宇宙には「重い元素」が増えてきた

 恒星内部の核融合で合成された元素は、恒星の大気が宇宙に流出する「星風(恒星風)」などによって、宇宙空間にばらまかれます。また他の過程(後述)によって作られた元素も宇宙空間に増えていきます。ビッグバン以来138億年間、宇宙空間には徐々に重い元素が増えてきました。

 ここで「重い元素」とは、水素でもヘリウムでもない他の全ての元素を乱暴に引っくるめて天文研究者が呼ぶ言葉です。「メタル」と呼んだりもするので、天文研究者が「重い元素」とか「金属」などと言いだしたら、何を指しているのか急いで確かめた方がいいです。

 こうして宇宙空間で重い元素が増えてきたため、宇宙初期に星間ガスをかき集めて誕生した恒星と、最近かき集めた若い恒星をくらべると、若い恒星の方が重い元素を多く含んでいます。

 これで「(3)種族IIの星は、種族Iの星にくらべて重い元素の割合が多い」の正誤が分かるのですが、ここでの落とし穴は、宇宙初期に誕生した第1世代の恒星が「種族II」と呼ばれ、最近誕生した第2世代の若い恒星は「種族I」と名づけられていることです。そういう分類になったのには歴史的事情があるのですが、はなはだ初学者泣かせ、受験生いじめの命名です。

 設問者が意地悪なのではなく、用語がそもそも不親切なのですが、受験生は、理不尽な命名に舌打ちしつつ、(3)を誤りとしなければなりません。

超新星爆発で金銀ウランにプラチナ?!

 さてこうして誤りを除外し、トラップを避けて、よく訓練された受験生は(2)の「超新星爆発によって、鉄より重い元素がつくられた」という選択肢にたどり着きます。消去法により、これが地学第6問Aの正解でしょう。

 恒星の通常の核融合反応では、周期表に並ぶ元素のうち、鉄までしか合成されないと考えられています。鉄より下の段にひしめく他の元素、金や銀やウランやプラチナその他大勢は、恒星内部の「自然に起きる」核融合では生じません。そういう重い元素の原子核は、鉄の原子核よりも高いエネルギーを持つので、合成するためには外からエネルギーを加えてむりやり原子核同士をくっつけてやる必要があるのです。

 では、地面の中に埋まっている金や銀やウランやプラチナは、宇宙の歴史のどこでエネルギーを加えられてむりやり作られたかというと、それは「超新星爆発」による、というのが設問者の期待する答えでしょう。