■「比率」を売買するFXってイカれてる!
為替レートは2通貨の綱引きで決まる。米ドル高が進んでいても、同時に強力な円高が進んでいたら米ドル/円は上がらないどころか下がってしまう。通貨と通貨の交換比率を売買するFXならではの難しさだ。
「『比率を売買する市場』ってイカれてません?
トヨタ自動車とソフトバンクの株価の比率を売買することなんてないじゃないですか。変な市場なんですよ、為替って」
■2ケタの億を稼ぐ超スゴ腕トレーダー!
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「FXを始めたのは大学生のころですね。2006年ごろだったかな。お金はたくさんあったほうがいいし、お金持ちになるには、起業するか、相場をはるか、どちらかだと思っていたので」
当時はまだFXのレバレッジに上限が設定されていなかったころ。今よりもさらに少額で始めることができた。
大学に通いながらFXを始めたyasuさんだが、決して順調なスタートだったわけではない。
「数十万円を入金しては(利益がでるように)『お祈り』して負けてっていうことの繰り返し。それでもFXをやめなかったのは、努力していれば、いつか勝てるジャンルだと思っていたからです。
スポーツであれば努力したところで上位1%は才能がなければ到達できない世界ですが、相場であれば、努力を続けていれば上位1%に届くかなと」
■阪神淡路大震災で学んだ「震災後は円安」
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「就職して1年が過ぎようとしたころに起きたのが東日本大震災でした。当時、ちょうど阪神淡路大震災による為替への影響を勉強していました」
1995年1月、6000人以上が犠牲となった阪神淡路大震災をきっかけにして為替市場では20%もの円高が進行、米ドル/円は変動相場制移行後の最安値となる79.75円をつけた。
ところが政府・日銀の円高対策もあり、市場は反転。1998年には147円の高値をつけている。
「そこから考えると、今回も大規模な財政出動が行われ、円安になる可能性が高いだろう、と。
『レパトリにより円高が~』とか解説されますが、円高になったとしても一時の投機的な動きであって、最終的には円安が進むと見ていました」
■猫が導いた億トレへの道
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何時だ? と思ってスマホを見ると、来てる! と」
2011年3月11日(金)、東日本大震災が起きてからジリジリと円高へと動いていた為替市場が急変したのは17日(木)早朝。数十分で3円以上の円高が進んだ。
「ニュージーランド市場の、流動性のない早朝です。このタイミングで円買いが打ち込まれたということは一時的な投機の動きである可能性が高い。
そう考えて円売りポジションを仕込み始めました。阪神淡路大震災の値動きを考えれば、大底を拾える可能性があるなと」
■億超えを果たし、1年足らずで会社を退職
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G7(先進7カ国)による協調介入もあり、シナリオどおりに円安が進むと、ふくらんだ円売りポジションを数日後に決済。一気に億超えを果たした。
「会社はすぐに辞めました。就職する前から一定額に達したら辞めようと思っていましたが、まさか1年も経たずに辞められるとは思っていませんでした。
完全に嫌なやつですよね、会社からしたら(笑)」
ところが、ここからyasuさんのトレードは絶不調に陥る。
「退職して時間もできたので、巷にあふれる数々の手法を勉強したけれど結果が出なかった。そもそもその手法に優位性があるのか、身につかなかっただけなのかは不明ながら何をしてもだめな時期でした。
このタイミングで出会ったのが「Ku-Chart」(クーチャート)です。
それ以降、通貨単体の動きを見ながらスウィングでトレードするようになり、収益が格段に向上しました。
2015年8月のチャイナショック時には1日で含み益が2億円を超えたこともありました。実際に決済したときには1億円程度の利益になっていましたが…」
■FX上級者が愛用する「Ku-Chart」とは?
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これはドルインデックスや実効為替レートに近いもの。Ku-Chartの動き方と実効為替レートを比べても、だいたい同方向に動いているのがわかる。
ただし、Ku-Chartでは刻々と動く為替レートをもとに計算されるため、メタトレーダー4(MT4)のインディケータを使えば、ほぼリアルタイムに表示できるのが大きな特徴だ。
■有名個人投資家の知恵が結集された「Ku-Chart」
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くーちゃんさんが有志のセミナーで発表し、それを聞いたMT4ブログの第一人者であった「fai」さんがMT4インディケータを開発。それ以来、トレーダーの間で愛用され続けている。
Ku-Chartは通常、主要8通貨(米ドル、円、ユーロ、英ポンド、スイスフラン、豪ドル、NZドル、加ドル)の値動きをもとに計算される。
実効為替レートは貿易額の大小などによって通貨ごとにウェイトをかけて計算されるが、Ku-Chartの場合は各通貨とも比重は同じだ。
■ゼロサムとは「よれた弁当」
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「遠足時のお弁当って、よれて大変なことになったりするじゃないですか。お米のエリアが広がれば、その分、唐揚げのエリアが狭くなったりする。でも、どんなによれても、お弁当の総量が増えたり減ったりすることはないわけです。
現実的には、質量の重いお米エリアが狭まることはあまりないですし、唐揚げは潰れてもおいしい。よれ方や人気には傾向とパターンが存在します。
為替市場も同じで、どこかのレートが上昇すれば、必ずどこかのレートが下落します。
それぞれの通貨には特性があり、変動には傾向とパターンが存在します。通貨ペアを見ただけではどう“よれた”かわかりにくいですが、Ku-Chartは弁当箱でいう可動式の仕切りのようなもので、どう“よれた”かを認識しやすくなります」
市場参加者が米ドルを買いたくなるような出来事が起これば、ユーロを米ドルに換える、豪ドルを米ドルに換えるといった動きが発生して米ドル高となる。
このとき、Ku-Chartの米ドルのラインは右上がりとなる。
ところが、もしも同時に円を買いたくなるような出来事も起こっていれば、相対的には円も米ドルもどちらも買われているが、米ドル/円のレートはほとんど変化しない場合がある。そんなとき、Ku-Chartは米ドルと円のラインが同じ程度、右上がりとなる。
■通貨ペアが選びやすくなる「Ku-Chart」
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この場合、Ku-Chartでは米ドルと円がともに上昇を示している可能性が高い。米ドル高の相場観は合っていても、通貨ペア選択を間違えると、利益が出にくい。
「Ku-Chartを見れば、米ドルが買われている一方、どの通貨が売られているのか一目瞭然。一方が上がり、他方は下がりと、2つの通貨のラインの幅が『開いていく』通貨ペアだと、トレンドが明確。どの通貨ペアでトレードするかの選択を誤りにくくなるのが大きなメリットです」
今、どの通貨が買われていて、どの通貨が売られているのかを視覚的に把握しやすくなるのが、Ku-Chartの最大のメリット。
これをもとに「もっとも買われそうな通貨」と「もっとも売られそうな通貨」の通貨ペアで取引すれば、最大効率で利益を狙えることになる。
■比率の売買であるFXはシーソーゲーム
一時期、先進国の中央銀行が軒並み通貨安政策を採用して、『通貨安戦争』のようになったことがありましたよね。ある通貨が通貨安に進もうとしても、相対的に買われる通貨がなければ動きにくいんです」
為替レートはあくまでも通貨と通貨の交換比率。米ドルが買われたからといって米ドル/円の交換比率が高まるとは限らない。同時に円も買われている可能性があるからだ。
「金融政策を見て、『英ポンドを長期目線で買おう』と考える人はいますすよね。
そこで流動性が大きいからとドルストレートで英ポンドを買うと、収益は米ドルの影響を大きく受けることになる。最初に話したようにFXは『比率の売買』なので、英ポンドが買われても、それ以上に米ドルが買われてしまえば、英ポンド/米ドルの交換比率は低くなります。
『比率の売買』をしている限り、『シーソーゲーム』から降りられないんです」
(「7通貨ペアを同時にバスケット取引!? 10億超えトレーダーが行う「KYトレード」とは?」へつづく)
(取材・文/ミドルマン・高城泰 撮影/中野和志 編集担当/ザイFX! 編集部・庄司正高)
ドル・円・ユーロの明日はどっちだ!?
最終更新:11月8日(水)12時21分
情報提供元(外部サイト)
世界経済と米ドル/円相場の見通しは? スプレッド最狭のFX会社はどこ? …FX情報サイト「ザイFX!」がFXと為替の疑問をズバリ解決! ビットコイン・仮想通貨情報も! |
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