前回、「米国長期金利の上昇が株下落の直接の要因とは考えにくい」という内容のコラムを書かせていただいた。
⇒ http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54327
この内容は必ずしも誤りではないと考えているが、正確には、「米国名目長期金利の上昇が株下落の直接の要因とは考えにくい」と言ったほうがよいだろう。
今回は、これを「実質ベース」に置き換えて考えてみる。実質金利でみると、結論は、「実質金利の上昇が今後も続くようであれば、今回のような株価下落の再来に注意すべきではないか」という風に変わる。
現在の米国金利を名目で考えた場合と実質で考えた場合で、金利が経済に与える影響についての解釈は変わるかもしれない。
1月末からここまでのマーケットの波乱原因は米国長期金利の上昇といわれている点については今週も変わりがない。さらにいえば、多くの識者や市場関係者が、米国長期金利の上昇は米国で予想インフレ率の上昇が加速したためだと言っている。
たしかに市場の予想インフレ率は昨年11月半ば以降上昇している。だが、注意すべきは同時に「実質金利」も上昇している点だ(名目金利は、一般的には実質金利と予想インフレ率の合計値である)。
例えば、昨年末から2月5日にかけて予想インフレ率(ここでは、「5年-5年のフォワード予想インフレ率」というものを用いる)は、0.19%上昇していたが、実質金利(ここでは、「5年のインフレ連動債利回り」を用いる)は0.21%上昇した(図表1)。
すなわち、一方的に予想インフレ率が上昇しているわけではなく、むしろ、実質金利の上昇幅の方が大きい。これをどう解釈するかが今回の話題である。
金利の議論は、ある特定年限の金利だけでは不十分である。そこで、「イールドカーブ」をみてみよう。
まず、「名目金利」のイールドカーブをみると、昨年12月から今年1月にかけては、各年限がほぼ均等に小幅上昇しており、形状もほとんど変わっていない(図表2)。
一方、「実質金利」のイールドカーブをみると、昨年12月から今年1月にかけて、主に、短中期ゾーンを中心に上昇幅が大きく、その結果、その形状を大きく変えている(図表3)。