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ただいま表示中:2012年7月24日(火)なぜ真実が分からない ~大津・生徒自殺 問われる調査~P1/P1
No.32332012年7月24日(火)放送
なぜ真実が分からない ~大津・生徒自殺 問われる調査~

なぜ真実が分からない ~大津・生徒自殺 問われる調査~

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大津・生徒自殺 学校調査の限界

自殺した男子生徒の父親が書いた手記です。

「初めて会った人でも年齢に関係なくすぐに友達になる。
ジョークで家族を笑わせてくれる本当に心の優しい子でした。
息子の自殺の原因が何であったのか。
真相が知りたい。」

男子生徒が自殺した去年10月11日。
学校は原因が分からないとしていました。

当日の学校長の会見
「これやという原因が見当たらない。
引き続き、学校内で出来る範囲で今後も調査を続けていきたい。」
 

学校は国の通知に沿って調査を開始。
全校生徒にアンケートをしたところいじめや暴力などの情報が200件以上も寄せられました。
中でも多かったのが自殺する2週間前に開かれた体育大会での出来事です。
ほかにも、自殺の練習をさせられていたとする記述もありました。

同じ中学校の生徒
「教科書をビリビリに破られてたのを見ましたし、殴るとか蹴るとかで毎朝あざだらけでした。」

 

しかし学校は、いじめがあったことは認めたものの自殺の原因を解明するには至りませんでした。
当時、生徒の間には動揺が広がっていました。
学校は心理的な負担をかけたくないとして踏み込んだ聴き取りはできなかったといいます。
例えば、自殺の練習をさせられていたという情報。
16人が書きましたが記名で回答したのは3人だけでした。
この3人に聴き取ったところ伝聞だと分かりました。
学校は、本当に自殺の練習をさせられていたのか徹底した確認はしませんでした。
一方、いじめたとされる同級生への聴き取りも進みませんでした。
本人が学校に来なくなったり保護者から断られるようになったからだといいます。
同級生は、男子生徒をいじめたのではなく遊びのうちだったと主張。
結局、学校は寄せられた情報の多くを事実かどうか判断できないまま調査を打ち切りました。

大津市教育委員会 松田哲男教育部長
「子どもたちの動揺があったり、現場の混乱の状況の中で、いかに(情報を)きちっと聞き取り分析していくか、事象の確認というのは本当に難しい。」

 

学校は、男子生徒の父親にいじめと自殺との関係は分からないと報告しました。
父親は、もっと調査を尽くしてほしいと当時の保護者会で不満を訴えました。

亡くなった生徒の父親
「アンケートの中身は読んでいても吐き気すらするような内容だったのですが、子どもさんが一生懸命書いていただいたと思うんです。
勇気を出して。
だけどその内容は使われない、活用されない、問われることはない。
いいのかな、それで。」

父親の意向を受け学校は2回目のアンケートを行いました。
しかし、不信感がさらに高まることになります。
2回目のアンケートの質問は僅か2つ。
まだ伝えていないことはないかなど、簡単なものでした。
自殺の練習など具体的な質問をすると生徒への心理的な負担が大きくなると配慮したといいます。
その結果、寄せられた情報は僅か16件。
その中にも、具体的な情報を書いた生徒がいました。
自殺の練習と言って首を絞める。
葬式ごっこ。
しかし学校は、自殺の練習はすでに調査済みだとしてこの生徒に改めて聴き取りはしませんでした。
亡くなった生徒の父親には細かい情報は伝えず新たな事実は出てこなかったとだけ報告していました。
生徒たちからは、学校の調査に疑問を抱く声が出ています。

男子生徒の友人
「加害者を責めようと書いているのではなく、被害者がかわいそうだから、ごめん、何もできなくてごめんって思いだから(学校は)やっていることが違う。
本当のことが知りたいのに、まずそこからだと思う。」

調査に満足できないという父親。
大津市と、いじめたとされる同級生らを相手取って裁判を起こしました。
先週、父親が発表した手記です。

「学校任せでは限界があると感じています。
一日も早く事実が解明され息子と同級生の生徒さんに報告できることを望みます。」

大津・生徒自殺問題 問われる調査

ゲスト喜多明人さん(早稲田大学教授)・橋本記者(大津放送局)

●学校側の受け止め方

橋本記者:学校側は当時男子生徒が自殺したあと学校が動揺して生徒たちの心のケアを考えながらできるかぎりの調査はしたと言っています。
しかし調査結果は事実の全容解明を求めている遺族の思いとは大きなギャップがありました。
そのため、生徒や保護者からは不満の声が上がっています。
先週、大津市教育委員会は学校単独ではなくて教育委員会が調査を担うべきだったと当時の判断が誤っていたことを認めました。

●アンケートにつづられた子どもたちのことば

喜多さん:私もアンケート読ませていただきましたけれども全校生の8割に近い子どもたちがこれだけの声を書き込むということは前例がないこと、と思ってまして非常に驚いております。
特に、やはり200近いいじめに関する事実をこれだけ書き込んできたということに対して、やはり大人の側というんでしょうか学校や教育委員会が真摯に向き合っていればまた別な解決の道もあったのではないかと思うような感じさえしております。
同時に、いじめの事実のほうは報道があるんですけれどももう一つ、自分の気持ちはどうかということを聞いてるんですね。
そこには非常に多くの書き込みがあってそれを読ませていただくと子どもたち自身が、やはりこの問題に対してなんとか解決したい前向きに、この問題に取り組みたいという気持ちがすごく伝わってくるわけです。
確かに今回の調査で子どもたちの心のケアの配慮が必要だと。
ですから調査に対して非常に、これ以上はっていう気持ちを現場は持たれたようなんですが実は子どもたちの共通の思いとして、やはり今回のいじめを防げなかったそういう子どもたちなりのやはり悔やんでいる部分があってこの気持ちを、将来にわたって引きずるよりかはやはり子どもたち自身が解決の主体としてこういった問題その再発防止に貢献することがやはり子どもたちの気持ちを癒やしたりやっぱり今後、前向きに生きていけることになるのじゃないかと思っております。

●子どもの自殺調査 学校主体の限界

喜多さん:先ほど、生徒の書いたものはすごく親の思いと共通する部分があってやはり、この原因を明らかにして再発防止を図る二度と、こんな事件が起きないようにという思いは親とか遺族そして子どもたちの思いは非常につながってるっていう感じがするんですけどもこれが実際に学校や教育委員会も一緒になって原因究明や再発防止に取り組めば違う解決のしかたがありえたのじゃないかと。
しかし残念ながら、この学校教育委員会と遺族や子どもたちとの間に実は私たちが、ふだんあまり知られてない特に、原因究明をすればするほどその学校の過失責任を立証してしまうというジレンマが現場にあって実は過失責任主義の賠償法制がこの学校や教育委員会と遺族との間の壁になってることは現実として、私たちが自覚しなきゃいけない問題だと思っております。

中立な調査 求める遺族

調査委員会で息子の自殺の原因を明らかにしようとしている山田優美子さんです。
次男の恭平さんは高校2年生だった去年6月亡くなりました。

山田優美子さん
「どうして自分の子どもが死ぬしかないと思うほど追いつめられていたのか、それを知らないままでは、いつか自分が死んだときに子どもに合わせる顔がない。」

 

恭平さんは高校で野球部に所属。
明るい性格で、チームメートから信頼されていました。
山田さんは自殺の原因が野球部の指導にあったのではないかと考えています。

1年生の冬、恭平さんは監督がチームメートに暴力を振るうのが嫌で野球部を辞めたいと言いだしました。

山田優美子さん
「監督の暴力を見るのもいやだ。
友達が殴られているのを見るのもいやだし、それを止めれない自分もいやだと言っていましたので。」

練習を休むようになった恭平さんをある日、監督が呼び出しました。
恭平さんはその2日後に命を絶ちました。
遺書はなく、学校は自殺と監督の指導との関係は分からないとしています。
山田さんは恭平さんの自殺に関する報告書を見せてほしいと学校に頼みましたが拒否されました。
報告書を見る方法はないのか。
山田さんが探したところ情報開示制度を利用できることが分かりました。
ようやく見ることのできた報告書でしたがその内容に強い不信感を抱きました。

山田優美子さん
「あまりにも私が知っている事実とは違うことばかり書かれていて驚きました。」

報告書には文部科学省の通知に基づく調査が行われたのかどうか書かれていません。
恭平さんが監督に呼び出されたことについても触れていませんでした。
驚いたのは山田さんたち家族についての次の記述です。
兄が野球部を辞めてしまった。
そんなこともあり両親の期待が本人にとって重荷であったのではないか。
実は、恭平さんの兄は高校の野球部に入ったことはないのです。

山田優美子さん
「お兄ちゃんは、高校に入ってからすぐに吹奏楽部にはいりましたので、野球部になんて見学にも行っていないと。
学校に都合の悪いことは書かずに、家庭が原因で自殺したという方向に持っていきたいんだなという印象を受けました。」

山田さんが教育委員会に中立的な調査を求めたところ調査委員会が設置されました。
ところが、その運営方法は到底、納得できるものではありませんでした。
文部科学省の通知には委員は中立的な立場の専門家を加えることが重要だとしています。
しかし、3人の委員は教育委員会が任命。
しかも…。

山田優美子さん
「『どういう方たちなんですか』と聞くと『お答えできません、匿名です』と。」

 

委員たちはそれぞれの職業は明かしたものの名前は教えてくれませんでした。
これでは、この委員たちが中立な立場かどうか分かりません。
なぜ委員の名前を明かせないのか。
教育委員会の回答です。

愛知県教育委員会
「委員名を公表すると自由な意見交換が妨げられる。
委員個人に影響が及ぶことが懸念されるため、非公開としている。」

山田さんは生徒や教員への聴き取りなど詳しい調査を委員会に申し入れましたが認められませんでした。
調査委員会が一人一人のケースと真摯に向き合うことで自殺の再発防止につなげてほしいと山田さんは考えています。

山田優美子さん
「原因のひとつでも探り当てていただいて、今後に生かしていける場になってほしい。」

どう実現する 中立的な調査

●調査委員会による報告書の記述

喜多さん:私ども、学校災害の被害者や遺族の方とおつきあいして一番やはり、つらく感じるのはやはり情報がない知らされないっていうことが実は遺族にとって一番厳しい。
それが不信感に、行政に対する不信感に結び付いていくという現状があります。
今回の調査委員会についてもやはり中立性のある委員かどうかを知る権利が遺族にあると思うんですがそういう情報が知らされてないということが非常に大きいですね。
やっぱり情報の共有が問題を解決していく出発点だと思います。
その意味で事故報告書というのも親が不信感を持つ非常に大きな問題でして従来、事故報告書というのは教育委員会に報告する学校側の文書だったんですけれどもこれは非開示という扱いだったものですからやっぱり学校が都合いい文書を書く傾向がございました。
今回、たまたま開示を請求して事実の誤認というかずれが明らかになったと。
これは、やはりもちろん開示を前提とした学校側の、やはり自覚を促すことが大事なんですが同時に、今の時代は個人情報に関わったような文書作成というのは本人の了解なしに書けないと。
本人がやはり承諾した形で文書を作成していくということが望ましいんではないかというふうに思われております。

●大津市でも委員会の設置が行われるのか

橋本さん:大津市は、これまでの調査がずさんだったとして教育委員会ではなく市長部局に、これから今月中に調査委員会を設置する予定です。
委員の名前は公表し人選でも遺族側の意向を考慮したいとしています。
越市長は、あす遺族と面会し今後の委員会の運営などについて話し合う予定です。
今度こそ、遺族の思いに応えられる調査になるのか私たちが注意深く見守っていきたいと思います。

●大津市の取り組みをどうご覧になるのか

喜多さん:市長部局において第三者性をできるだけ確保しながら調査委員会を発足させるということは非常に今後、ぜひ進めてほしいと思うんですがただし、やっぱり原因究明事故が起こったあとの原因究明に限ったシステムだけを新たに設けるということにはやはり限界があると思います。
やはり遺族が求めているのは原因究明の結果その調査結果に基づいた再発防止が、どう取られるかに関心があるわけですから当然、その調査委員会は再発防止策に対する政策提言までできる機能を持ってほしいしそれから結果だけでなくてその事故が起きる前の予防という視点まで含めればやはり子どもたちが安心して相談できるようなシステムそして、いじめが実際に発覚したときの調整、人間関係を調整していくようなソーシャルワーク的な機能そういうものを一連の予防から救済をきちっとした権利擁護としてシステム化していくことが今後、求められていく課題だというふうに思っております。

●学校側と親御さんたちのこれからの目線

喜多さん:先ほど申し上げたようにやはり賠償法制そのものを見直していくことも大事ですし同時に、お互いが人間の顔でこの子どもたちの問題に取り組んでいく原因究明と再発防止を同じ目線で進めていくということが課題じゃないかと思います。

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