拉致被害者のために事務所を提供

 当時のブッシュ政権は北朝鮮を「テロ支援国家」に指定しており、それに基づき2005年9月にマカオの中国系銀行「バンコ・デルタ・アジア(BDA)」の北朝鮮関連口座を凍結するという経済制裁措置をとった。ブラウンバック議員はこうした措置を積極的に支援していた。

 ちょうどそのころ、日本側の拉致問題の「家族会」「救う会」「拉致議連」などがブッシュ政権の支援を得ようと動き始めていた。ブラウンバック議員はそうした各会の代表たちのワシントン訪問を温かく迎えるようになった。

「家族会」の横田早紀江、増元照明両氏、「拉致議連」の平沼赳夫会長や「救う会」の西岡力会長、島田洋一副会長らが訪米するたびに、ブラウンバック議員は上院外交委員会の代表として面会していた。日本側代表たちが緊急記者会見を開く必要が起きた際には、自分の事務所を即座に開放して提供するほどの協力ぶりだった。2008年10月に当時のブッシュ政権が北朝鮮のテロ支援国家指定を解除すると、ブラウンバック議員は誰よりも強い反対を表明した。

 このようにブラウンバック議員は米国連邦議会の歴代のメンバーのなかでも、日本人拉致事件の解決のために、最も深く、最も長く協力してきた人物である。そうした人物がトランプ政権の国務省に加わり、世界の宗教弾圧に対峙するという展開は、北朝鮮による拉致事件の解決を目指す日本にとっても歓迎すべき動きといえるだろう。