日本の家計調査では、エンゲル係数を家計消費支出にしめる食料費の割合とし、食料の構成に酒類、外食を含めている。ここでは、OECDのSNA統計から国内家計最終消費支出にしめる飲食料、酒類、外食の合計をエンゲル係数とした。ただし、国内家計最終消費支出から帰属家賃を除いた額を母数とした。これは、通常の家計調査のベースとするための処理である。日本についてはOECDのSNA統計(及びその元となった国民経済計算)において酒類や外食費が独立計上されていないので家計調査の結果を採用した。 もっともエンゲル係数が低い国は米国の15.2%である。もっとも高い国はエストニアの34.7%であり、スペインの34.0%がこれに続いている。日本は中位水準の23.6%となっている。 米国のエンゲル係数が低いのは、生活全般が豊かで食費の割合は相対的に低くなるというエンゲルの法則の本来の要因のほかに、米国が農業生産性の高い食料生産大国であって食材費が相対的に安価であるためであろう。(この他、高い医療費支出に押されて相対的に他の支出が少なくなるという側面もあろう。図録2270参照) スペインのエンゲル係数が高いのは、食費の構成要素である外食費の割合が17.5%と高いためである。外食費比率は食文化習慣や家庭生活の外部化によって左右されるものであり、生活全般の豊かさとはリンクしていない。外食費(及び酒代)を除いた飲食料費比率で見るとメキシコが26.8%と最も比率が高く、エストニアの21.9%が続いている。こちらの方の高さが、むしろ、経済発展度の低さと比例していると考えられる。 外食費比率が高いのは①スペイン、②アイルランド、③ギリシャ、④オーストリア、⑤ポルトガル、⑥英国、⑦イタリアの順である。外食費が低いのは、①ポーランド、②メキシコ、③日本、④イスラエル、⑤オランダとなっている。日本の外食費は高くなったといわれるが、国際比較上は、日本はまだ家庭食の国であるといえる。お隣の韓国は、外食費比率が日本の倍近くとなっている。 なお、酒類消費の割合のもっとも高いのは、エストニアであり、家計消費の6.7%に達している。ビールで有名なチェコはこれについで5.0%である。 たばこを含み、外食費を含まない食費比率で途上国を含む国際比較を図録2270で行っているので参照されたい。 取り上げた30カ国は、エンゲル係数の低い順に、米国、ルクセンブルク、オランダ、ドイツ、オーストラリア、デンマーク、カナダ、スウェーデン、英国、オーストリア、ノルウェー、韓国、ベルギー、日本、フランス、イスラエル、スロベニア、フィンランド、イタリア、ポーランド、スロバキア、アイスランド、チェコ、アイルランド、ハンガリー、ポルトガル、ギリシャ、メキシコ、スペイン、エストニアである。 (2010年7月26日収録、2013年12月30日更新)
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