オイコノミア「もしもあなたが“難病”になったら…」[解][字][再] 2018.02.09
(テーマ音楽)おぉ!?又吉さんどなたかにお手紙ですか?
(又吉)「先生良い季節になってきました。
また一緒にサッカーしませんか?又吉直樹」。
手紙の相手は経済学者の松井彰彦さん。
2014年放送の「オイコノミア」ではサッカーを経済学で読み解きました。
又吉さんと一緒にフィールドで汗を流し大いに盛り上がりました。
(歓声)
(歓声)え〜「ご無沙汰しております。
実は私今から1年前に『難病』にかかってしまいサッカーができない身体になってしまいました」。
えっ!難病?驚いた又吉さんは先生の職場である東京大学へ。
えぇ難病ってどういう状況なんでしょうね。
ちょっと想像がつかないですが。
こちらですね。
(ノック)・
(松井)はい。
失礼します。
あっ!あ〜又吉さん。
ご無沙汰してます。
お久しぶりです。
先生お手紙で難病という事でしたが…。
そうなんですよ。
実は1年ほど前に難病にかかってしまいまして。
「心サルコイドーシス」という名前の難病なんですけれども。
そうなんですか。
ええ。
松井先生の病名は「心サルコイドーシス」。
心臓の機能が極端に低下する原因不明の難病です。
発症率は100万人に1人か2人と推定されています。
私の場合はいわゆる徐脈といって脈がですね30とかそれぐらいしか動かない。
そういう状況になってしまって。
で階段も上れなくなって。
それもしんどいという?はいはい。
もう心臓が動かないので血の巡りが悪くなるわけですね。
極端に。
すごい危険な状態ですね。
そうですね。
そういうわけなので心臓が動かないと困るということでちょっとお見せしますね。
ちょっと恥ずかしいですがここに何かポケットみたいになってちょっと膨らみがあるじゃないですか。
これぐらいの大きさのペースメーカー。
をここに中に?ここに。
なるほど。
又吉さん難病と聞いてどんな姿を想像されていましたか?難病ですよね。
僕の周りに難病の人というのがいなかったんで正直僕は松井先生お会いしてちょっと安心したというか。
はい。
もっとこう仕事ができないようなそういう状況にあるのかなと思ってたんで。
難病というのはもう千差万別で私のようにペースメーカーを入れてしまえば割とピンピンしてるというような人間もいてですね。
この難病というのはまあ…言ってみれば…はい。
そんなような状況なんですね。
でちょうど私がこれまで研究してきたテーマにマイノリティーの経済学というのがあってですねまさにその難病も研究対象にしていたんですけれども。
まあ言ってみればまさかその私がですね難病患者になってしまうとはちょっと思わなかったですね。
はい。
いかがですか?変化はありましたか?はい。
こういう研究で当事者の視点というのは大事なのでそういう視点も持てるようになったというのがまあむしろプラスかなとえ〜私は思っていてですね。
正直まだ難病ということがいまいちどういうものなのかよく分かってないという事もあってその先生に対してもですけどどれぐらいどういう距離感でどういう質問が失礼になるのかとかその辺が全然分からないんで。
そうですよね。
まあ例えばインフルエンザとかだったらみんななんか多くの人がかかるからいろんなことが分かるし治るからえ〜治るまで頑張ろうねみたいな言葉もかけやすいんですが難病はなかなかそういったイメージも湧きにくいし。
多種多様なので1つの難病を分かってるからといって別の難病が分かるとは限らない。
WHO世界保健機関によれば難病は世界に5000種類以上あるとされています。
日本では厚生労働省によって現在330種類が指定されていて患者数はおよそ92万人に上ります。
日本の難病患者はどのような生活を送っているのでしょうか。
松井先生の研究仲間を訪ねます。
こんにちは。
(大野)こんにちは。
こんにちは。
はじめまして又吉です。
はじめまして大野です。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
大野更紗さん。
大野さんは24歳のときに原因不明の難病を発症。
本来自分の体を守ってくれる免疫システムが機能不全になる10万人に2人程度の病気です。
大野さんはご自身が難病になったことをきっかけに今は難病患者の生活や治療制度について研究をしています。
私それまで全く難病の事知らなかったんですけど同じ病院に入院している患者さんの中でも国の医療費助成を受けられる患者さんと受けられない患者さんがいらっしゃってでも皆さんすごく大変な病気で大変さは同じなんですけどどうしてこういう不思議な制度が出来上がったのかなと思って研究を始めました。
へぇ〜!難病のその病気の種類によってそういうふうに保障があるないというのは。
はい。
それは…そうか。
それを研究されてるんですもんね。
すごく不思議だと思いますよね。
そうですね。
日本では医療費助成の対象になるのは「指定難病」。
主に次のように「定義」されています。
つまり原因不明であること。
…完全には治らないこと。
患者数が…つまり10万人ちょっとであること。
この他にもいくつかの条件が定められています。
これの1つでも欠けてると駄目なんですか?はい。
この要件を満たさないと指定難病の検討の対象に入らないんですね。
指定難病というのは純粋な医学的な定義ではなくって…うん。
あのう実際患者さんの実態調査をしてみるとですねすごく重症で寝たきりという状態とまあ全く健康という状態のこの間のグレーゾーンの中にほとんどの患者さんたちは暮らしてらっしゃるという事なんですよね。
本当に多様でいろいろなんです。
なるほど。
勝手な僕たちのイメージとはやっぱりちょっと違うんですね。
そうですね。
うん。
今も患者2人に挟まれてますから。
そうですよね。
はい。
なんか僕が一番患者に見えるというね。
いえいえ。
そんなことないですね。
はい。
松井先生も大野さんもすごくお元気そうに見えるんですが治療は今も続いてるんですか?はい。
私の場合はステロイドというのを毎日飲んでいてこれは副作用のある薬なので副作用を抑えるための薬も合わせると全部で5〜6種類毎日。
毎日ですか?へぇ〜!大野さんも治療中?あの私はですねだいぶ症状が安定して今はお薬の量もだいぶ減ったんですけれどもそれでも専門的な病院に定期的に通院をしてます。
はぁ。
検査もしないといけないし薬代とかそういう事考えるとやっぱりどうしても治療費というのがね。
それはかかってきますね。
この高い治療費をですね具体的にどうすればいいのかという経済学的な何か解決策というのはあるんですかね?はい。
1つは重要なのは医療保険ということででただ保険とひと言で言ってもいろいろなタイプがあります。
はい。
そこで今日はちょっと保険を少し考えてみたいと思います。
難病治療を支える保険制度を考えてみましょう。
架空の2種類の保険があるとします。
Aタイプは1回の治療費が5万円までは全額自己負担。
それを超えた分は無料。
つまり保険で補われます。
Bタイプは治療費の合計が1500万円までは3割を自己負担し以降は無料というものです。
え〜又吉さんだったらどちらの保険に…入りますか?う〜ん。
全然違いますもんね。
ええ。
今までね病院に行って5万円ってかかった事ないんですよね。
大きな手術まだした事ないんで。
ああ1回骨折った時でもかかってないと思うんですよね。
はいはい。
ただ僕が気になったのはその5万円までは全額負担じゃないですか。
これが自分の幼少期の頃から高校までの家庭環境とか考えたときにえっ!5万円まで全部払うってなかなか大変やなっていう。
そうですね。
リアルな部分で思ってしまったんですけどそう考えるとA保険が今までの僕の人生で言うと使える時が無かったと。
はい。
B保険のほうが現実的なのかなとは思いますけどね。
うん。
大野さんは?私は断然Aです。
う〜ん。
それはどうしてですか?やっぱりですね難病を発症するっていうまあ大きい人生のリスクの経験を既にしてるのでいかに医療費の負担が個人にとって重いかという事も経験してしまったのでAです。
うん。
え〜実はですねA保険というのはえ〜まあ言ってみれば自動車保険タイプ。
はい。
それに対してB保険というのはですね実は日本の医療保険というのがこちらのタイプになっていて。
実はBタイプの保険だけで難病の治療費を補うのは難しいのです。
私も今回突然難病になってえ〜やはりと思って感じたんですけれども…ええ。
あのそういう気が改めてしました。
いつなんどきそうなるか分からないと。
そうですよね。
私も全く自分がこういう病気にかかると予期してなかったんですけども本当にこう……だなというふうに思ってます。
はい。
そういうふうに事故に遭うようなものだとくじを引いてしまうようなものだと。
まあそういうふうに考えていく人が増えていけばもしかしたら日本の医療保険制度ないしは保険商品というものの中にこのA保険型どちらかというと大きなリスクに備える保険というものが生まれてくるかもしれないと。
それは市場の中で生まれてくるかもしれないしあるいは政府が制度としてきちんと作っていくかもしれませんがまあそういう努力というのはやはり大事かなと。
なるほど。
いうふうに思います。
難病の治療には他にも問題があります。
そもそも何という病気か診断がつくまでが実に大変なんだそう…。
難病の患者さんは治療に至るまでがすごく大変で私自身もそうだったんですけども診断がつくまで実は1年以上かかってるんですね。
1年ですか。
そうなんです。
いろんな大学病院をこう回ってたくさんの科回りましたね。
たくさんの科でもう本当に星の数ほどの検査を受けてまあやっとこう専門医の先生に1年かけて出会って診断がついたというような感じです。
すぐには分からないという事ですよね。
それもありますしやっぱり日本の中でたくさん難病の疾患数ありますけども個別の疾患の…はぁ〜なるほど。
そうですね。
あの私も最初は耳鼻咽喉科から始めてえ〜それからそこでは大丈夫なので呼吸器内科行って最終的に循環器にたどりついてそこでも診断名が出るまでは2〜3か月検査をいろいろしたという事ですね。
でこういった状況というのも実は経済学の分析対象になっていてえ〜私がちょうど専門でやっている「サーチ理論」というのがそれにあたるんですね。
サーチ理論。
はい。
「サーチ理論」とは2010年のノーベル経済学賞を受賞した新しい考え方。
「市場」といえば「需要と供給」というのがこれまでの経済学。
しかしサーチ理論では「市場」を取り引きする相手を探す「場」としてとらえいかに最適な取引相手と出会えるかを考えます。
これは難病の場合だとちょうど自分にピッタリ合うお医者さんに出会える確率ってすごい少ないんですよ。
うん。
なので会ったはいいんだけど大野さんみたいに分かりませんと。
うちでは分かりません。
ちょっとよそ行ってみてみたいな感じでよそ紹介しましょうというとまた家に戻ってですねまた予約をして。
また例えばこの人だったら次の病院にこう行ってみるわけですね。
そういうわけでこういうふうに市場でみんながウロウロしながら相手を探しているという状況がまさにこの難病とかえ〜さまざまな相手自分に合った相手を探すという問題を考えるときに非常に有効な理論。
これって多分又吉さんの世界でもなんか相方を見つける時とかねなんかありそうですよね。
確かに似てるかもしれないですね。
相手がどんな特性があるかとか分からない段階でみんなそれぞれ特にこのなんでしょう芸人の世界に入ったり養成所に入ってから相方を探すというのはこの状態に似てるかもしれない…。
ああなるほどね。
そう。
私はこういうサーチ理論というね人が相方相手を探してウロウロするという理論をある意味で上から目線といいますかその市場の外から眺めて研究していたわけですが今回難病当事者になって何をどうなったかというと私自身がこうサーチ理論のこの中にですね世界に入り込んで。
ああそうか。
私自身がこうやってウロチョロするというねそういう状況になったと。
はい。
はい。
いうところです。
その時先生の頭の中にサーチ理論という言葉は浮かんでたんですか?浮かびましたね。
はい。
論文のこれネタにならないかなと思っていろいろ考えました。
ご自身が大変な状況でも。
はい。
もうこれ論文にできたらいいなと思って。
へぇ〜!そうですよね。
でもホントにリアルなその経験って事ですもんね。
そうですね。
こういう状況で巡り会いたい人にこううまく巡り会うためにはどうしたらいいんでしょうね?私自身はインターネットとかをすごくたくさん使って自分の病名で医学論文を検索してその著者の先生をですねどこに勤めてらっしゃるのかというのを自分で調べたりしましたけど。
へぇ〜!そこまでしないと。
そうなんです。
もう全然見つからないんですね。
はい。
どうしたらいいんやろうな。
そうですね。
だから何も分からないともうホントにどうしようもないんですがある程度自分の病気が分かっているんだけれども専門医がどこにいるか分からないというような場合にはまあ1つだけ多分方法があって自分がこうこうこういう病気ですよというフラグを立ててやるんですね。
で要するに出会いやすくするという事ですね。
あの私その松井先生のサーチ理論のですねフラグを立てるという行動を実際にされてる患者さんに調査で出会いました。
へぇ〜!あっそうですか。
はい。
織田友理子さんという女性の患者さんなんですけれども。
織田友理子さん。
15年前体の中心から遠い部分の筋力が弱っていきついには寝たきりになってしまうという難病。
「遠位型ミオパチー」と診断されました。
患者数は日本の人口の0.00000319%。
全国で300〜400人ほどしかいない超希少難病です。
治療薬はなく国の指定難病からも外れていました。
(織田)お医者さんに診断された時点では生きている間に同病者に会えないでしょうと言われていたぐらい少ない病気なんですけども。
その同病者たちがインターネット上で集まって交流する機会が増えてきて。
織田さんは9年前に患者会を結成。
国の指定難病として認めてもらえるよう署名活動を始めます。
(織田)こんな大変な病気があったんだとかあとは全然知らなかったとかあとはこんな病気なのに何も対応されてないのはおかしいよねっていうことを共感というか。
まあ共通認識をして頂けることが多くなってきたので。
やはりあの潜在的には患者がいくらいても…織田さんたちはおよそ204万人の署名を集め国に提出。
遠位型ミオパチーは2014年「指定難病」になりました。
現在は医師や製薬会社の協力を得て世界初の治療薬の開発にも力を注ぎます。
私の病気は今も完治するわけではないですけど生きている間にどうなるか分からないって思っているので希望を捨てなければはい。
好転していくと思っています。
そう。
まさにこのフラグを立てたことによって同じその病気の患者さんたちも集まってくるしお医者さんもああここにコンタクト取ればという方も出てくるし場合によってはねそれを新たな研究テーマとして選んだり製薬会社の方もまあじゃあ薬作りましょうかということで人が集まってくるっていう。
織田さんのようにフラッグを立てるためには具体的にはどういう事が必要なんですかね?患者さんがフラッグを立てるという時にはもちろん自分から情報発信していくということも大事だと思うんですけれどもまあ有力な協力者を見つけるというかそれはパートナーになってくれる専門医の先生かもしれないし応援してくれる難病じゃない普通の健康な人たちだったりするのかもしれないですけども応援団を見つけるというのも大事なような気がしますけどね。
1人ではなかなか発信力がね。
そうなんです。
大野さんがこの大学で研究を始めたのは2013年。
以来多くの人が支えてくれたといいます。
私2年前までは電動車椅子を使ってここで研究生活してまして。
あっそうなんですか。
そうなんですよ。
ここは入り口が段差だったのをスロープにして車椅子でも入っていけるようにしてます。
なるほど。
そこのドアもですね車椅子だと普通の押戸とかというのはすごく使いにくいんですよね。
なのでここの入り口を自動ドアにして頂いてます。
これでスムーズに入っていけるんですね。
なるほど。
確かにこれが普通のドアだとなかなか大変ですよね。
そうなんです。
大野さんからの申し出を受けた大学はキャンパスに自動ドアや多機能トイレなどを次々と設置していきました。
(アナウンス)「扉が開きます。
ご注意ください」。
大野さんは全部でも提案していくわけですよね?はいちょっと大変ですよね。
そうですよね。
お一人でというかやったんですか?あのうサポートしてくれる大学のスタッフの方がいらっしゃってですね先ほどのフラッグの話ですけど…確かに。
こうやって難病の方の声によって環境を整えるというのはこれからこの学校はねずっと使われていくわけですからこれからの人のためにもいいですよね。
そうですね。
はい。
もちろんね他の難病患者さん障害者の方にとってもプラスですし場合によっては健常者の人たちにとってもプラスになるかもしれない。
よく引き合いに出てくるのはエレベーターなんですけれども特に駅なんかではすごく顕著なんですが昔障害者の方たちが運動して頑張って駅にエレベーターを設置してもらったと。
で今見るとですね結構使ってるのはベビーカーを押しているお母さんとかね結構いろんな方が利用していて障害者とか難病患者によかれと思ってやったことこれが実はそれだけではなくていろんな人にもプラスになっていくと。
難病患者などの少数者つまり「マイノリティー」への配慮が多数派にとっても大きなメリットになるのです。
実はこれまさに私が研究テーマとしてきたマイノリティーの経済学という事と密接に関わってるものなんですね。
でマイノリティー要するに少数派ですけれどもそれが社会のマジョリティー多数派とどうやって関わっていくかそしてどういうふうに声を上げてあるいはどういうふうに行動して社会を変えていくか。
え〜あるいは悪い方向へ持っていかないようにするかそれを考えていくという事は大変重要なことで。
そもそも先生はなぜマイノリティーを研究することにしたんですか?そうですねあのなんか関心があったんですね。
実は私え〜随分転校を子供の頃してましてマイノリティー感をどこへ行っても味わっていたのでどうもその辺りが原点かなと。
あ〜なるほど。
で転校するとどうしてもいじめられないように最初静かにしているとかですね。
特にもう子供の頃というか学生時代ってそれすごくなんかね1つ間違えば大変な事になる可能性があるというか。
そうです。
なんか地獄に落ちるかどうかぐらいの気持ちで。
又吉さんはそういうご経験は?僕は転校とかじゃないですけどどっちかというとこうおとなしかったんですけどほぼ今と同じような感じなんですよ。
子供の頃から。
まあ自分の好きなようにしますしだから目立つんですよね。
はぁはぁ。
子供の頃から先生にも変な質問するし授業を抜けてどっか行くし。
そういうので中学までちょっと浮いてたんですけどまあ高校ぐらいで完璧な何て言うんですか個性を抑え込むことに何か成功した…。
なんかどこに出しても又吉は恥ずかしくないと言われてた時期が確かにあって挨拶礼儀正しさとか結局芸人なったらそれは解放できるんで楽なんですけど。
又吉さんも松井先生も子供の頃から自分を「マイノリティー」だと感じてきたんですねぇ。
ではこのマイノリティーと多数派の関わり方について経済学で考えていきましょう。
まあ難病戻ってもいいんですけれどもせっかくなので転校生という事を題材に話してみたいと思います。
で普通転校生というのを考えるとどうして仲間外れになっちゃうのかというとですね何となくあの転校生なんか嫌な感じとかですね気取ってるとかそれこそさっきの又吉さんの話じゃないですけど目立ってるとかですね。
怖いとかもありますね。
ええいろんなことありますよね。
そうすると嫌な感じがするから話さないと。
なんか嫌な感じというのが原因でそして結果として話さないみたいな因果関係があるというふうにまあちょっと思ってしまいがちなところもあると思うんですけれども。
実際にはそうばかりとも言えないと。
経済学では人々のふるまいをまず「心の中」と「行動」に分けその関係を分析していきます。
ここでは転校生を受け入れるクラスの大多数マジョリティー側を考えます。
「心の中」はあの転校生イメージ良い悪いよねの2つ。
「行動」はあの転校生と話そう!話さない!という2つ。
つまり4つのケースに分類できます。
でいわゆるいじめっ子タイプとしてよく出てくるのはこのイメージあいつ悪いぜ話すのやめようぜっていうそういう感じですよね。
でここは言ってみれば「差別主義者」と。
これはもう嫌い話さないそういう感じです。
はい。
でそれと反対にですねもうとにかくそんな事やめようぜ別に転校生イメージ悪くないよあの子悪くないだから僕は話す私は話す。
そういう子がいてもいい。
それはちょうどこのマス目。
これをここでは「真正進歩主義者」と仮に呼んでおきます。
で他にもただ残り2つパターンがありうる。
この心の中では悪いイメージを持っているんだけれどもまあ話しかけるよと。
つきあいはするよというのがまあいろんな言葉あると思いますが例えば「偽善者」。
ええ。
嫌いやけど話す。
偽善者。
はい。
という感じですね。
このイメージが悪いけれども話すというのは又吉さんは特に?僕は割と偽善というつもりはないんですけどイメージが悪いとされてる人に興味が向く傾向ありますね。
みんなに嫌われてる人とかそのなんか「なんでそんな事言ってくるん!?」という人に対して「なんでそんな事言ってくるんですか?」って聞くタイプです。
多分ね又吉さんこの真正進歩主義者だと思います。
私。
だからみんながイメージ悪いって言ってるような人を見ても全然悪くないじゃん。
だから僕話しかけるよっていう。
ああ。
実はそっちのほうのタイプ。
まだあいてないところが1つありますが。
イメージ良いけど話さない。
はい。
これどんな感じ?いろんなあの何やろ…場面があると思うんですけど…。
はいはい。
どうでしょう。
大野さんどうですか?そうですね。
イメージは良いと思っているけど自分から積極的には行動しないということですよね。
マジョリティーの人の多くはそこのマスに入るような気がしますけど。
ああそうですか。
はい。
はい。
なんかメチャクチャいい人とかに対してのあいつ呼んだらもうあいつ中心のことになるからみたいな事ですか?ハハハッ。
そういうことでもない。
ジェラシーということですか。
あのうこうみんながそういうふうにしてるから私もそうするって流される人が多いんじゃないですかね。
なるほどね。
でこれ実はやっぱり私もこのパターン多いんじゃないかと思っていてここでは「日和見進歩主義者」というふうに呼んでいきます。
これどういう?ええ。
例えば転校生が来たときにえ〜みんなで「あいついじめちゃおうぜ」っていうふうに言いだしちゃうのがこの差別主義者だとしますよね。
でこいつがすごいボスっぽくてちょっと強いと周りの子供たちは何となくそこに引きずられちゃって別に悪くはないんだけどそれ言ってあいつは怒らせると嫌だからっていう…。
そうか大野さんがおっしゃってた流されやすいっていう感じの。
私は逆にクラスの中でみんなが日和見になってですねこう何か決めようとしているのに1人だけ疑問があるともう頑固にですねいやそれは正しくないんじゃないかって事を手を挙げてみんなの前で言ってしまうタイプでしたね。
はい。
まさに先ほどのいろいろなバリアフリー化に貢献したというのはその性格がモロに効いてるわけですね。
そうですね。
そういう人必要ですもんね。
そうですね。
何かそうしないと気になって眠れないという感じなんですよねはい。
大野さんがそういうタイプだったから逆に多くの人はこの日和見的だっていうのが目についた?そうですね。
それはよく感じますね。
ああなるほどね。
そうか。
でこういった事をまさにやろうというのが「ゲーム理論」というか。
ええ。
私が取り組んでいる課題でえ〜まあ因果関係いろいろありえますけれども「イメージが悪いから差別をする」というだけではなくてまあ最初に「差別があるからイメージが悪くなる」とかね。
そういう事もあるし。
でよく最近はね障害者は街に出ようというような話もされます。
で経済学まあ合理的に考えればそれどっちでも同じじゃないのっていう話もあるんですけれどもまあこの図を使って表を使って考えるとですねまあ話さない。
要するに障害者を隔離してしまうとえ〜結局それがいつの間にか障害者に対する悪いイメージにつながっていくというような事もえ〜起こりうる。
はいはい。
え〜というような事で…だから差別が逆に偏見を生んでいく。
ないしは隔離が偏見を生んでいく。
まず「心の中」があって「行動」が起こるだけではなく逆に「行動」によって「心の中」が作られることもある。
このような経済学的な分析を松井先生は「帰納論的ゲーム理論」と名付けました。
先ほどの表の4つの分類というのはそのまま難病に対する何やろ反応みたいなものにも置き換えられますよね。
そうですね。
あのもう難病だけではなくて最近でいえば被災地で被災された方とまあ東京に住んでいる人間とかえ〜それから障害者と健常者いろいろなところであの同じような構造はあるんではないかなと思います。
そうですね。
はい。
そうか。
そこでどういうふうに自分が行動してるのかというのを見直していけばまた変わった新しい関係が築けるかもしれない。
でやはりまあ「これが経済学か?」っていうふうにね思われるかもしれないんですけれども私はこれが経済学だと。
本来やるべき経済学だというふうに思っていてで人間の経済活動の分析というふうに経済学捉えられていますけれども本を正せばやはり人間関係をどう学問するか科学するかというのが経済学の根本にあったと思うんですね。
はい。
でいわゆる「経済学の祖」といわれるアダム・スミスえ〜スコットランドの人ですけれども彼がもう200年以上前に言った事というのはやはりこういう人間関係を考える時には「共感」というものが非常に重要だと。
共感…。
共感ってねえホントにまさに他の文学であったりだとかそういうとこで語られることが多いですけど経済学でもやはり共感が。
そうですね。
だから一旦は経済活動ものの生産とかものの消費のほうに経済学グーッと舵を切ったわけですけれどもまた現代の経済学はそこからまた元に戻ってきて結局そういうの突き詰めて考えると人間関係を考えないと解決できない問題たくさんあるよねっていうふうなことで人間関係を考える。
アダム・スミスがここで言ってる共感というのは「私は共感できました」「できませんでした」っていう話の共感ではなくてなんか今って共感できなかったものはもう価値認めないみたいな風潮あるんですけどそこからこぼれたものに対しての共感ですよね。
もっと広い意味での共感ですね。
つまりえ〜…え〜それは恐らく自分が味方だと思っていたり仲間だと思っていたりする人に対してもそうだし場合によっては敵だと思っている敵対しているような人に対してもやはり同じようなことを考える。
え〜そういう事なんだと。
それ大事ですよねやっぱり。
え〜今日は難病についてそしてマイノリティーについて最後共感という話も出ましたけどまあ今日扱ったようなテーマをまずみんなが共有するというのはすごく大事なことなのかなと。
マイノリティーを考える上でマジョリティーの事も同時に考えないといけないという当たり前の事なんですけど言われてちょっとハッとしたというかということはやっぱりみんなで考えるべきことなんやなというとこに今立てたかなというふうに思いました。
今日はありがとうございました。
(2人)ありがとうございました。
「まず知らないと考えられないから知りたい」。
陽気なリズムそして情熱的なダンス。
2018/02/09(金) 00:30〜01:15
NHKEテレ1大阪
オイコノミア「もしもあなたが“難病”になったら…」[解][字][再]
原因不明で治療が長期にわたる“難病”。明日あなたが診断されたら専門医をどう見つける?医療費は?そして生活は?より暮らしやすい方法を当事者と共に経済学で考える。
詳細情報
番組内容
ゲーム理論研究の第一人者、東大・松井彰彦教授。経済学の視点で障害や難病、マイノリティについて考察を深めてきた。松井さんは昨年、心臓の難病と診断された。現在は治療を受けながら経済学研究を行っている。当事者の視点を得ることになった松井さんは改めて、難病患者を社会でどう支え、受け入れていくことが大切かを問い続ける。作家・大野更紗さんを交え、難病患者自身ができることは何かを含めて深く語り合う。
出演者
【ゲスト】作家…大野更紗,【出演】又吉直樹,【解説】東京大学大学院教授…松井彰彦,【語り】朴ろ美
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – その他
趣味/教育 – 生涯教育・資格
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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