ブラウンバック氏といえば、日本の拉致問題の解決に米国議会を代表して積極的な支援を続けてきたことで幅広く知られている。現在61歳の同氏はカンザス州の弁護士出身の共和党政治家で、1995年から96年まで同州選出の連邦下院議員を務めた。96年には上院に転じ、2011年まで上院外交委員会などで活動した。

 ブラウンバック氏は2008年の大統領選挙にも共和党予備選に出馬した。2011年には地元カンザス州の知事となった。その後、再選を果たし、2019年1月まで任期が残されていたが、このたびトランプ大統領の要請で政権入りした。同氏は敬虔なカトリック教徒として知られ、議会でも北朝鮮や中国の宗教抑圧への抗議を再三表明してきた。

「北朝鮮人権法」の制定に尽力

 ブラウンバック氏が日本人拉致事件の解決への支援の活動を顕著にしたのは、2003年以降、上院外交委員会の「東アジア太平洋問題小委員会」委員長となってからである。同氏はそれまでアジアとの関わりは特に深くはなかったが、人権弾圧非難という観点から北朝鮮や中国に注意を向け、活発に動くようになった。

 たとえば2003年6月には独自に記者会見を開き、北朝鮮の人権弾圧や、北朝鮮難民を抑圧する中国の行動を非難した。日本人拉致問題についても指摘し、北朝鮮当局を激しく糾弾した。

 私もこの記者会見に出ていたが、静かな口調ながらも熱をこめて「北朝鮮工作員による日本国民の拉致」に言及するブラウンバック議員に好感を抱いたことをよく覚えている。

 同議員はその後、米国の国政の場で、北朝鮮の残虐な行為の典型として日本人拉致を繰り返し指摘するようになった。そして「北朝鮮人権法」の制定へと動く。この法律は文字通り、北朝鮮の人権弾圧を阻むために米国政府が多様な支援行動をとることを規定していた。対象とする北朝鮮の人権弾圧には日本人拉致事件も含めている。この法律は2004年10月に成立した。