文法記事2


10.相

トラブ語の相はすべて時制の延長・補助となる機能語で、分離接辞で表します。
相は動詞の直前に置きます。
受動態と組み合わせるときは"an + 相"の形で表します(「経過」の受動態はankum)。
また、否定を表す no も同じ形で表します(「完了」の否定はnoget)。

将然 sav:ある動作や状態の「する前」を表します。(~しようとしている)
  Yaw, ti sav uhser, mas no der puvol. おや、彼泳ごうとしているよ、泳げないのに。

開始 kat:ある動作や状態の「する瞬間」を表します。(~し始める)
 Bebek mosti kat senett. 赤ちゃんは今眠ったところよ(眠り始めた)。

経過 kum:ある動作や状態の「している間」を表します。(~している)
 Mosti ji sadek al surat kum piser. 今友人に手紙を書いているところです。 

完了 get:ある動作や状態の「した瞬間」を表します。(~し終わった)
 Ohf ! Finali get komer ! ふぅ~!やっと食べ終わった

影響 tok:ある動作や状態の「した後」を表します。(~した後)
 Tok komer mosti no layer ! 食べた後すぐ横にならないで/寝ないで!

*未然は「経過」か「完了」の否定で表します。
 なお、「完了」は現在に完了したことも過去に完了したことも結果的には「過去」を表すので、
 動詞を過去形にする必要はありません。
 「影響」も「完了」の後のことを表すので現在形(非過去)のままです。

11.時制

トラブ語は時制による語形上の変化は基本的にしません。
「昨日」や「今日」、「明日」などといった時を表す語を伴うことで代わりに時制を表せるからです。

また、それらの語がない場合は過去を表す語尾 -ett を -er の代わりに付けられますが、
こちらは任意で、やはり基本的には語形変化はしません。

 God insan xaffer et, insan pop fazer.
 神は人を創り、人は人形を作る。(現在=非過去、無時制)

 Iknap ji kitap sater.
 昨日私は本を買った。(過去のことを表しますが、「昨日」という語があるので動詞はそのままです)

 Lafay ji van sadek kom Fransal in iker.
 来月友人とフランスに行くんです。(未来を表す語尾はトラブ語には存在しません)

「時」を表す主な語(副詞は除きます)

 felnen (一昨年)  iknen (去年)  mosnen (今年)  lafnen (来年)
 ikay (先月)  mosay (今月)  lafay (来月)  ikeht (先週)
 lafeht (来週)  felnap (一昨日)  iknap (昨日)  mosnap (今日)
 lafnap (明日)  tahtnap (明後日)  etc.

12.態

態とは、動詞の主語に対する関係を表すもので、トラブ語には能動態と受動態の2つがあります。
受動態は分離接辞 anで表し、動詞の前に置きます。
なお、否定語 no があるときは no と an を一語のように n'an と表します。

・能動態
 Ti ji saranger. 彼は私を愛しています。
 Namsong ti tappett. 男は彼女を殺した。

・受動態
 Ji ti an saranger. 私は彼に愛されています
 Ti namsong an tappett. 彼女は男に殺された

・使役
 トラブ語の使役は副詞で表します。
 総合:sosi、利益:ami、損害:imi、自由:lati、強制:varsi の5種類です。
 使役を表す副詞は、動詞の前ではなく、必ず動詞・助動詞の直後に置きます

 Ji ti al likor pinett varsi. 私は彼にお酒を(無理に)飲ませた
 Ji ni mortett imi. 私は君を死なせてしまった

13.助動詞

助動詞とは、動詞に補助的な意味を追加させる機能を持っている語です。
トラブ語では法性(モダリティ)を表すのに使います。
モダリティとは文が示す内容に対する話し手の判断や心的態度を表します。

助動詞は動詞の後に置きます。

 puvol(can)基本的な意味:~することができる(能力)
  (平叙文)Ji gambar qekmer puvol. 私は絵を描くことができます
  (否定文)Ji Arabas no faler puvol. 私はアラビア語を話せません
  (疑問文)Yah, ni likor piner puvol? おい、お前酒飲めるか

 tongol(must)基本的な意味:~しなければならない(強調)
  (平叙文)Ji okul iker tongol. 私は学校に行かなければなりません
  (否定文)Ti al az no lehrer tongol. 彼にあれを教えてはいけない
  (疑問文)Ji piner tongol? どうしても飲まなければいけませんか

 haftol(have to)基本的な意味:~しなければならない(必要)
  (平叙文)Ni okul iker haftol. あなたは学校に行く必要があります
  (否定文)Ni no bilmer haftol. 君は知らなくともよい。(知る必要のないこと)
  (疑問文)Ji nun ez sater haftol, yah? 私がこれ買う必要あるの

 meyol(may)基本的な意味:~してもよい(許可)
  (平叙文)Als ti al lehrer meyol. 彼になら教えてもいいよ
  (否定文)Xaffum os ifrati no tapper meyol. 生き物をむやみに殺してはいけませんよ
  (疑問文)Ji azi ister meyol, mah? そこに座ってもいいですか

 xalol(shall)基本的な意味:~しましょう、~しようよ(勧誘)
  (平叙文)Ji kom grahqer xalol ! 僕と一緒に遊ぼうよ
  (疑問文)Ji kom film mireri no iker xalol? 私と一緒に映画を見にいきませんか

 wilol(will)基本的な意味:~してください(依頼、お願い[命令文・婉曲表現])
  (平叙文)Eze gambar qekmer wilol. この絵を描いてください
  (否定文)Az os no direr wilol, yah. それを言わないでくださいよ
  (疑問文)Torabas at faler wilol, mah? トラブ語で話していただけますか
        * at は「具格(方法・手段)」としても使います。

 xudol(should)基本的な意味:~するべきだ、~するのが当然だ
  (平叙文)Ni ti ayamarer xudol. あなたは彼に謝るべきです
  (平叙文)Ji penser nayame person pomocer xudol.
        私は困っている人を助けるのは当然だと思っています。

 wodol(would/used to)基本的な意味:~したものだ
  *否定と疑問で意味が大きく異なります。
  (平叙文)Ji aze park ka bemi grahqer wodol. 私はあの公園でよく遊んだものだ
  (否定文)Ti okul no iker wodol. 彼は学校にどうしても行こうとしなかった
  (疑問文)Ti al az darer wodol, yah? それを彼女に贈ったらどうだい

 kerol(want)基本的な意味:~したい
  (平叙文)Ji Okinawa el iker kerol. 私は沖縄へ行きたい
  (否定文)Ji ti no faler kerol. 彼と話したくないな

 akol(would like)基本的な意味:~してほしい
  (平叙文)Ni al ez xanter akol, yah. 君にこれ(この歌)を歌って欲しいなぁ

 ferol(must)基本的な意味:~のはず、~に違いない
  (平叙文)Ti ezi laver ferol. 彼はここに来るはずだ
  (平叙文)Ti ji bilmer ferol. あの人は私を知っているに違いない

 fovol(might)基本的な意味:~するために、~するように
  (平叙文)Ji ez kaper fovol ti al bire sekret falett.
        私はこれを手に入れるために彼にある秘密を話しました。
  (否定文)Quhfang saken at (ni van) palec no kirer fovol zaher.
        包丁で指を切らないように気をつけてね。

 burol(had better)基本的な意味:~したほうがよい
  (平叙文)Ti os qesti sager burol. 彼に正直に伝えたほうがいいよ
  (否定文)Ni no bilmer burol. 君は知らないほうがいいよ

 yadol(be going to)基本的な意味:~するつもりだ
  (平叙文)Ji tes al Torabas lehrer yadol. 私は彼らにトラブ語を教えるつもりです

14.準動詞

準動詞とは、動詞と他の品詞(名詞、形容詞、副詞)の機能を併せ持つ派生動詞です。
トラブ語の準動詞には以下の3種類があります。

1) 動名詞

名詞として使うことができます。動詞語尾に-sをつけて表します。
主に「~する(こと)」と訳します。

 Person al no bilmers fragers nun no zavers.
 わからないことを人に訊くことは、恥ずかしいことではない(恥ずかしくないことだ)

2) 動形容詞

形容詞として使うことができます。動詞語尾に-eをつけて表します。
主に「~する」「~している」と訳します。
補語になる場合は「~の状態で/に、~を~している状態で/に」となり、
日本語としては普通「~して」「~しながら」などと訳します。

 Ti pes al Torabas lehrere person van sadek. 彼はトラブ語を人々に教える人の友人だ。

3) 動副詞

副詞として使うことができます。動詞語尾に-i をつけて表します。
文によって、以下の意味があります。

 目的の意味を表す。「~するために」
  Ti sadek pomoceri aray ayn kum dett. 
  彼は友人を助けるために何でもしていた。

 原因・理由を表す。「~して」「~する(した)とは」
  Ji ni nun ezi kum lavers bilmeri sorpresett.
  私は君がここに来ていると知って驚いたよ。

 様態を表す。「~して」「~しながら」
  Josef nakeri dirett, "Aynnap salam wehder, yah?"
  ジョセフは泣きながら言った、「いつか平和になるかな?」と。

 結果へ導く。「~して(すると)」
  Ti kitap bir get piseri mosti get sener.
  彼女は本を一冊書き終えるとすぐに眠ってしまった。

15.話法

話法とは、他人が話したことばの伝え方であり、以下3つの話法があります。

1) 直接話法

人が話したことばをそのまま伝える話法です。

 Ti dirett, "Ji nun iker." = Ti "Ji nun iker." dat dirett. 彼は「僕が行くよ」と言った。

2) 間接話法

人が話したことばを自分のことばにして伝える話法です。

 Ti dirett ti mism iker. = Ti ti mism iker dat dirett. 彼は自分(彼自身)が行くと言った。

3) 描出話法

直接話法と間接話法の中間にあたる話法です。

 Ti sonrisere dirett. Ji nun iker ! 彼は微笑みながら言いました。私が行きますよ!

16.形容詞

形容詞とは、「大きい」、「新しい」のように名詞を修飾する語です。形容詞には、
名詞を修飾する「限定用法」と補語になる「叙述用法」の2つの用法があります。
前者は、名詞の前に置き、後者は後に置きます。形容詞の語尾は-eです。

1) 限定用法

 Aze grande hayvan aray? あの大きい動物は何ですか?
 Aze sam grande dentor あの3本の大きな木

2) 叙述用法

 Eze hayvan veri piene. この動物はとても小さい
 Eze xirket veri mosene. この会社は非常に古い

17.数詞

数詞とは、(数字の)数を表す語で、使い方は他の言語とそれほど変わりません。

1) 1~10,000の数

 1 bir  2 dos  3 sam  4 yon  5 bex  6 hat  7 qet  8 pal  9 nof  10 ten
 100 pek  1000 mil  1.0000 bir wan

*トラブ語では4桁ごとに". "で区切ります。以下は、単語での区切り方です。

 21 dosten-bir  120 pek dosten  1985 mil nofpek palten-bex
 7.9854 qetwan nofmil palpek bexten-yon

2) 0と10,000以上の数

 0 nul  1億 bir wok  1兆 bir qow  1京(1兆の1万倍) bir key

*「0(ゼロ)」は0と表記し、「まったく何もない」という意味では、nul-nul(nuli)となります。

 9.4608.0000.0000 (9兆4608億) nofqow yonmil hatpek-palwok
 1 et 0. 1と0。
 Ezi, nul-nul. ここにはまったく何もない。

3) 日常範囲外のあまりにも大きな数(トラブ語文法とは関係ありません)

 1垓(1京の1万倍) bir gay  1秭 bir xih  1穣 bir joh  1溝 bir kow 1澗 bir kan
 1正(1澗の1万倍) bir seh  1載 bir say  1極 bir gok

*以下は実際の日本語とは異なる命数で表記しています。
 1万極 bir wangok  1億極 bir wohgok  1兆極 bir qowgok  1京極 bir keygok
 1垓極 bir gaygok  1秭極 bir xihgok  1穣極 bir johgok  1溝極 bir kowgok
 1澗極 bir kangok  1正極 bir sehgok  1載極 bir saygok  1極極 bir gohgok

 1永 (10100) bir gohgol  2永 (10200) dos gohgol  10永 (101000) ten gohgol
 *gohgol は10100を単位とします。

4) 数詞を使った主な表現・1(時間表現)

標準(24時間制)
 0 : 00/24 : 00 dosten-yone cayt
 1 : 00 bire cayt
 1 : 10 bir et ten (正式にはbir et tene cayt)
 2 : 15 dos et ten-bex/dos et ervah
 8 : 30 pal et samten/pal et ihban
 14 : 37 ten-yon et samten-qet
 17 : 45 ten-qet et yonten-bex/ten-qet et samervah (15分が3つで45分)
 23 : 52 dosten-sam et bexten-dos

その他(12時間制)
 午前 1: 00 bir a.m. (bire cayt)
 午後 1: 00 bir p.m. (ten-same cayt)

*a.m.は"ahm"、p.m.は"pahm"と読みます。
 15分は ervah、30分は ihban と置き換えることができます。

5) 数詞を使った主な表現・2(その他)

序数、分数、倍数、群数の表現

 序数:-e (bire ある、第一の)  分数:-am (samam dos 3分の2)
 倍数:-ed (tened 10倍)  群数:-ut (dosut 一対の)

年月日の表現
2006/11/1(水) ten-bir ay bir nap dosmil-hat(nen), dey yon  11/1/2006(Dy.4)

18.副詞

副詞とは、動詞・形容詞・副詞・文などを修飾する語です。副詞の語尾は-i です。
副詞には、本来副詞と派生副詞の2種類があります。
前者は場所・時間・様態・程度などを表し、後者は他の品詞から派生した副詞をいいます。
ここでは、使用頻度の高い副詞をいくつか例に挙げます。

 Ti sudeni azi ser? 彼はもう(すでに)あそこにいるのですか?
 Ni sempri kahse, kah? 君はいつも怒っているな(そうだろ?)。

 Ez monosi? Baxki ner, yah? これだけ他にはないの?
 Varmi ti dirett, "Ji nun tappett." 確かに彼は「俺が殺した」と言いました。

 Eze Ji glatti, aze kitap noget olver puvol. この私でさえ、あの本を読み終えることは出来なかった。
 Als ti ihci kat faler, hayli noget faler.
 彼に喋らせたら(彼はいったん話しだしたら)なかなか(話し)終わらないぞ。

副詞ではありませんが、必要に応じて名詞や後置詞などの語が副詞と同等の機能を持つことが
あります。時を表す名詞(昨日、来年など)がそうです。
これらの場合、その品詞の「副詞的用法」として、副詞語尾はつけません。
また、本来副詞の場合であっても音調を整える理由で語尾がない語もあります。
(aynnap, ayndihfang「どこか」 など)

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