県議の福祉法人が職員から寄付
長崎県議会議員が理事長を務める社会福祉法人が、運営する施設の職員から、給料日やボーナス支給日に職場で寄付を集め、議員本人の政治団体に献金していたことがわかりました。
献金は少なくとも20年前から続き、複数の職員が「断れなかった」と証言していて、NHKの取材に対し、議員は献金を集めるのをやめる考えを明らかにしました。
この社会福祉法人は、特別養護老人ホームなどを運営する長崎県佐世保市の「長崎博愛会」です。
法人の理事長は、県議会議長を2度歴任した宮内雪夫県議会議員(84)が務めていて、NHKが宮内議員の政治団体の政治資金収支報告書を調べたところ、おととし、法人が運営する3つの施設の105人の職員が、合わせておよそ900万円を献金していました。
献金額は1人当たり月に2000円から1万円で、複数の職員によりますと給料日やボーナス支給日に、施設の幹部らが封筒を手渡して寄付を集めていたということです。
NHKの取材に対し、複数の職員や元職員が「仕事を失いたくないので断れなかった」などと意に反する献金だったと証言し、中には、寄付が遅れると注意されたという人もいました。
政治資金規正法では、雇用関係を利用するなどして個人の意思を拘束して、政治活動に関する寄付をあっせんすることが禁止されています。
県の公報によれば、職員からの献金は少なくとも20年前から続き、総額はおよそ2億円に上っています。
NHKの取材に対し、社会福祉法人の弁護士は「誤解が生じるような方式は一切やめることにした」と話しているほか、宮内議員も「職員からの献金集めはもうやらない」と話しています。
献金について施設で働く職員の女性は「どうして払うのかという、そういうことを聞くこともできなかったです。古くから施設にいる職員はずっと支払っているわけですから、新しく入った職員は、みんなと同じように払うのが当たり前という感じだったので、断るという選択肢はなかった」と話しています。
献金について施設の元職員の女性は、匿名を条件にNHKの取材に応じました。
この中で元職員は「茶封筒を1年分作られて、表側に1年分の期日が書いてあって、給料日に必ず一緒に渡す。給料の何%とは聞いていないが、事務所側から封筒に書いてあるのでそれを払わないといけない。払わないでいると職場の場所まで来て、『お金を払っていないので払ってもらえますか』と言われたこともあります。朝礼の場で、みんなの前で言われたら断るに断れない。払わないと辞めないといけない。高齢の職員は行き場所がない、再就職の場所がない、そうすると生活ができないからしかたなく払う。最後まで選挙資金を取られたと言って辞めた人もいました」と話していました。
社会福祉法人、長崎博愛会の弁護士は、職員から寄付を集めるのをやめたことを明らかにしたうえで、「現在、法人運営を見直しており、その一環として誤解が生じるような方式は一切やめることにした」と話しています。
政治資金の問題に詳しい神戸学院大学法学部の上脇博之教授は「職場の関係を悪用して強制的に寄付をさせているように思われる。政治資金規正法に触れるか、そこまでいかなくても政治的道義的に問題があったと考えるべきだ」と指摘しています。