今週、外務省と財務省のトップ級高官と相次いで食事を交えて長時間、話す機会を得た。
オフレコ懇談なので、当然ながら相手の名前を記すことはできない。
だが、実に興味深い内容だったので、そのまま引用しないが概略を紹介したい。であれば、当該の高官も許しくれるはずだ。
まず、外務省高官から。トランプ米政権についての分析が際立っていたので、以下箇条書きする。
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(1)ドナルド・トランプ大統領誕生から1年が経ち、同政権は内政、外交共に伝統的かつ現実的な共和党の政策に回帰しつつある。オバマ前政権のアンチテーゼから出発して、それを実行している。
と同時に、一昨年の大統領選でコミットした公約を着実に実現しつつある。大型法人減税、巨額インフラ投資、イスラエルの首都エルサレム認定など。
(2)昨年12月に発表した「国家安全保障戦略(NSS2017)」は、4つの柱で組み立てられていて、その第1に「米国第一主義・リアリズム(国際政治では力が中心的な役割を果たす)」と記されている。
さらに注目すべきは、「地域のパワーバランスの変化はグローバルな影響をもたらし、米国の国益を脅し得る」とした上で、「中露は米国の力・影響力・利益に挑戦する修正主義勢力」と断じて、中国とロシアを名指ししていること。
(3)その中でもresponsible stakeholderという表現で中国を強く意識していることは特筆に値する。明らかに、今後は対中通商攻勢を図る宣言と読み取れる。米中貿易摩擦がより激化する予兆である。
(4)「米国の力が中心的な役割を果たす」とは、喩えて言えば、「世界の警察官」として持つ棍棒がどんどん小さくなってきて今日の混迷を招いたので、これからはその棍棒をもっと大きく太くすると言っているようなものだ。
このフレーズの中でcompetitionと competitorという言葉が多用されているのは、まさに中国に対する警戒感が強烈であることを示している。
(5)対中警戒感は中国の共産党支配という制度からくるものだが、それ以上に大きな要因は価値観の問題である。米中は今後、価値観に基づく「競争」に向かう。価値観は、まさにトランプ氏が大統領選時に繰り返し語っていたことだ。
(6)そして第2の柱にある「自由、公正及び互恵的な経済関係(二国間貿易・投資協定の追求、不公正貿易への対抗)」という件もまた大統領選時に主張していたことであり、その点でもトランプ氏は全くブレていない。
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