントの位置は規則的なのでそれほど難しくありません。

例えば、日本語のアクセントは語によって位置が異なり複雑な体系をもっていますが、
トラブ語では第一音節にアクセントを置きます。

4.語順

トラブ語の基本語順は「主語・目的語・動詞」の日本語(韓国語、トルコ語など)と同じSOVです。
トラブ語は「主格(は、が)・対格(を)」にあたる語は基本的に省略します。

5.品詞

トラブ語の品詞は 名詞、代名詞、動詞、助動詞、準動詞(動名詞・動形容詞・動副詞)、
形容詞、数詞、副詞、後置詞、接続詞、疑問詞、間投詞 の12種類です。
品詞とは別に接辞があり、それもトラブ語の文を作るのにとても重要な要素です。

6.名詞

名詞とは、「石」、「りんご」などといったあらゆる事物を名前で表す語です。
トラブ語では、格変化や人称変化といった、いわゆる屈折はしません。
文法的な関係は語幹に接辞・語尾などをつけて表します。

1) 数

トラブ語では、単数と複数の区別は基本的にありません。
ただし、代名詞では複数なら複数形となります。

7.格

*トラブ語では「格」にあたる語は後置詞で表しますが、便宜上この項目で取り扱います。
 トラブ語で頻繁に出てくる格には、主格(nun)、属格(van)、与格(al)、対格(os)などがあります。
 属格と与格は特に出てきます。

*属格と与格は英語の「所有格」、「目的格」に当たります。
 主格は強調を除いて普段は省略します。
 対格は基本語順(あるいはSVO)である場合は省略します。

8.代名詞

代名詞とは、名詞の代わりとなる語です。
トラブ語の代名詞は、人称代名詞と指示代名詞の2つに大別されます。

1) 人称代名詞

人称代名詞とは、私、僕、君、あなた、彼、彼女 にあたる言葉を言います。
トラブ語の人称代名詞は以下のとおりです。

単数 複数
一人称  ji 私  jes 私たち
二人称  ni あなた、君  nes あなたがた、君たち
三人称  ti あの人(彼、彼女)  tes あの人たち(彼ら、彼女ら)
四人称  it それ、それら(例外として、「四人称」は、単・複同形です)

三人称のti (tes)は、男性・女性の区別がありません。
「彼」と強調したいときは"ti nam"(namsong「男」から)、「彼女」は"ti yo"(yosong「女」から)

四人称のitは前に一度出てきた語、句、節の代わりをします。

2) 指示代名詞

指示代名詞とは、これ、それ、あれ などにあたる言葉を言います。
トラブ語の指示代名詞は以下のとおりです。

単数 複数
近称  ez これ  ezes これら
遠称  az それ、あれ  azes それら、あれら

近称とは、対象となるものが物理的あるいは心理的に近い場合に使います。
それに対して遠称は、ある程度距離がある場合に使います。
名詞の前につけて「この本」、「あの花」などと表す場合は、形容詞語尾の-eをつけます。

9.動詞

動詞とは、一般的に動作や状態を表す語です。
機能別に一般動詞、代動詞、存在動詞、否定動詞の4種類があります。
*日本語では動詞によって「与格」か「対格」で表しますが、トラブ語ではすべて「対格」で表します

1) 一般動詞 -er

「話す」や「知っている」といった一般の動詞です。
動作動詞、状態動詞などがこの種類にあたります。

2) 代動詞 der

同じ動作を表す動詞の代わりや、ある動作を表す動詞の代わりに使う動詞です。

・aser と iser について
 この2つの動詞はどちらも「ある動作を表す動詞の代わり」となる動詞です。
 ただ、両者それぞれ用法が異なります。
 aser は「ある物事にプラスに働く動作」の代わりをします。
 「電気をつける」、「傘を差す」、「本を開く」などがそうです。

 一方、iser は「ある物事にマイナスに働く動作」の代わりをします。
 先の例とは反対に、「電気を消す」、「傘をたたむ」、「本を閉じる」などです。
 話し手と聞き手との間で対象物が何であるかを理解しているときなどに使うことが出来ます。
 また、「対象物」を明記することで一般の文章にも使えます。

3) 存在動詞 ser

「ある」、「いる」といった存在を表す動詞です。
一応、コピュラ(~です)として使うことはできますが、基本的に省略します。
なお、人(生き物)か物かといった区別はありません。すべてserで表します。

4) 否定動詞 ner

「ある」、「いる」や「する」(der,ser)の否定を表す動詞です。

10.相

トラブ語の相はすべて時制の延長・補助となる機能語で、分離接辞で表します。
相は動詞の直前に置きます。
受動態と組み合わせるときは"an + 相"の形で表します(「経過」の受動態はankum)。
また、否定を表す no も同じ形で表します(「完了」の否定はnoget)。

将然 sav:ある動作や状態の「する前」を表します。(~しようとしている)
 sav uhser 泳ごうとしている

開始 kat:ある動作や状態の「する瞬間」を表します。(~し始める)
 kat sener 眠るところ

経過 kum:ある動作や状態の「している間」を表します。(~している)
 kum piser 書いているところ

完了 get:ある動作や状態の「した瞬間」を表します。(~し終わった)
 get komer 食べ終わった

影響 tok:ある動作や状態の「した後」を表します。(~した後)
 tok komer 食べた後

*未然は「経過」か「完了」の否定で表します。
 なお、「完了」は現在に完了したことも過去に完了したことも結果的には「過去」を表すので、
 動詞を過去形にする必要はありません。
 「影響」も「完了」の後のことを表すので現在形(非過去)のままです。

11.時制

トラブ語は時制による語形上の変化は基本的にしません。
「昨日」や「今日」、「明日」などといった時を表す語を伴うことで代わりに時制を表せるからです。

また、それらの語がない場合は過去を表す語尾 -ett を -er の代わりに付けられますが、
こちらは任意で、やはり基本的には語形変化はしません。

「時」を表す主な語(副詞は除きます)

 felnen (一昨年)  iknen (去年)  mosnen (今年)  lafnen (来年)
 ikay (先月)  mosay (今月)  lafay (来月)  ikeht (先週)
 lafeht (来週)  felnap (一昨日)  iknap (昨日)  mosnap (今日)
 lafnap (明日)  tahtnap (明後日)  etc.

12.態

態とは、動詞の主語に対する関係を表すもので、トラブ語には能動態と受動態の2つがあります。
受動態は分離接辞 anで表し、動詞の前に置きます。
なお、否定語 no があるときは no と an を一語のように n'an と表します。

・使役
 トラブ語の使役は副詞で表します。
 総合:sosi、利益:ami、損害:imi、自由:lati、強制:varsi の5種類です。
 使役を表す副詞は、動詞の前ではなく、必ず動詞・助動詞の直後に置きます

13.助動詞

助動詞とは、動詞に補助的な意味を追加させる機能を持っている語です。
トラブ語では法性(モダリティ)を表すのに使います。
モダリティとは文が示す内容に対する話し手の判断や心的態度を表します。

助動詞は動詞の後に置きます。

 puvol(can)基本的な意味:~することができる(能力)

 tongol(must)基本的な意味:~しなければならない(強調)

 haftol(have to)基本的な意味:~しなければならない(必要)

 meyol(may)基本的な意味:~してもよい(許可)

 xalol(shall)基本的な意味:~しましょう、~しようよ(勧誘)

 wilol(will)基本的な意味:~してください(依頼、お願い[命令文・婉曲表現])

 xudol(should)基本的な意味:~するべきだ、~するのが当然だ

 wodol(would/used to)基本的な意味:~したものだ
  *否定と疑問で意味が大きく異なります。

 kerol(want)基本的な意味:~したい

 akol(would like)基本的な意味:~してほしい

 ferol(must)基本的な意味:~のはず、~に違いない

 fovol(might)基本的な意味:~するために、~するように

 burol(had better)基本的な意味:~したほうがよい

 yadol(be going to)基本的な意味:~するつもりだ

14.準動詞

準動詞とは、動詞と他の品詞(名詞、形容詞、副詞)の機能を併せ持つ派生動詞です。
トラブ語の準動詞には以下の3種類があります。

1) 動名詞

名詞として使うことができます。動詞語尾に-sをつけて表します。
主に「~する(こと)」と訳します。

 Person al no bilmers fragers nun no zavers.
 わからないことを人に訊くことは、恥ずかしいことではない(恥ずかしくないことだ)

2) 動形容詞

形容詞として使うことができます。動詞語尾に-eをつけて表します。
主に「~する」「~している」と訳します。
補語になる場合は「~の状態で/に、~を~している状態で/に」となり、
日本語としては普通「~して」「~しながら」などと訳します。

 Ti pes al Torabas lehrere person van sadek. 彼はトラブ語を人々に教える人の友人だ。

3) 動副詞

副詞として使うことができます。動詞語尾に-i をつけて表します。
文によって、以下の意味があります。

 目的の意味を表す。「~するために」
  Ti sadek pomoceri aray ayn kum dett. 
  彼は友人を助けるために何でもしていた。

 原因・理由を表す。「~して」「~する(した)とは」
  Ji ni nun ezi kum lavers bilmeri sorpresett.
  私は君がここに来ていると知って驚いたよ。

 様態を表す。「~して」「~しながら」
  Josef nakeri dirett, "Aynnap salam wehder, yah?"
  ジョセフは泣きながら言った、「いつか平和になるかな?」と。

 結果へ導く。「~して(すると)」
  Ti kitap bir get piseri mosti get sener.
  彼女は本を一冊書き終えるとすぐに眠ってしまった。

15.話法

話法とは、他人が話したことばの伝え方であり、
「直接話法」、「間接話法」、「描出話法」の3つの話法があります。

16.形容詞

形容詞とは、「大きい」、「新しい」のように名詞を修飾する語です。形容詞には、
名詞を修飾する「限定用法」と補語になる「叙述用法」の2つの用法があります。
前者は、名詞の前に置き、後者は後に置きます。形容詞の語尾は-eです。

1) 限定用法

 Aze grande hayvan aray? あの大きい動物は何ですか?
 Aze sam grande dentor あの3本の大きな木

2) 叙述用法

 Eze hayvan veri piene. この動物はとても小さい
 Eze xirket veri mosene. この会社は非常に古い

17.数詞

数詞とは、(数字の)数を表す語で、使い方は他の言語とそれほど変わりません。

1) 1~10,000の数

 1 bir  2 dos  3 sam  4 yon  5 bex  6 hat  7 qet  8 pal  9 nof  10 ten
 100 pek  1000 mil  1.0000 bir wan

*トラブ語では4桁ごとに". "で区切ります。以下は、単語での区切り方です。

 21 dosten-bir  120 pek dosten  1985 mil nofpek palten-bex
 7.9854 qetwan nofmil palpek bexten-yon

2) 0と10,000以上の数

 0 nul  1億 bir wok  1兆 bir qow  1京(1兆の1万倍) bir key

*「0(ゼロ)」は0と表記し、「まったく何もない」という意味では、nul-nul(nuli)となります。

 9.4608.0000.0000 (9兆4608億) nofqow yonmil hatpek-palwok
 1 et 0. 1と0。
 Ezi, nul-nul. ここにはまったく何もない。

4) 数詞を使った主な表現・1(時間表現)

標準(24時間制)
 0 : 00/24 : 00 dosten-yone cayt
 1 : 00 bire cayt
 1 : 10 bir et ten (正式にはbir et tene cayt)
 2 : 15 dos et ten-bex/dos et ervah
 8 : 30 pal et samten/pal et ihban
 14 : 37 ten-yon et samten-qet
 17 : 45 ten-qet et yonten-bex/ten-qet et samervah (15分が3つで45分)
 23 : 52 dosten-sam et bexten-dos

その他(12時間制)
 午前 1: 00 bir a.m. (bire cayt)
 午後 1: 00 bir p.m. (ten-same cayt)

*a.m.は"ahm"、p.m.は"pahm"と読みます。
 15分はervah、30分はihbanと置き換えることができます。

5) 数詞を使った主な表現・2(その他)

序数、分数、倍数、群数の表現

 序数:-e (bire ある、第一の)  分数:-am (samam dos 3分の2)
 倍数:-ed (tened 10倍)  群数:-ut (dosut 一対の)

年月日の表現
2006/11/1(水) ten-bir ay bir nap dosmil-hat(nen), dey yon  11/1/2006(Dy.4)

18.副詞

副詞とは、動詞・形容詞・副詞・文などを修飾する語です。副詞の語尾は-i です。
副詞には、本来副詞と派生副詞の2種類があります。
前者は場所・時間・様態・程度などを表し、後者は他の品詞から派生した副詞をいいます。

 sudeni もう(すでに) sempri いつも baxki 他には varmi 確かに
 glatti ~でさえ  ihci いったんhayli なかなか

19.比較

比較とは、2つ以上のものの程度・数量・性質などを比べるといった表現です。
トラブ語には、優劣比較、同等比較、最上比較の3種類があり、接続詞で表します。

・優劣比較(kuyn)
 (肯定文)Yuki jammale kuyn ti yo. ユキは彼女よりも美しい。
 (否定文)Ti yo no jammale no kuyn Yuki.
       彼女はユキよりは美しくない。(ユキの方が美しい)

・同等比較(seym)
 (肯定文)Ti alte seym John. 彼はジョンと同じくらい背が高い。
 (否定文)Ti no alte no seym John. 彼はジョンと違って背は高くない。(ジョンの方が背が高い)

・最上比較(mays)
 Yuki jammale yosong mays eze vahros in. ユキはこの町で一番美しい女性だ。

20.後置詞

後置詞とは、名詞の働きをする語の後ろに置いて、その名詞と他の語をつなぐ働きをする語です。
使用頻度の高い後置詞をいくつか例に挙げます。

 iz ~から el ~まで(場所) hasta ~まで(時間) noyn ~について
 neben ~のそばに aydan ~に加えて bon ~の上(に接して) nad ~の上(で離れて)
 in ~の中に pod ~の下 piso ~の後ろに

21.接続詞

接続詞とは、語・句・節をつなぐ働きをする語です。
機能別に等位接続詞、従位接続詞の2種類があります。

1) 等位接続詞

語・句・節を対等の関係でつなぐ接続詞です。

 et ~と~、そして mas だが、しかし aw ~か~、それとも

2) 従位接続詞

文中に名詞や副詞の働きをする節(従属節)とその主節をつなぐ接続詞です。

名詞節を導く接続詞
 dat ~ということ apakah ~かどうか

副詞節を導く接続詞(副詞由来、後置詞由来などの接続詞もあります)
 dopo ~後 antes ~前 hasta ~までに katun ~のように qeni ~(する)とき
 sejak ~以来 saht ~(する)間に koska だから~
 als たとえ~でも dow ~だけれど

22.疑問詞

疑問詞とは、「だれ」、「なに」、「どこ」にあたる語です。
トラブ語には、以下の7種類があります。英語と異なり、疑問詞は文のどこにでも出てきます。

 qi だれ quz どれ quzi どこに qeni いつ qadi なぜ posi どんな aray 

23.間投詞

間投詞とは、感情の起伏によって無意識にでてくることばです。

使い方が日本語や中国語に近い語
 mah (疑問文の文末に使って「~ですか?」と丁寧かつ明確に伝えることが出来る)
 kah (相手の同意を誘う「でしょ?」など。目上の人に対しては lah のほうが良い)
 nah (日本語で「じゃあ/では」のような表現)
 yah (呼びかけでは「おい」。それ以外では語気を和らげるなど一番用途が広い)
 lah (文末に置くことで語気を和らげ、yah よりも婉曲的な意思を伝えることが出来る)
 leh (文末に置き、依頼・提案をはじめとする命令を婉曲的に伝える) 

24.接辞

接辞とは、ある語の前や後にくっついて、その語の意味を限定したり変化させたりする
機能語の一つ
です。接頭辞、接尾辞、分離接辞の3種類があります。

1) 接頭辞

単語(語幹)の最初につける接辞です。

 nem- (元の語から反義語を作ります) [nem- konomer] nemkonomer 嫌う
 re- (「再度」「再び」を表します) [re- fazer] refazer 作り直す、改造する
 tem- (「とても古いもの」を表します) [tem- torabas] Temtorabas 古典トラブ語

2) 接尾辞

単語の終わりにつける接辞です。品詞語尾などの「語尾」とは区別します。

 -al (「国」を表し、国名を作ります) [japan -al] Japanal 日本(国)
 -as (「語」を表し、言語名を作ります) [torab -as] Torabas トラブ語
 -av (「子」「子孫」を表します) [xirket -av] xirketav 子会社
 -im (「民族」「国民」「人」を表します) [amerik -im] Amerikim アメリカ人

3) 分離接辞

本来は接頭辞、接尾辞だったものが、表記上の問題で分離した接辞です。
*「相」を表す分離接辞は別途に記載しています。

 an (動詞の前に置いて「受動態」を作ります) [an + saranger] an saranger 愛される
 no (単語の前に置いて「否定」を表します) [no + laver] no laver 来ない

25.文

文には、平叙文、疑問文、命令文、感嘆文があります。

この記事は、もう少し詳しい例文付きの記事より要所だけを抜き取ったものです。
「速習」に近いですが、少し異なります。この記事はあまり役に立たないかもしれません。

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