棋士から個人投資家への転身〜桐谷広人さんインタビュー【中編】

  • リアル投資家列伝・ 株主優待を使いこなす株式投資スタイル / 桐谷 広人

「優待投資には20万円あれば充分」と語る、個人投資家の桐谷広人さん。本当に20万円で始められるなら、株式投資を始めるハードルはグッと下がるのではないでしょうか。20万円からの優待投資の始め方について、桐谷さんの実績も交えて教えていただきました。
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ある経営者の誤解

「先日、ある経営者が言っていたんですよ。『30万円で投資したい? たった30万円で投資だなんてムリですよ』と。この人は投資を知らないんだなと思いましたね」

いつも穏やかな桐谷さんが、珍しく語気を強めたのは、「投資には大きな元手が必要」という誤解を正したときだった。

「優待投資なら20万円もあれば充分ですよ。5万円以下で投資できる株主優待銘柄はたくさんあるから、20万円で4社、5社と複数の優待株を買える。大切なのは20万円すべてを 1銘柄に集中させない、ということ。1銘柄への集中投資だと、その会社が潰れたときに資金をすべて失ってしまうかもしれない。でも5銘柄に分散して投資していたら、1社が潰れても別の1社が急成長し、資産は増えるかもしれない。こうした『分散投資』の考え方は株主優待を狙うときにも、とても大切です」

投資の教訓を教えてくれた『鉄腕アトム』

桐谷さんが分散投資の大切さに気づいたのは、小学生のときに観た『鉄腕アトム』の記憶からだった。

「『鉄腕アトム』に、ロボットのエネルギーを吸い取る雪が降ってくる話があるんですよね。その雪にあたるとロボットは動けなくなってしまう。このままだと地球が征服されてしまいます。アトムたちがどう対抗したかというと、小さなロボットがたくさん集まって1体の大きなロボットになるんです。それならば小さなロボットが1体ヤラれても、別のロボットはまだ動ける。まさに分散投資と同じ考え方です」

1人では小さく不安定でも、みんなが組み合わされば安定して大きな力を発揮できる――『鉄腕アトム』でも社会でも、そして投資でも同じことなのだと話す桐谷さん。

20万円から始める優待銘柄への分散投資、最初はどんな銘柄から始めるのがよいだろうか。

「私は『会社四季報』や難しい株の本は見ないし、そもそも読めないので、株主優待や配当利回りが魅力的なら買っていくんです。『そんな株、業績が悪いから買えない』と言われることもありますが、優待や配当が魅力的なら買う。時々は潰れたり上場廃止になる会社もあります。たとえば日本航空。上場廃止を発表したときには買値で1000万円くらい紙切れになりましたが、分散投資していたので他の銘柄の利益でカバーできるわけです。紙切れになる銘柄があっても、買値の20倍になってくれる銘柄もあり、全体としてはジワジワ増やせるのが分散投資です」

どんな優待銘柄に分散するか

細かいことは気にせず、優待に着目して銘柄を選んでいくのが桐谷流のようだ。

「私が目安としているのは『利回り』です。1年の間に株主優待でもらえる商品をざっと金額に換算し、配当と足して株価で割る。それが4%を超えるようなら買おうと思います」

※たとえばある会社の配当利回りが4%ほどで、さらに年1回1000円相当のQUOカードがもらえ、あわせれば4%以上の利回りが期待できるという計算を行う。

配当利回りの数字は株価の変動に合わせて変わる。1株あたり5000円/年の配当が予想される株を、10万円で買うと配当利回りは5%になる。株価が15万円に上昇すると配当利回りは約3%となり、仮に5万円に下落すると配当利回りは10%となる。

「業績が悪くなれば株価も下がりやすく、株価が下がれば配当利回りは上昇します。今は『割高だな』と思う銘柄でも悪材料が出て株価が下がり、結果として利回りが高まることはよくあるので、優待が魅力的な会社ならそんな場面を狙って買います。反対に持っている株の利回りが低くなってくると、株価が割高になりつつあるということなので、一部を売ったりすることもあります」

基本は株主優待や配当を狙っている桐谷さんだが、完全に放ったらかしにするわけではない。ときにはこうして売買も行なっているのだ。

「いいなと思った優待新設は即買い」がコツ

「優待投資のコツは、『いいな』と思う株主優待の新設、拡充があったらすぐに買うことです。たとえばヒロセ通商という会社が株主優待の新設を発表したのは2016年8月の金曜日でした。その時点での株価は100株で10万6700円。ところが非常に魅力的な優待内容だったため週が明けた月曜日には株価が急騰し、私は12万円ちょうどで買いました。しかし、株価はその後も上昇を続け3ヵ月後には25万円まで上昇しました。いい優待を発表すると株価も上がりやすいんです」

株主優待の新設や変更といった情報は証券会社でも得られるし、桐谷さんは取引所の「適時開示情報」を日々チェックしている。

「上場する会社からの重要な情報が掲載されるのが、適時開示情報閲覧サービスです。だいたいは株式市場が終わる15時以降に発表されるので、私は毎日夕方に見ています。決算や人事などの情報も多いですが、株主優待の新設や変更の情報はすべてこのノートに記録していくんです」

そう言って桐谷さんが見せてくれたノートには細かい文字がびっしり。銘柄名や優待の内容、配当などを記録していくそう。

「この『株式売買帳』には日々の売買も記録していくんです。1日の取引を1行にまとめて、『売った株は左側、買った株は右側』に記録しています。このノートが8冊目ですね」

表計算ソフトを使うこともできるが、桐谷さんのように手書きでまとめていくことで愛着も湧いてきそう。投資家デビューを果たしたら、ノートを1冊、用意しておくのもいいかもしれない。

分散投資を心がけながらも、いいなと思った優待は即買いするという桐谷さん。後編ではそんな桐谷さんお気に入りの優待銘柄を一挙公開!もっといろんな優待を探したい人はこちらの株主優待検索ページもチェックしてみよう。

有望企業が続々! ロードサイド出身企業

トレンドの変化をいち早く察知することは株式投資で成功するためのポイントのひとつです。そこで注目したいのが「ロードサイド」。郊外の幹線道路沿いです。今は駅近で見かける、あのラーメン屋さんや大規模量販店も、もとをたどれば郊外で発展し、都心部へと進出してきたロードサイド出身銘柄。「自分は郊外に住んでいるから、トレンドに鈍感だ」なんて思ったら大間違いです。ロードサイド店舗を日々チェックできるからこそのメリットもありそうです。ロードサイド発の注目企業、どんな会社があるのか、見ていきましょう。

ロードサイドから世界へ【くらコーポレーション】

ロードサイドを中心に展開していた回転寿司の「無添くら寿司」。東京だと品川や池袋、大阪だと梅田や天神橋など都心部でも見かけるようになってきました。運営元である「 くらコーポレーション  ()  () 前日終値  () 始値  () 高値  () 安値  () ※株価、指数は最低20分遅れとなります。 」は2001年に上場を果たしており、ロードサイド銘柄の典型的なサクセスストーリーを歩んでいます。

くらコーポレーションの強みのひとつが、独特な商品の開発。「すしやのシャリカレー」や「シャリコーラ」、「牛丼を超えた『牛丼』」といった「おっ?!」と思わせる商品を毎年発表しています。こうした取り組みもあってか、くらコーポレーションは2016年10月期に過去最高益を更新。2017年10月期もさらに利益を増やす予想となっています。

ロードサイトから都心部へ進出するくらコーポレーションですが、最近では、海外への展開も進めていて、すでにアメリカに11店舗、台湾にも5店舗が出店済み(2016年10月末時点)。日本文化の担い手としても期待が持てそうですね。

最新トレンド「郊外型カフェ」で上場【コメダホールディングス】

この数年、ロードサイドで目にする機会が増えたのは「郊外型カフェ」。丁寧に淹れられたコーヒーを広めのテーブルでのんびり味わえることから人気となっています。既存のカフェやファミリーレストランなどによる郊外型カフェへの参入も進んでおり、いわば「ロードサイドの旬」といえる業態です。

そんな中、郊外型カフェの老舗が2016年に上場を果たしました。「コメダ珈琲」を展開する「 コメダホールディングス  ()  () 前日終値  () 始値  () 高値  () 安値  () ※株価、指数は最低20分遅れとなります。 」です。郊外型カフェがトレンドとなったのはこの数年ですが、コメダ珈琲の創業は1968年。東京23区内に出店したのは創業から約40年が経過した2007年のことでした。いまでは全国に700を超える店舗を展開するまでになっています。

すでに中国へ1店舗目を展開(2016年4月)するなど海外にも進出していて、2020年度末には国内外で1000店体制をめざしているコメダホールディングス。コメダ珈琲といえば、デニッシュにソフトクリームをたっぷり乗せた「シロノワール」が看板メニューです。「シロノワール」の味がロードサイドから都心部まで全国津々浦々に根付いていくのか、今後に注目です。

運転が苦手なママも安心!【西松屋チェーン】

ロードサイド店舗への主な”足”となるのはクルマです。クルマでの移動には、渋滞時のトイレ、そして駐車に苦手意識を持っていたりと、心配要素がある人も少なくありません。小さい子どもがいる家庭はなおさらでしょう。

そんな家庭に配慮した立地戦略を採用しているのが「 西松屋チェーン  ()  () 前日終値  () 始値  () 高値  () 安値  () ※株価、指数は最低20分遅れとなります。 」。ベビー用品や子ども衣料の専門店です。西松屋のお店が近所にある人は立地を思い出してみてください。大通りから一本、奥へ入った場所にありませんか? 西松屋の立地はあえて幹線道路沿いを避けているそうです。幹線道路沿いよりも家賃を割安に抑えやすいですし、車通りの少ない脇道なら、運転の苦手な人でも駐車場に入りやすいというメリットもありそう。おもしろい発想ですよね。

西松屋チェーンでは大手電機メーカーを退職したエンジニアなどを積極的に採用しているともいいます。子ども服とは無縁のようですが、モノづくりの経験が豊富な社員の知識がプライベートブランド商品の品質向上にひと役かっているようです。西松屋チェーンの経営戦略、他社とはひと味違うようですね。

今や表参道のランドマークに【AOKIホールディングス】

表参道を歩いていると、ひときわ目を引く洋館風の建物が「アニヴェルセル表参道」。独特な外観や、表参道交差点からすぐの好立地もあって、印象に残っている人が多そうです。あの建物、カフェレストランと結婚式場なのですが、運営元は「 AOKIホールディングス  ()  () 前日終値  () 始値  () 高値  () 安値  () ※株価、指数は最低20分遅れとなります。 」。メンズスーツでおなじみのAOKIです。

意外にも感じますが、AOKIはじつは紳士服だけの会社ではありません。ヨーロッパの邸宅をイメージしたウェディング施設「アニヴェルセル」を全国に展開していますし、南仏のリゾートホテルをイメージしたカラオケ店「コート・ダジュール」や、インターネットやマンガを楽しめる複合カフェ「快活CLUB」なども、AOKIホールディングス傘下の会社による事業。ファッション事業以外からの売上は3分の1を超えています。

1958年に創業し紳士服店としてロードサイドで育ったAOKIですが、今や紳士服業界2位。さらには事業の多様化を進め、表参道のランドマーク的存在にまでなりました。これからの変容も楽しみですね。

「バッドロケーション」を逆手にとった【バルニバービ】

もしも飲食店を出店しようと思ったら、どんな立地を選ぶでしょうか。通行の多い繁華街、自動車の往来が活発な幹線道路沿い、あるいは商業施設内――。いろんな考え方がありますが、かつて材木問屋だった街の一角や印刷工場の跡地、公園など、普通の飲食店事業者が注目しないような「バッドロケーション」への出店を戦略的に進めている会社が、グッドモーニングカフェなどを運営する
バルニバービ  ()  () 前日終値  () 始値  () 高値  () 安値  () ※株価、指数は最低20分遅れとなります。 」です。

バッドロケーション戦略では、店舗の家賃を低水準に抑えられ、また競合店が少ないため、その土地のランドマークとなり集客力の向上が望めるメリットがあるそうです。この戦略もあり、バルニバービの売上は2006年7月期から2016年7月期まで11期連続で増加しています。

ロードサイドとはまた少し違った視点ではありますが、独自のバッドロケーション戦略を武器に全国73店舗(2017年1月末時点)を展開するバルニバービ。ちょっと変わった会社ですよね。気になった人はバルニバービの店舗を探してみて、自分の目と舌でチェックしてみては。

いかがでしたか? 今回は、ロードサイドに着目し企業を紹介していきました。特殊な立地を逆手に取り、商品のアイデアや顧客ニーズの分析により、都心部、更には海外へと事業を展開している企業もありましたね。ロードサイドの店舗から、トレンドの変化に気付けるかも? そんな観点で、投資のヒントを探してみてはいかがでしょうか。

今回のテーマで取り上げた上場企業

くらコーポレーション
コメダホールディングス
西松屋チェーン
AOKIホールディングス
バルニバービ

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