工学部というと機械や電気電子をイメージする人が多いでしょうか。
プログラミングなどの情報系も人気ですね!
自動車や精密機器、システムなどの、いわゆるエンジニアになるための学問と言われています。
これは間違いではないのですが、ひとくちに工学といっても学問は様々。
”マイナー分野”もたくさん…
1つは僕の専門でもある生物工学。
バイオテクノロジーとまとめられますが、食品や農産物の工業化など、ダイレクトに産業化につながりやすい学問でもあります。
ITでも機械でもない…マイナーな『食品メーカーエンジニア』のリアルを綴ってみる
食品、医薬品メーカー希望が多いですが、他のバイオ系専攻と比べると比較的就職に強い専攻です。
その理由がバイオではなく『工学もわかるから』というのが悲しいところですが…
もう1つ、生物工学と近い位置にある学問が化学工学です。
この2つの専攻はリンクしている部分も多く、生物化学工学とまとめられることもありますね。
化学というと有機化学が花形で、就職にも困らないイメージでしょうか。
同じ化学でも、化学工学のアプローチは全然違います。
今日は、化学工学で修士を卒業し、現化学工学エンジニアでもあるミドノン氏の体験談とともに化学工学専攻のリアルについてまとめていきたいと思います。
化学工学とは?という基本から、就職、キャリアプランまで書いていますので、ぜひ参考にしてください!
ミドノン
東海地方出身、関西在住の社会人1年目(25歳)
製造業で働きながらブログ書いてます。
後輩である大学生・大学院生には後悔の少ない大学生活を送ってほしいので、反面教師として役立つ様な記事を書きたいです。
ブログ:http://www.midonote.com
Twitter:@LearnMidonon
【目次】 [非表示]
化学工学の学生は大学で何をやるの?
そもそも化学工学とは?
化学工学(かがくこうがく、英: chemical engineering)とは、化学工業において必要とされる様々な装置や操作についての研究を行う工学の一分野である。
定義だけ見てもよくわからないですが、実際とても表現しづらい学問です。苦笑
一般的に「化学」というと「現象がなぜ、どのようにして起こるのか」という「原理・原則を明らかにするもの」がイメージされがちです。
例えば、医薬品メーカーでは薬学、有機化学などのプロが『新しい医薬品をどうしたら合成できるのか』を研究しています。
対して「化学工学」では「すでにわかっている知見を使って、欲しいものをどう作るのか」ということを考えます。
つまり、有機化学や無機化学など分野で得られた成果をツールに「どのようにして製品を作るのか」を考えるのが「化学工学」という学問です。
以前、私が教授に言われたフレーズが印象に残っています。
『化学工学はプラント(工場)を作るための学問である』
これが化学工学の本質と言えるでしょう。
化学工学の授業では何を学ぶの?
化学工学でも、他分野(有機化学や無機化学など)と同じように講義と実験があります。
どちらも先ほど書いた「プラントを作る」という目的に特化しています。
講義のメインはプラント設計に必要な知識。
例えば、反応式の立て方や計算などはかなり多くなります
- 液体の輸送に関する計算
- 加熱に必要なスペックの計算
- 混合物を分離する条件の計算
などなど…
これらは上から流体力学、熱力学、分離工学で学ぶ分野でもあります。
化学工学は、色々な学問をプラントをつくるためにまとめ上げる学問。
そのぶん、実践的な知識が身につきますね。
化学工学は『実学』ですからコスト意識も大切です。
どのような設計が1番利益が大きくなるのか、イニシャルコストとランニングコストを考えて最適な設計を考えます。
『プラントを作るため』と言いましたが、本質は『プラントをつくって儲けるため』の学問です。
あらゆる内容がココに集束するので「お金」が好きな人にとってはとても楽しい分野ですよ。
化学工学での学生実験はおおきく分けて2パターン。
- シミュレーションするためのデータを得る実験
- 1工程(蒸留や濾過)などの単位操作を確認する実験
リアルでプラントがどう動くか計算するためには、速度、粘度、pH、材質などなど…
何が影響するのか、あらゆる角度からデータを集めないとシミュレーションできません。
これらは『スケールアップ』というプラントエンジニアの一番大事な仕事につながります。
ここでの”スケールアップ”は「実験で得られたデータを、実際に工場レベルで再現すること」を言います。
大学では基礎的な授業、実験がメインになりますが、他の学部と比べてもかなり実学的といえるでしょう。
『プラントをつくって儲けるため』につながらなければ何の意味もありませんからね。
化学工学の研究室はどんな感じ?
ここまでは私が体験した学部時代の話です。
研究室に入ってからの内容はラボ次第です。
ちなみに私は研究室に入ってからは一度も実験をしていません!
というのも、私のメインテーマはシミュレーションだったたからです。
もちろん、シミュレーションと実験の両方をやる人も存在したので、ケース・バイ・ケースですね。
「何の役に立つかはまだわからないけど、気になるから明らかにしたい」
アカデミックの世界にいると、こういう願望が出てくることもあります。
化学工学ではこのような基礎研究に近いテーマを扱うことは少なくなります。
基本的には『こういうプラントを作りたい』『この技術を効率化したい』というようにテーマが決まります。
未知の出来事を明らかにしたい人は退屈かもしれません。
化学工学専攻のキャリアプラン
就職については”コスパ最強”だが…?
化学工学は工場を持っているメーカーではかなり需要が高くなります。
プラントエンジニアになると、授業で学んだような計算、実験をそのまま活用できることも多いです。
触媒化学や分析化学が専門だった友人と比べて、スムーズに業務に入れました。
就職については、化学工学という分野はコスパ最強だと感じています。
ただし、これは研究職ではなく生産技術職としての話。
”生産技術”の職務範囲も企業によってまちまちですが、いずれも工場を作るプラントエンジニアとしての役割が求められます。
就活シーズンに、OBのリクルーターが訪問してきた時も、40人中で研究職は2、3人だけでした。
研究職は、募集に対して応募数がとても多く、ただでさえハードルが高いです。
化学メーカーの研究職では、有機や材料など、実験や基礎研究に強い専攻と戦わないといけません。
対して、プラントエンジニアはどの企業でも不足している人材です。
理系大学院生のリアルな就活とは!就職できない専攻と博士の闇を暴露してみる
私も大手メーカーの生産技術職ですが、研究職を見ると東大・京大・東工大など、一流大学出身の方がほとんどです。
研究職志望で就活していた同級生はかなり苦戦していましたね。
リクルーターが中心?化学工学の就活のリアル
ここでは私の就活体験談を書いていきますが、周りの話を聞いていると、どうやらかなり恵まれた環境にいたようです。
まず、就活解禁前に研究室のOBがやってきます。
解禁前なので、リクルーターとしてではなくて「単なるOBが母校を尋ねてきた」という建前ですね。
解禁後はきちんとリクルーター訪問という形で研究室にきます。
就活シーズンの後半では、企業が週4回も研究室に訪れて来る時期すらありました。
私は企業からリクルーターが送り込まれてくるのが普通だと思っていたのですが、有機や分析化学の友人からは『普通じゃない!』と怒られましたね…
リクルーターが来ない(いない)企業でも恩恵があります。
技術系の枠では、工学系のみを対象にした募集も多くなります。
純粋な化学系ははじかれてしまうのですが『化学工学』では、むしろエンジニアリング&化学の両視点がある人材として重宝されることも。
私含め、研究室の同期は全員が大手メーカーに就職していましたね。
おわりに
”生物化学工学とまとめられることもある”
と書きましたが、化学工学と生物工学専攻では、就活のハードルが全然違います(管理人の体験談)
ただ、どちらも『工学+α』がある貴重な人材として見られます。
高校時代は『化学』と書いてあるとどれも同じ専攻に見えましたね。
実際に大学に入ってみると、勉強できるフィールドの幅広さに驚くばかりです。
大学院で専攻を変えるのもメジャーになってきましたし、自分のキャリアを考えて進路選択していきたいですね。それでは。