NHKスペシャル 人体 神秘の巨大ネットワーク(4)万病撃退!腸が免疫の鍵[SS][字][再] 2018.01.31
う〜ん今日のテーマは「腸」か。
まっうんこが通るだけのただの管だろこれ。
(ノック)ちょっとタモリさん。
その声は山中さん。
腸がただの管なんてとんでもありませんから。
最新の研究で腸は私たち全身の免疫を司るとっても大切な臓器である事が分かってきています。
腸が免疫を司る。
超すごいんです!ダジャレですか?それは。
・僕は超楽しみにしています。
・ハハッ分かりました。
かぶせてきましたね。
タモリさん腸がただのウンチが通る管なんて言ってると時代に乗り遅れますよ。
腸といえば今大注目なのが腸内フローラ。
ダイエットや美肌肥満解消まで腸内細菌が体によい効果を生み出していると話題沸騰ですよね。
細菌たちを手なずけている臓器なんて人体の中でも腸だけです。
そしてこちらは腸の管を取り巻く無数の神経細胞を高精細に捉えた世界初の映像です。
腸が持つ神経細胞は脳に次いで多いおよそ1億個。
第二の脳とも呼ばれています。
その神経細胞の働きで筋肉を操り食べ物を消化吸収する複雑な動きを腸は独自に行う事ができるんです。
「シリーズ人体」ではいろんな臓器が脳に頼らず活躍しているとお伝えしてきましたが今日の主役腸は別格。
まさに人体の中の独立国家ともいえる臓器なのです。
実はその腸が私たちの命に関わる意外な役割を果たしている事が明らかになってきました。
それこそが免疫力を司るという大仕事。
免疫力とは冬場に怖いインフルエンザや食中毒はもちろんあらゆる病気から私たちを守る大事な力。
その働きがおかしくなると花粉症やぜんそくなどのアレルギー更にリウマチなどの深刻な病も引き起こしてしまいます。
そんな大事な免疫力を保つために腸が利用しているのが…腸はまるで水戸黄門の助さんと格さんのように2つを従えて全身の免疫力をコントロールしている事が分かってきたのです。
最先端の研究で見えてきた腸の驚くべき実像に迫ります。
どうすればこの命を全うできるのか。
体の中には巨大な情報ネットワークが存在する。
臓器同士のダイナミックな情報交換。
命を支える臓器たちの会話に今こそ耳を傾けよう
「人体」今日のテーマは?はい「腸」です。
さっきすごい豪華なメンバーでトイレに並んでいらっしゃいましたね。
あれ3人並んでるトイレってまあないでしょうね。
現役大リーガーニューヨークヤンキースの田中将大投手です。
田中さんよろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
本当体大きいですね。
いえいえ。
びっくりします。
いやいやいや…。
田中さんはふだんの生活の中で腸の事を意識する事ってありますか?小さい頃はよく体が弱くて小児科とかに行ったりとかしてたんですけど大きく成長するにつれて全然大丈夫ですね。
さあ今日は腸がいかにすごい臓器かを知るためにこちらをご覧頂きます。
どうぞ。
名付けて…
(小島)この完成度はどうなんでしょうか?かわいらしく…。
ではCGマーくんの腸を見てみます。
どうぞ。
折り畳まれた腸は…。
(田中)何か恥ずかしい。
(小島)お〜!
(田中)いやでも長いな。
(小島)そうなんだ。
えっ?なんと…
(小島)信じられない!腸の表面は平たんではなくてものすごいたくさんひだがいっぱいあるんですね。
それを広げるからこんな面積になるんです。
(小島)腸すごいですね!今日はなんと田中さんの奥様の里田まいさんからある日の食卓のお写真を頂いてまいりました。
(小島)真ん中はお刺身ですか?
(田中)お刺身ですね。
野菜たっぷり。
毎日こんなごちそう食べておられるんですか?あ〜そうですか。
羨ましい。
(小島)すばらしい。
つまり田中さんの腸は毎日の食事から大量に栄養や水分を吸収し続けている事になりますよね。
すごいな。
頂きます!
(一同)頂きます!でも腸に入ってくるのは食べ物だけではありません。
こんな病原菌やウイルスが一緒に入ってきてしまう事もありますよね。
怖い!腸は体の中でもっとも外敵にさらされやすい場所なんです。
そうだよね。
でも実は…そうなんですか?腸はですね今では免疫力を司る臓器そんなふうにも考えられ始めています。
え〜想像つかないっすよね。
いきなり腸が免疫を司るなんて言われてもピンときませんよね。
でも田中さんが元気で活躍できる秘密がまさに腸にあるんです。
世界最高峰のメジャーリーグで大活躍する田中投手。
渡米から4年連続で二桁勝利をあげ今や名門ヤンキースのエースです。
強さを支えているのは強じんな肉体。
プロになって丸10年。
風邪や食あたりなどで試合を休んだ事は一度もないといいます。
まさに鉄壁の免疫力。
一体何が田中さんの免疫力を高めているのでしょうか。
その秘密を腸のミクロの世界へのぞきに行きましょう!ここは胃の一番奧の部分。
ぽっかりと穴が開いています。
この先が腸です。
中に入りますよ。
表面はきれいなピンク色。
透明な粘液に覆われています。
拡大してみます。
びっしりと1ミリほどの突起が並んでいます。
腸には欠かせない絨毛です。
特別な光を当てて撮影すると…。
絨毛の内部が透けて見えました。
網の目のように走っているのは血管です。
食べ物の栄養は絨毛から吸収され血液に乗って全身に運ばれていきます。
この腸の表面付近に住んでいるのが腸が従える助さんと格さん。
そう腸内細菌と免疫細胞なんです。
腸の表面を覆う粘液の中を顕微鏡で撮影した映像。
何かがうごめいています。
これが助さん腸内細菌です。
腸内細菌の数はおよそ…腸の中で生きる細菌を世界で初めて高精細に捉えました。
ではもう一方の格さん。
免疫細胞はどこにいるのでしょう?絨毛に覆われた腸の表面を特殊な顕微鏡で見てみます。
青く見えるのは上から見た絨毛です。
輪切りにしていくと…。
絨毛の内部に赤いものが詰まっています。
これが全て格さん免疫細胞なんです。
更に絨毛が生えている腸の壁の裏側を見ると…。
全面真っ赤。
ものすごい数です。
免疫細胞とは病原菌やウイルスなどの外敵を攻撃し排除するミクロの戦士です。
全身に2兆個もいるといわれています。
なんとそのおよそ7割を私たちの腸が寄せ集めて壁のすぐ内側に配備しているのです。
腸は外敵の侵入から…だからこそ免疫細胞を集結させて田中さんの体を病気から守っていたんですね。
腸が従えた大量の免疫細胞たちはいざという時どんなふうに敵の侵入を防ぐのか。
腸の中では驚くような事が起きているんです。
ここは田中さんの腸の表面付近。
腸が従える腸内細菌たちが無数に漂っています。
あっ何かやって来ました。
悪そうな姿。
病原菌の襲来です。
このままだとおなかを壊しちゃう。
そのころ腸の壁の内側。
羽の生えたような姿をしたのが腸が従える免疫細胞です。
異変を察知しましたよ。
攻撃メッセージを伝える物質を放出。
腸の壁の細胞が受け取っています。
すると…。
腸の壁が出すこの煙秘密兵器の殺菌物質なんです。
免疫細胞と腸の見事な連係プレーで病原菌を撃退しました。
田中さんが病気知らずで大活躍できる秘密は人体の門番腸のすごい働きにあったのです。
すごいですね。
(小島)頑張ってくれてる。
腸の仕事が1個増えちゃいましたね。
いえいえ感心するのはまだ早いですよ。
なんと全身の免疫力を高めるために免疫細胞を訓練するという重要な役割も果たしている事が分かってきました。
そのため…今回さまざまな角度から撮った顕微鏡画像を組み合わせ訓練場の姿を立体的に捉えました。
腸の表面をびっしりと覆う絨毛。
よく見ると一部だけ絨毛がない平らな場所があります。
更に拡大すると…表面に小さなくぼみがあります。
実はこのくぼみこそ免疫細胞の…入り口近くにはいつもさまざまな腸内細菌や食べ物のかけらが漂っています。
腸内細菌がくぼみに捕らえられました。
まるでアリジゴクにはまったように腸の壁の中に引きずり込まれていきます。
壁の内側にいるのは…そうたくさんの免疫細胞たちです。
トゲトゲした形の運び屋の細胞が腸内細菌を捕らえて免疫細胞のもとへ向かいます。
これは人体にとって敵ではない腸内細菌だと免疫細胞に学ばせているようです。
免疫細胞はこの細菌を仲間として認識しました。
あっ今度はちょっと悪そうな細菌が捕らえられましたよ。
中に引きずり込まれます。
そして…。
攻撃すべき敵として学習しました。
やはり有害な病原菌だったようです。
こんなふうに腸はわざわざ細菌などの異物を中に引き入れて免疫細胞をトレーニングしていたのです。
訓練場を顕微鏡でとらえたこの映像。
拡大すると訓練中の免疫細胞と見られる丸い細胞が密集しています。
腸での訓練で免疫細胞はインフルエンザや肺炎などさまざまな病気と戦う能力が高められます。
その活躍の場は腸にとどまりません。
訓練を終えた免疫細胞は血液の流れに乗り腸から体中に派遣されると考えられています。
そして全身の至る所で病原菌やウイルスと戦う戦士となります。
腸内細菌と免疫細胞の2つを大量に従えた田中さんや私たちの腸。
それはまさに全身の免疫力を司る人体の免疫本部だったのです。
へえ〜すごい。
本当に何か腸がまだまだ知られてない事がたくさんあって今研究がホットな状態だというのがすごく分かります。
え〜これが敵です…。
こちらは味方ですので間違えないように。
あのタモリさんまさに腸がそういう訓練をやってます。
先ほどの訓練場で腸はこの子はいい子です。
でもこいつは悪いからちゃんと攻撃しようねという両方の訓練をしている。
そこで判断しなきゃいけない。
すごい事してますよね。
何か人間自身よりも腸の方が頭いいような気がしてきましたね。
腸の方が頭いい。
はい。
この腸と免疫の関係というのは今本当に研究者の間でホットなトピックでもう毎週のように重要な論文がどんどんどんどん発表されて研究者同士がケンケンガクガク自分の説を闘わせている。
免疫を育てるという腸の重要性だんだん分かって頂けたかと思いますが…やっかいな問題?免疫というのはもともと外から入ってきた細菌であるとかウイルスをやっつけるのが役割なんですが……という事がだんだん分かってきています。
(一同)え〜っ!免疫本部の腸がしっかり育てている免疫細胞。
それが暴走するなんてどういう事なのでしょうか?イギリス・ノッティンガムの郊外。
まさに免疫の暴走に苦しめられている人がいます。
体操の練習に打ち込む…22歳です。
小さい頃からオリンピック選手を目指して数々の大会で活躍してきました。
ところが4年前…深刻なショック症状で病院に運ばれた回数は250回に上ります。
彼女を苦しめる病とは…自分の汗涙花粉など身の回りのあらゆるものに対して体中に激しいアレルギー症状が起きてしまいます。
アレルギーによって髪の毛も抜けてしまいました。
極度の食物アレルギーのため安全に食べられるのはブロッコリーやジャガイモなど数種類です。
こうした症状を引き起こしているのがナタシャさんの体で起きている…これは暴走した免疫細胞の様子を捉えた貴重な映像です。
激しく動き回りながら盛んに放出している赤い粉のような物質。
その際体の細胞にまでダメージを与えさまざまなアレルギー症状を引き起こすのです。
毎日25錠もの薬をのんでいますが症状を止める事はできません。
何が免疫の暴走を招いているのか。
今回専門家が行ったある検査によって彼女の腸に異変が起きている事が分かりました。
検査したのはナタシャさんの便です。
便を調べると腸内細菌の種類や数が分かります。
ナタシャさんの検査結果を見ると…健康な人に比べていくつかの腸内細菌が明らかに少なくなっていました。
これは一体何を意味するのでしょうか?一方…4年前に突然多発性硬化症という病気を発症しました。
手足のしびれや震えが止まらず徐々に歩く事もままならなくなりました。
尾崎さん。
症状が進むと失明したり言葉を話せなくなったりするおそれもあります。
白く濁った部分。
なんと暴走した免疫細胞が脳の細胞を敵と勘違いして攻撃しているのです。
驚く事にこの病気もまた患者さんの腸で異変が起きている事が突き止められました。
免疫学者の山村隆さんが患者の便を詳しく解析したところ…やはりいくつかの腸内細菌が少なくなっていました。
免疫の暴走が引き起こす2つの病。
そのどちらでも特定の腸内細菌の減少が発見されたのです。
(一同)へえ〜。
不思議。
なぜ免疫が暴走してしまうかはまだ十分分かっていません。
ただ有力な仮説として今腸内細菌の異常が関わっているんじゃないかと多くの研究者がそんなふうに考えだしています。
(一同)え〜っ!ビール飲むとこの辺にちっちゃなブツブツが出来てそれが隣同士つながるんです。
え〜っ!克服されたんですね。
克服して。
私は…ワンちゃん。
目からかゆくなってったりとかしますね。
田中さんはどうですか?僕は…アメリカンチェリーとかリンゴの皮とか…。
急に本当最近ですね。
目の方に来たりとかして。
花粉症にしても。
そうらしいですね。
あ〜。
なるほど。
その腸内細菌もう一度ご覧頂きましょう。
これ全部細菌ですか?え〜っ!はい。
世界で初めて高精細に捉えた生きた腸内細菌の映像です。
すごい映像ですね。
ここまではっきりくっきり見れるというのは驚異的ですね。
(小島)そうなんですか?1,000兆個という人もいますから。
すごい数です。
私たちの腸は人体に有益な腸内細菌を選んで腸の表面に住まわせているんですよね。
代表的なものの一つがこの…耳にした事がある…。
有名な。
はい。
腸の調子を整えてくれる善玉菌ですよね。
こちらは今大注目の…そうなんですか?一方であの免疫の暴走が起きていたナタシャさんと尾崎さんのような病気の方の腸では聞き慣れない腸内細菌がいくつか少なくなっていましたよね。
2つの病気に共通して少なくなっていたのが…今研究者の間で大注目の腸内細菌なんです。
このクロストリジウム菌だけでさえ100種類くらい。
えっこれは1種類の菌じゃないんですか?はい。
中には悪い菌もいます。
そうなんですか。
へえ〜。
腸の中で…謎を解く鍵が免疫研究の世界的権威坂口志文さんによって発見されました。
外敵を攻撃するのが仕事と思われていた免疫細胞の中に全く違う役割を持つ特別なものがいる事を見つけたのです。
その発見はノーベル賞級と目されるほど。
世界中の研究者を驚かせました。
坂口さんが見つけ出した新たな免疫細胞はTレグと名付けられました。
活動する時にはこんなふうに姿を変えると考えられています。
このTレグ体の中で暴走している免疫細胞を見つけると驚くべき働きをします。
なんと…暴走を抑えてくれるのです。
まさに免疫のブレーキ役。
そんな重要なTレグが私たちの腸で生み出されている事が最新研究で明らかになってきました。
しかも免疫の暴走と関係していたあのクロストリジウム菌の働きが鍵を握っているというのです。
腸の中で一体何が起きているというのでしょうか。
腸の管の中。
表面を覆う透明な粘液の層に入っていきますよ。
見えてきました。
腸が従える腸内細菌の集団です。
大注目のクロストリジウム菌は…いました。
食べ物のかけらにかじりついて盛んに何かを放出しています。
実はこれあるメッセージを伝えるための物質なんです。
そのメッセージとは…。
おや?メッセージ物質が腸の壁の中に入っていきます。
丸い形をしたのは腸を守る免疫細胞です。
メッセージ物質を受け取っていますよ。
形が変わりました。
免疫のブレーキ役Tレグの誕生です。
なんと腸に住むクロストリジウム菌がメッセージ物質を届けると免疫の暴走を抑えるTレグが生まれるんです。
こうして腸で生まれた免疫のブレーキ役Tレグは先ほどの腸で訓練された免疫細胞と同じように血液に乗って全身に広がっていくと考えられています。
そしてたどりついた先で暴走している免疫細胞を見つけると…。
その異常な興奮をしずめ暴走を抑えます。
全身の免疫本部である腸の役割は免疫力を高めるだけにあらず。
ブレーキ役も生み出して全身の免疫力を程よくコントロールする役割まで担っていたのです。
さっきVTRに出てきた…そうですね。
そういう考えが今非常に注目されています。
本当に私たちの免疫っていうのは巧妙にできています。
攻撃役とそれを抑える役のバランスで敵は攻撃して味方は攻撃しない。
本当見事としか言いようがないんですけれども。
すごいですね本当に。
しかも細菌がメッセージ物質を作り出して全身の免疫の力を制御している。
これまで「シリーズ人体」では臓器同士がさまざまなメッセージ物質をやり取りして私たちの命や健康を支えている事をお伝えしてきました。
今回の主役腸は全身の免疫力を司るためになんと腸内細菌が出すメッセージ物質まで利用していたんです。
(小島)不思議。
攻撃力を高める力も抑える力もコントロールしている私たちの腸なんですけれども気になるのは…クロストリジウム菌。
どうやって増やしたらいいのか。
それがある意外な場所で解決のヒントが見えてきたんです。
今回私たちはなぜかアレルギー症状が治まったという人が相次いでいる不思議な場所を見つけました。
それは…。
(鐘の音)700年の伝統を持つこのお寺。
二十歳前後の若い僧侶たちおよそ60人が修行に励んでいます。
実は修行生活を送る若い僧侶たちにアレルギーが改善したという人が続出しています。
修行僧たちの腸で何が起きているのか。
20人に便を頂いて腸内細菌を詳しく調べてみました。
解析をお願いしたのは腸内フローラ研究の第一人者…その結果修行僧たちの腸にはあの大注目のクロストリジウム菌がしっかり存在している事が分かりました。
修行生活の中に何かクロストリジウム菌にとってよい事があるのではないか。
服部さんが注目したのは修行僧が毎日食べている…食材にたっぷり含まれる食物繊維が鍵を握っているというのです。
実は最新研究で食物繊維の意外な働きが突き止められました。
腸内にクロストリジウム菌がたくさんいるマウスに食物繊維たっぷりのエサを与え続けると…マウスの体内であの免疫のブレーキ役Tレグがグンと増えました。
ところが同じくクロストリジウム菌がたくさんいるマウスに食物繊維が少ないエサを与え続けたところ…あまりTレグが増えませんでした。
つまり…この食物繊維。
私たち日本人とは深いつながりがあります。
はるか昔からよく食べていたキノコや木の実に始まりその後も穀物根菜海藻類など日本の食材は常に食物繊維たっぷり。
そのため長い年月の間に私たちの腸にはクロストリジウム菌など食物繊維を好む腸内細菌が多く住み着くようになったと考えられています。
服部さんの最新研究でそんな日本人の腸内細菌が優れたパワーを持つ事が明らかになりました。
調べたのは腸内細菌が免疫力をコントロールする物質を出す能力です。
欧米など11か国と日本の健康な人で比べると…。
この違い。
日本人の腸内細菌は免疫力をコントロールする能力が群を抜いていました。
長い間食物繊維をたっぷりとり続けてきた日本人には誰にでも鉄壁の免疫力を生む腸のパワーが備わっていたのです。
ところが現代の日本ではアレルギーなど免疫の暴走による病が増え続けています。
腸の中で長い時間をかけて育まれてきた腸内細菌と免疫細胞との関係。
それが私たちの急速な食の変化によって乱されているのではないかと考えられ始めています。
すごい現象だと思います。
獲得してきたものなんですね。
それがこの数十年突然環境が変わったり食べ物が変わったりしてちょっと恐らく腸内細菌の方もびっくりしてるというか変化についていけてないのかもしれないですね。
修行僧の皆さんが食べていた食物繊維たっぷりの精進料理。
私たちの日々の食生活の中でも意識すればたくさんとる事ができるんですよね。
そのとってもいい例が田中さんが毎日食べていらっしゃるお食事にありました。
そうなんですか?はい。
こちら奥様の手料理。
(小島)あ〜そう言われてみると。
食材のお写真なんですけれども食物繊維たっぷりのごぼうやキノコ類。
キノコいいらしいですね。
(小島)おいもも食物繊維ですか?はい。
すばらしいですね。
ざっと計算すると含まれている食物繊維の量は1食でおよそ17グラムなんですけれども先ほどの修行僧が食べていた食物繊維1日で20グラム。
田中さんは1食で17グラムですからあの修行僧が…。
1日かけてとる…。
1日かけてとる量にかなり近い。
自宅にいる時は妻がああいう感じでバランス考えて食事作ってくれてるので体調を崩す回数が減ったのはそういう事も関係してるのかなというふうに何か今思いましたね。
感謝しないといけないですね。
なんとかなる。
全身の免疫力をコントロールする腸の驚くべきメカニズム。
その解明によって病気の治療も変わろうとしています。
多発性硬化症と戦っている尾崎さん。
今ある臨床試験に参加しています。
この白い粉。
免疫のブレーキ役Tレグを生み出すメッセージ物質を人工的に作ったものです。
これを腸に届けTレグを生み出そうというのです。
既に動物での試験では脳の細胞への攻撃が抑えられる事が確かめられています。
臨床試験では11人の患者さんのうち尾崎さんを含む9人の血液中でTレグが増加しました。
腸が免疫をコントロールする力を取り戻す事によって難病を克服できる可能性が示されたのです。
腸内細菌と免疫細胞を従えた人体の免疫本部腸。
その機能は決して生まれつき備わっている訳ではありません。
誕生の瞬間。
私たちの腸にはさまざまな細菌が初めて入ってきます。
たくさんの中からよい細菌だけを選んで育てていく最初の一歩。
実は母乳によって促される事が分かっています。
赤ちゃんの腸に流れ込んできた母乳の成分をエサにしてまず急速に増え始めるのが…それを皮切りに私たちの腸は大切な腸内細菌を選んで住まわせ全身の免疫本部としての機能を次第に成熟させていくのです。
腸はあなたが日々食べるものを糧として腸内細菌たちを養い全身で働く免疫細胞を育て上げています。
ミクロの世界で交わされ続けているたくさんのメッセージが今この瞬間もあなたの命と健康を支えているのです。
「シリーズ人体」。
次回はいよいよ脳です。
あの芥川賞作家又吉直樹さんの脳を徹底解剖!記憶そしてひらめきの秘密に迫っていきます。
更にメッセージ物質を解明する事で認知症を克服する画期的な方法も見え始めています。
是非ご覧下さい!今日は滋賀県の彦根に来ております。
はい。
2018/01/31(水) 00:10〜01:00
NHK総合1・神戸
NHKスペシャル 人体 神秘の巨大ネットワーク(4)万病撃退!腸が免疫の鍵[SS][字][再]
シリーズ「人体」第4集のテーマは“腸”。消化・吸収の要である“腸”が、じつは私たちを万病から守る全身の「免疫力」を司っていることが、最新研究から明らかに。
詳細情報
番組内容
ひとたび、腸で免疫のバランスが崩れ、免疫細胞が暴走を始めると大変なことに。花粉や食べ物、自分の体の一部まで「敵」と誤って攻撃し、さまざまなアレルギーや免疫の病を引き起こしてしまう。どうすれば、腸内細菌が出す“メッセージ”を活用してこの暴走を抑え、アレルギーなどを根本解決できるのか。最先端の顕微鏡映像や高品質のCGを駆使して、知られざる腸の力に迫る。
出演者
【司会】タモリ,山中伸弥,久保田祐佳,【ゲスト】田中将大,小島瑠璃子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
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