このダブル中性子星衝突・合体による重元素合成仮説は正しいのでしょうか。重元素は超新星爆発でなく、中性子星衝突・合体によって供給されたのでしょうか。
これを証明するには、やはりその衝突・合体をひとつ観測して、重元素合成の現場をおさえるのが確実でしょう。
2017年8月17日12時41分04秒
重力波アンテナ「LIGO(ライゴ)」と、その成果については、これまで何回か紹介してきました。時空のさざ波である重力波を捉える能力を持つLIGOは、2015年の最初の検出以来、何度も重力波を報告しています。それらの重力波は、ダブル・ブラックホール連星系(非正式名称)の衝突・合体という、それまで存在の知られていなかった天体現象から放射されたものでした。
けれども、2017年8月17日12時41分04秒(協定世界時)に検出された重力波は、いくつもの異常な特徴を備えていました。(4~5発の重力波イベントから、何が異常で何が正常なのかを決めるのは少々無理がありますが。)
・衝突天体の質量が太陽の2.26倍以下で、ブラックホールにしては小さい。(中性子星を示唆)
・重力波に1.7秒遅れて、ガンマ線が到来。(これはガンマ線バーストでもある)
・続いて可視光も到来して、重力波源の正確な位置を教える。(これで他の観測装置も向けられる)
この特異な重力波源は、ダブル中性子星連星系の衝突・合体でした。天文・宇宙物理研究者が待ちに待った、中性子星の衝突・合体による重力波の検出です。
あらゆる波長の世界の天文台(のうちLIGOとお友達関係にあるもの)が一斉にこの重力波到来方向を観測し始めました。この観測キャンペーンについては、この連載でも取り上げています。それまでの重力波イベントと違い、位置が精確に分かったので、他の観測装置も向けることができたのです。
(参考・関連記事)「LIGOはついに中性子星の合体を捉えたのか」
観測結果は、2017年10月16日にこれまた一斉に発表されました。観測データは(予想どおり)中性子星衝突・合体によって重元素が大量生産されたことを示していました。
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