中国席巻のスマホ向けゲーム「旅かえる」-発案者は旅好きの26歳女性

  • 放置と受け身が人気の秘密、「フーテンの寅さん」に着想得る
  • 3000万DL突破、リリース2カ月余りでヒット作「ねこあつめ」抜く

日本発のスマホ向けゲームが中国などで大ブームとなっている。発案者は旅好きの26歳の女性。勝手気ままに旅するカエルを見守るだけの「究極の放置ゲーム」が海を越えて癒やしを与えている。

無料ゲームアプリ「旅かえる」

Photographer: Kentaro Takahashi/Bloomberg

  ゲーム開発のベンチャー企業「ヒットポイント」(名古屋市)が昨年11月に配信したスマートフォン向けの無料ゲームアプリ「旅かえる」は、日本語版しかないにもかかわらず、中国では3000万ダウンロード(DL)を突破。DLの95%程度が中国向けで、同国の無料ゲームアプリランキングで首位争いを演じている。

  旅かえるの操作方法は簡単だ。主人公のカエルに「おべんとう」や「どうぐ」などの旅支度をしてあげるとカエルはふらっと旅立ち、おみやげや思い出とともにいつの間にか帰ってくる。ユーザーはカエルの道中について行くことはできず、ただ気まぐれなカエルの帰りを待つだけだ。

  上海市の会社員、張藝氏(26)は「旅かえるは多くの時間を必要としないのに多くの楽しみを与えてくれる。カエルがどこかに出かけたとき、新しい写真を送ってくれるのではないかといつも楽しみにしている」と話す。北京市在住の陳佳佳氏(29)は「シンプルなところが好きだ」と語った。

放置型

  配信開始から2カ月余りで、同社のヒット作で現在2200万DLに達した「ねこあつめ」(2014年配信開始)を抜いた。ねこあつめは、ごはんとグッズを置いておき庭先に集まってきたネコたちを眺めるこれも放置型ゲームで、書籍や関連グッズ販売のほか実写映画化も実現した。旅かえるでも中国企業との連携やグッズ販売などで問い合わせが絶えないという。

  旅かえるを発案したプランナーの上村真裕子氏(26)は「海外、特に中国のお客様にここまで遊んでもらえるとは夢にも思わなかった。国境関係なく遊んでいただきありがたい」と驚く。放置型なので「気楽でいいのではないか」と分析。登場する日本の景色や食べ物から「日本文化を感じてもらっているのかもしれない」と話す。

上村氏

Photographer: Kentaro Takahashi/Bloomberg

  ヒットポイントによると、旅かえるのユーザーの8割程度は女性とみられる。調査会社ニコパートナーズのアナリスト、ダニエル・アフマド氏は「女性をターゲットにしたゲームに中国で大きなチャンスがあることを示した」と指摘する。ヒットポイントでは人気に応じて、中国語版の配信も前向きに検討する方針だ。

4人で開発

  旅かえるは上村氏のほか、ねこあつめの企画にも携わったプロジェクトマネジャーの高崎豊氏(37)とデザイナー、プログラマーの4人が中心となった。同社は上村氏らがいる京都市の開発拠点と名古屋本社を合わせ30人未満の少数精鋭。京都事務所ではねこあつめ関連グッズやポスターがほっこりした雰囲気を醸し出している。

「ねこあつめ」のグッズ

Photographer: Kentaro Takahashi/Bloomberg

  旅かえるも、ねこあつめも、無料アプリで条件によって課金が発生する。ヒットポイントの収益は課金と広告の2本柱で、キャラクターグッズなど関連商品も販売している。具体的に開示しないが利益は出しているという。同社はほかのゲーム開発会社に勤めていた光岡優社長や高崎氏らが07年に5人で設立した。

  旅好きの上村氏は「旅そのものを題材にしたゲームが少ない」と開発に踏み切った。当初イメージしていたのは映画「男はつらいよ」の主人公、車寅次郎。「どこかに行っては帰ってくる寅さんのように、プレーヤーにカエルが今どこで何をしているのかを想像してもらう。誰かを待つことで喜びを感じてほしい」と語る。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE