太陽光バブル崩壊…倒産ラッシュの裏側、買い取り価格大幅下落で採算厳しく
24枚の太陽電池パネルでつくられたソーラーアレイ(「Wikipedia」より/Chinneeb)
この状況について、東京商工リサーチ情報本部情報部の原田三寛部長は「太陽光バブルは弾けた」と見る。その背景には、どのような事情があるのか。また、買い取り価格が年々低下するなかで太陽光ビジネスの今後はどうなるのか。
実はレッドオーシャンだった太陽光ビジネス
――太陽光関連事業者の倒産増加は、太陽光バブルの終焉と見ていいのでしょうか。
原田三寛氏(以下、原田) 太陽光バブルは弾けたと思っています。11年の東日本大震災で原発事故が起きたことで、再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)を利用する気運が高まりました。
12年7月には再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)が導入され、太陽光関連市場は急速に拡大しました。当初、固定買い取り価格は高価格帯でしたが、経済産業省が電気代の賦課金の低減を目指すなかで太陽光の固定買い取り価格も低減の方向で進み、年々下落しています。
一方、太陽光関連事業は参入障壁が高くありません。「11年以降に設立された会社が倒産している」と思われがちですが、必ずしもそうではなく、実際には11年以前に設立された会社の倒産が多いのです。
11年以前に設立された会社の本業を調べると、住宅関連の資材、リフォーム工事、電気設備工事、屋根工事などが多いです。つまり、本業である住宅着工件数が年々減少していくなかで新たなビジネスに活路を見いだすために太陽光関連事業に参入した、というケースが多かったのです。
各社は太陽光関連事業を「ブルーオーシャン(競争相手のいない未開拓市場)」と考えていましたが、実際は「レッドオーシャン(血で血を洗う競争の激しい領域)」だったのです。
成熟市場のプレイヤーが新天地を求めて業容拡大を目指し、太陽光ビジネスに参入した。しかし、こうしたプレイヤーはこれまでの事業が低採算で財務内容が脆弱であったり利益備蓄が多くなかったりしたため、太陽光関連事業でも赤字を出して倒産に至ったということです。
――東京商工リサーチの調査を見ると、件数・負債ともに過去最多を更新しています。
原田 17年の倒産件数は88件(前年比35.4%増)で、調査を開始した00年以降最多だった16年の65件を大きく上回りました。特に、建築工事を含む住宅関連事業者の倒産が目立ちます。また、17年の負債総額は285億1700万円(前年比17.6%)で4年連続で前年を上回っています。
なかでも負債10億円以上が6件で、前年比で倍増しました。たとえば、福岡県のZEN POWERは負債52億円、神奈川県のPVG Solutionsは負債22億円でした。これらの会社はモジュールや太陽光の電池関連製品などを扱っているため仕入れ金額が高くなり、製造に対する投資もかさみがちです。そのため負債が多くなり、大型倒産に至りました。
住宅関連の倒産では、大阪府のりょうしん電気で負債4億7700万円のケースがあります。同社はもともと、オール電化製品および住宅設備機器の販売施工を主体にしていました。