当時の「日本ボブスレー・リュージュ連盟」からの熱心な呼びかけに動かされて、とりあえず視察にだけでも行こうということになり北海道のコースに出かけま したが、そこで見たオリンピック用競技マシーンは、少なくとも古びた遊園地の乗り物となんら代わることの無い代物で、思わず我々は「これなら勝てる」と顔 を見合わせたものです。
それからちょっと真剣になってしまった我々は、まず、現行のボブスレーの運動状態を定量的に把握する為に、ピトー管(速度)、Gセンサー(加速度)、ポテ ンションメーター(操舵角)、ジャイロ(ロール角速度)、歪みゲージ(ランナー荷重)、熱伝対(ランナー温度)などの測定器とデーターロガーを積み込んだ フル装備のボブスレーをリレハンメルとアルテンベルグに持ち込み徹底的な基礎調査を行いました。
その後、風洞試験も行い、かなりのデータが出揃って、いよいよこれから開発開始というころに、本家「日本ボブスレー・リュージュ連盟」にお家騒動が勃発して、もともと童夢に開発を依頼してきた人たちがそっくり追い出されてしまいました。
おかげで費用の大半は未収となったままプロジェクトは消滅してしまいましたが、長野のオリンピックに向けてのコースの建設や外国選手の招聘などには湯水の ようにお金を遣うのに、肝心の選手と機材の強化はけっこうないがしろになってしまう実情を垣間見て、あと1世紀は勝てないだろうと思いました。
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