陸上自衛隊のAH64戦闘ヘリコプターが佐賀県神崎市の住宅地に墜落した事故は、目撃証言などからメインローターが外れたことが直接の原因との見方が強まった。
航空機の羽根にあたるメインローターが消えたとすれば、飛行に必要な揚力が失われ、墜落するほかない。防衛省は人為ミス、構造的欠陥の両面から事故調査を進めている。
AH64はそもそも生い立ちが不幸だった。防衛省は老朽化したAH1対戦車ヘリコプターの後継として62機を調達する予定だったが、米ボーイング社が約束を破って生産中止を決め、富士重工業はライセンス生産の続行が不可能になり、13機の調達で打ち切らざるを得なかった。米国に運命を左右される日本の姿を連想させる。
事故機は陸上自衛隊が2006年3月に調達した2番目に古い機体だった。飛行時間1750時間で交換する、4枚のローターを束ねる「メインローター・ヘッド」と呼ばれる取付部の交換を終え、5日午後4時36分に佐賀県の目達原駐屯地から離陸した。
駐屯地上空で飛行したまま止まるホバリングを実施後、飛行を開始したところ、飛び方が不自然なため管制官が呼びかけた。しかし応答がないまま、離陸から7分後に墜落した。乗員2人が死亡、家にいた11歳の女子小学生が軽傷を負い、住宅3軒が炎上した。
映像をみると、機体は左右に振れながら急激に落下している。複数の目撃者は「メインローターがなかった」と証言しており、6日、現場から約300m離れた用水路にメインローター1枚が落下しているのがみつかった。交換したばかりのメインローター・ヘッドごと外れたか、メインローターが外れるなどして、急速に揚力を失ったとみられる。
実は、ヘリコプターのメインローターが外れて起きた事故は筆者も体験している。
1996年6月17日(日本時間18日)、環太平洋合同演習(リムパック)参加中の海上自衛隊護衛艦「ひえい」から離陸したSH60J哨戒ヘリコプターが、米国ハワイ州オアフ島の米海軍バーバスポイント基地に着陸後、誘導路を移動中に突然、大きな衝撃とともに炎上した。
乗員4人と引率の海上自衛官1人、筆者を含めた記者3人の合計8人が乗っていたが、筆者を含む6人がけがをした。
海上自衛隊は3年後、「メインローターと中心軸をつなぐ金属部品に微小な突起物が残っていた製造ミスが原因」とする事故調査結果を発表した。これによりメインローターと中心軸をつなぐハブアームの一部に亀裂が生じ、4枚あるメインローターの1枚が脱落、機体が壊れて燃料が漏れ発火したと結論づけた。
点検中、他の機体でも同じ不具合が見つかっており、今回のAH64の事故との類似性を指摘できるかもしれないが、断定はできない。