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尺取り虫のように動く「結晶」、柔らかいロボットの材料へ期待

» 2018年02月08日 14時00分 公開
[太田智美ITmedia]

 過熱・冷却すると、尺取り虫のように動いて移動する結晶がある――そんな研究結果が、2月7日に発表された。発見したのは、早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構や東京工業大学理学院、日本学術振興会特別研究員らの研究グループなど。この研究成果は、2月7日付の英国Nature Publishing Groupのオープンアクセス科学雑誌「Nature Communications」に掲載された。

 研究に用いられた結晶は「キラルアゾベンゼン結晶」というもので、結晶に光を当てるとねじれ曲がることや加熱・冷却を繰り返しても結晶が壊れないことは既に報告されているが、板状結晶の厚みを左右で変えることで「尺取り虫のように移動する」ことが研究により発見された。同研究チームはこのような動きをする結晶を「ロボット結晶」と呼ぶ。

 動きの原理はこうだ。熱伝導によって結晶が下から暖まると、下部の結晶構造が変化して長さが少し縮み、まだ変化していない上部は元の長さのままなので屈曲が生じる。そのため、加熱と冷却を繰り返すと結晶は屈曲を繰り返し、尺取り虫のように移動する。速度は秒速0.0008ミリ。


ロボット結晶 尺取り虫のように移動する

 薄い板状結晶は、加熱あるいは冷却を1度行うと転がりながら移動。これは、結晶が曲がったときにバランスを保てず、傾いて倒れ込むためだという。速度は秒速15ミリ。これらの動きは、結晶の外形が非対称であることから発生するそうだ。


ロボット結晶 転がる

 ロボット結晶は、物質輸送などを担うマイクロロボットとしての実用の他、ソフトロボットの材料としての可能性も。現在のロボットは、金属部品の組み合わせでできていることが多く、硬くて重いことが課題になることもあるが、ロボット結晶は自立移動ができ、軽くしなやかで耐久性もあることから、期待が寄せられる。

 今後は、ソフトロボットへの実用化に向けて、結晶の移動方向や速度を精密に制御できるようにすることが課題。また、今よりも低い温度で相転移するよう、開発を進めたいとしている。

太田智美

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