法定通貨・仮想通貨・電子マネーの特徴と違いは?

この記事は約 7 分で読めます。

仮想通貨の存在意義を知りたい

今、日本で仮想通貨を持っている人の大半は投機目的のはずです。「ビットコインが儲かるらしい。」「寝ててもお金が増える。」という話を聞いて、慌てて取引を始めた人は少なくないでしょう。

わたしは2013年のキプロス危機でビットコインを知り、ビットコインが高騰した時期に現状と未来について調べてWEB上で公開しています。マウントゴックス事件よりも前ですね。

当時は、以下のように2013年末にかけてビットコインの暴騰があり(年初から63倍)、年が明けてマウントゴックスの閉鎖があり、いろいろと世間を賑わせていました。1BTCが10万円を超えたときは「あー、もう手出せないわ。」と思ったんですけどね……。

2012-2017ビットコイン価格推移

出典|ビットコインの歴史と価格推移 – ビットコインの解説 | Bitcoin日本語情報サイト

ビットコインは2017年末にも大暴騰し、一時は1BTC=200万円を超える高値をつけました。その他のアルトコインも合わせて「億り人」になった羨ましい人、一方その後の暴落で退場した人もいるでしょう。

さて、これだけ乱高下を繰り返す仮想通貨とは、実際のところどのような存在なのでしょうか。(法定)通貨や電子マネーとはどう違うのでしょうか。

通貨の条件のおさらい

以前「通貨とはなんぞや?」というお話をしましたが、まず通貨が通貨足り得る理由、その価値を認められる条件をおさらいしておきましょう。

通貨の条件
条件1.発行主体に信頼があること
条件2.価値が変動すること
条件3.総量が規制されていること
条件4.持ち運び・交換に利便性があること
条件5.価値が経年劣化しないこと

参考|通貨の特徴とは?仮想通貨の未来を考えるために必要な知識

通貨とは国が経済をコントロールするために発行・管理する貨幣のことです。国が「このお金には価値がありますよ。」と法律で保証することで、国民は通貨とモノ・サービスを交換することができます。これを法定通貨と言います。

通貨は国民が安定した経済活動を行うために必須です。通貨の総量規制など国がうまく経済コントロールを行うことで国民の生活は安定し、国も安定した税収を得ることができます。

つまり、国を運営するためには、国が通貨の発行主体でなければ成り立たないということです。

仮想通貨(暗号通貨)とは

仮想通貨とは、わたしたちが普段使っている「円」などの紙幣や貨幣ではなく、実体が存在しないネット上で使える通貨のことで、日本以外では「暗号通貨(cryptocurrency)」と呼ばれます。

現在最も取引量が多い仮想通貨はビットコインですが、仮想通貨は他にも「イーサリアム」「リップル」「エイダコイン」「ネム」など世界中で1000種類以上もあり、ビットコイン以外の仮想通貨を総称して「アルトコイン」と言います。

仮想通貨は電子データですが、ネット上のサービスの決済に使えるだけでなく、実際に実店舗でモノを買うことも可能です。

ただし、通貨や電子マネーに種類があり、使える場所(国)や店舗が限られることと同じように、今のところ仮想通貨も決済対応されている店舗でなければ使えません。

ここまで話をすると、仮想通貨はわたしたちが普段使う通貨や電子マネー、お店のポイントサービスなどとあまり変わらないように思えますね。

電子マネーとは

仮想通貨がネット上に存在する電子データと聞いて、「仮想通貨も電子マネー?」と考える人がいますが両者は全く違うものです。

電子マネーとは、日本であれば「円」を電子データに変えたものであり、紙幣や貨幣よりも持ち運びや決済が便利になった通貨の形態のことです。

ネット上の決済、SUICAやPASMOのように非接触ICカードでの決済など現金では行えない決済手段がありますが、紙幣や貨幣が形を変えただけなので法定通貨と変わりません。

通貨の条件
条件1.発行主体に信頼があること
条件2.価値が変動すること
条件3.総量が規制されていること
条件4.持ち運び・交換に利便性があること
条件5.価値が経年劣化しないこと

今後も電子マネーは増え、キャッシュレス社会は進んでいきます。今電子マネーを使っていない人も、環境が整えば数年後には使わざるを得なくなります。

一方、仮想通貨は電子マネーと同じ電子データですが、「円」を電子データに変えたものではありません。あくまでも仮想通貨は”仮想”通貨であって、これまでの法定通貨の条件とは異なります。

仮想通貨の特徴

では、仮想通貨と法定通貨の条件はどのように違うのでしょうか。

特徴1.発行主体は存在しない

仮想通貨は、基本的に発行主体が存在しません。たとえばビットコインは、2008年に「中本哲史」という日本人名で(?)書かれた「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」という論文をもとに、有志がプログラムしたものです。(日本語版:ビットコイン:P2P 電子マネーシステム

国が発行・管理し責任を持つ「中央集権型通貨」に対し、ビットコインは発行主体が存在せず、プログラムのみで発行・管理されているため「分散型通貨」とも呼ばれています。

もちろん、明確に信頼を担保する発行主体がいないため、それを補うための仕組みが実装されています。

参考|ビットコインマイニングとは?今から始めていくら儲かる? | FIN-ROUND
参考|ブロックチェーンの仕組みとは?メリットとデメリット

特徴2.価値は大幅に変動する

仮想通貨を取得する方法はいくつかありますが、最も行われている方法は仮想通貨取引所での法定通貨や別の仮想通貨との取引です。

為替相場でドル円が売買されるように円と仮想通貨を交換したり、仮想通貨同士を交換して目当ての仮想通貨を取得します。もちろん、需要が高い仮想通貨は価値が上がり、需要が低い仮想通貨は価値が下がります。

現在の為替相場で、円がドルに対して突然半値、2倍になることはありません。それは、どちらも強い通貨で総量が多く、通貨価格が世界の経済に影響を与えないよう、政府や中央銀行によってある程度協調されているからです。

ところが、仮想通貨の価値は相場の思惑や期待感のみで動くため突然2倍になったり、半値になるなど価値は大幅に変動します。

特徴3.総量はプログラムで規制されている

仮想通貨は発行量がプログラムで自動的に管理されており、誰かが意図的に総量を増やすなどのコントロールはできません。

たとえばビットコインの場合は発行される最終上限が決まっていて、予定では4年に1度半減期を迎えながら2140年に「20,999,999.9769 BTC」まで発行されます(1BTC=1ビットコイン)。

By Insti [CC BY 3.0 (http://creativecommons.org/licenses/by/3.0)], via Wikimedia Commons

法定通貨は景気動向や周辺国との強調で発行量をコントロールすることに対して、ビットコインは金(ゴールド)のように上限が決まっていることで自然な価値のコントロールを目指しています(総発行量は仮想通貨によって異なる)。

ちなみに、ビットコインの新規発行の仕組みをマイニングと言います。

参考|ビットコインマイニングとは?今から始めていくら儲かる? | FIN-ROUND

特徴4.持ち運び・交換は電子マネーに似ている

仮想通貨は、実態が存在しない電子データです。そのため、スマホやパソコンなどのデジタルデバイスがあれば電子マネーのようにどこにでも持ち運べます。

実世界における決済(モノやサービスとの交換)はまだ対応が充実していませんが、仮想通貨同士の送金は発行主体があり管理が必要な法定通貨に比べて格安の手数料で行えます。

特徴5.価値は経年劣化しないが保障もされない

仮想通貨は電子データのため価値が経年劣化することはありません。また、一般的な通貨と同様、市場動向によって相対的に価値が上下しますが、為替のようにその国の国力によって影響を受けることは少ないと言われています。

ただし、通貨は銀行に預けてあれば、それを管理する個人がスマホやパソコンをなくしても通貨自体がなくなることはありませんが、仮想通貨は管理するスマホやパソコンをなくすとすべて消失する恐れがあります。

また、通貨取引所は常にハッキングの脅威にさらされており、世界中で何十億円、何百億円の被害にあっているため、わたしたち個人が自衛の意識を持たなければいけません。

参考|マウントゴックス事件が与えた影響とは?仮想通貨の問題点と対策

仮想通貨と法定通貨の違い

さて、仮想通貨と法定通貨の違いがなんとなくわかったでしょうか。

仮想通貨と法定通貨の最も大きな違いは、法定通貨は中央集権型のため発行主体があり、一般的に国が通貨の信頼性を担保することに対して、仮想通貨は発行主体がおらずプログラムで管理されているということです。

通貨の発行主体がないことは、わたしたちにとってメリットもデメリットもあります。

仮想通貨が今後も発展し生き残っていくためには、新しい価値観である仮想通貨の受け入れ体制を作るための国際的な枠組みが必要になります。

次回は、なぜ発行主体がない仮想通貨が生まれたのか、発行主体の有無にどのようなメリット・デメリットがあるのかをお話したいと思います。

参考|ビットコインが生まれた理由と歴史は?2013年のバブルまで | FIN-ROUND

役に立ったらシェアしてね