評価が悪く価格も高いNYステーキ店、客の目当ては名物塩振りシェフ

ニューヨークのミッドタウンマンハッタンにオープンしたステーキ店「ヌスレット」に対する評価は否定的なものばかりだ。米紙ニューヨーク・ポストは「ぼったくり店ナンバーワン」と評し、米誌「GQ」は味気なく固いステーキや、お粗末なカクテルなどをやり玉にあげた。

  この店は「ソルトベイ」の愛称で知られる人気トルコ人シェフ、ヌスレット・ギョクチェ氏がオーナーを務める。同氏のインスタグラムのフォロワー数は1100万人近くに上るほか、DJキャレドら有名人の友人もいる。また、焼き上がったステーキに塩を振りかける同氏独特のポーズを撮影した動画は、「ユーチューブ」での視聴回数が400万回を超えた。

  私の仕事はブルームバーグ・パースーツのフードエディターとして絶品の料理を探し出すことであるにもかかかわらず、この散々な評価の店を訪ねる誘惑に逆らえなかった。

「ソルトベイ」の漫画風の肖像画

フォトグラファー:Kate Krader / Bloomberg

  私のディナーのお供をしてくれたのは、「イーター・ドット・コム」のシニア評論家で、店のオープン直後に訪問した客の一人であるロバート・シーツィーマ氏だ。

  店に入ると最初に目に入るのは赤いベルベットのロープに囲まれた円形のバーだ。革のエプロンを付けたバーテンダーが働いており、ナイトクラブのような雰囲気がある。その上には、塩を振るシェフの漫画風の肖像画が飾られている。

  カクテルのリストには、「ソルトベイ・オールド・ファッションド」というバーボンの代わりにスコッチとジンジャーシロップで作ったドリンクがある。味はかなり良いが価格は21ドル(約2300円)と高い。そのうえ18%のサービス料が上乗せされるので、実際の価格は26.64ドルだ。

100ドルのリブアイステーキ

フォトグラファー:Kate Krader / Bloomberg

  シーツィーマ氏が最初に店を訪問してから1週間で多くの変化が起きていた。最も重要な変化は、シェフが肉を焼き過ぎるのをやめたことだ。最初に伝えられたところでは、どんな注文に対しても肉は茶色くミディアムの状態で客に届いていた。ただ、一つ変わっていないのは価格の高さだ。

30ドルのバーガー

写真家:Robert Sietsema

  他のすべての人と同様、われわれの目当ては肉とそれに伴うパフォーマンスだ。店で提供される牛肉は、ニュージーランド産の和牛が大半を占める。

  われわれが注文した100ドルのリブアイステーキはやや小さく見えたが、歯ごたえや焦げ目の付き方は良かった。30ドルのバーガーでさえ、ここではお値打ち品のように感じられる。パティは粗びきのため一部がステーキ状で、極めて肉肉しい。これらはまだ店で安い方の料理だ。

手袋を付けて塩を振るようになった

写真家:Robert Sietsema

  この店のことが嫌になり、鼻で笑いたくなってくる。すぐ近くにこの店より安くて絶品なステーキを提供する店があるからだ。

  しかし、「ソルトベイ」が姿を現し、われわれのステーキを切り分けて味付けしてくれると、恥ずかしくなるぐらいわくわくした気分になった。彼は写真撮影のためにずっとポーズを取ってくれる。客の半分はジャケットを着たビジネスマンとビジネスウーマンで、もう半分はスポーツブランドの服を着た観光客だが、誰も一瞬たりともカメラ付き携帯電話を持った手を下ろそうとしなかった。

原題:Dining at NYC’s Nusr-Et, Where Buzz Is Bad and Cocktails Are $27(抜粋)

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