政府の方針に従うかどうかで、税金の使い道がこんなに変わってしまっていいのだろうか。政府は名護市長選で全面支援した渡具知武豊さんの当選を受け、米軍再編交付金を本年度分から再開することを検討
▼さらに稲嶺進前市長時代に交付しなかった相当額も別の予算措置で支給できないか精査する。新基地反対を公約に掲げた前市政が誕生した2010年から交付が凍結されていた
▼ことの始まりは、第1次安倍政権時代の07年に成立した再編特措法。成立当初から地元の分断を招く「アメとムチ」と批判を浴びた
▼米空母艦載機の受け入れを求められた岩国市は住民投票で反対の意思を示していた。だが、露骨な予算削減の圧力を前に市政が交代。米陸軍司令部の移転先となった座間市も08年に受け入れに転じた
▼一時的な再編交付金が持続的な地域振興につながるかは疑問だ。どこの自治体も財源は厳しい。だからこそ知恵をしぼる。問われるべきは基地負担を強いながら予算で懐柔を図る政府の姿勢だ
▼きょうから渡具知さんの新市政がスタートする。選挙戦では辺野古に触れず「海兵隊の県外・国外への移転」を公約に掲げた。再編交付金を受け取れば、地元は新基地容認とみられるだろう。多様な民意を取り込んだだけに、市民の分断修復という新市長に課せられた責任は重い。(知念清張)