リポート:神津善之(おはよう日本)
東京・北区にある、私立の認可保育園です。
保育士は15人。
そのうち5人が男性保育士です。
この保育園を運営する学校法人の職員、新楽竜夫(しんらく・たつお)さんです。
ネット上での論争が起きてから、現場の男性保育士たちに影響が及んでいないかヒアリングを進めています。
保育士からは、世間の目が気になると、悩む声があがりました。
「直接言われたわけではないけれど、もしかしたら、おむつはそういう変な気持ちで替えていると思われているのかなと、自分の中で思うときがあって、そういうときは自分でも嫌な気持ちなる。」
「言葉悪いんですけど、“あら探し”ではないけれど、男の人がこれやってる、あれやってたというのが、ちょっとしたことが目につきやすい。」
この保育園では、男性保育士を積極的に採用してきました。
保護者からは、父親のように遊んでもらえると、好意的な意見も寄せられています。
しかし、ネット上での議論が今後も広がると、男性保育士の心理的な負担が大きくならないか、危惧しています。
三幸学園 男性保育者プロジェクト 新楽竜夫さん
「少なからず影響は出ていると、いまの話の中で感じた。
性別の部分で『男性だから…』と見られてしまうのは、いまの声からも感じたように、丁寧に取り扱う必要があると感じた。」
影響は、保育士を志す学生にも広がろうとしています。
就職活動中の高橋義貴(たかはし・よしき)さんです。
大学で保育を専攻している高橋さん。
保育士を目指し、大学生になってからピアノも習い始めました。
保育園での実習も行い、子どもと接する仕事にやりがいを感じ始めていたやさき、ネット上で論争が起こりました。
高橋さんは、仕事の一面のみを好奇の目で取り上げ、男性保育士全体が悪いかのような書き込みにショックを受けました。
友人の中には、保育士をあきらめ、一般企業への就職を目指す人もいます。
高橋さんは、保育士という仕事を選んでいいのか、不安を抱えています。
保育士志望 帝京大学3年 高橋義貴さん
「(就職活動に)影響はないと言ったら、もちろんうそになるし、ネガティブな考えになってしまうときもあった。
そういうのを聞いちゃうと、迷ったりというときもある。」
保育園の中には、自ら対策を取る所も出てきています。
板橋区にある私立の認可保育園です。
保育士の性別によって業務は区別せず、男性も着替えやおむつ替えを行ってきました。
園長の山本慎介(やまもと・しんすけ)さんです。
ネット上の議論の広がりを見て、この園の保護者の中にも、不安を感じている人がいるのではないかと考えました。
そこで、これまでの取り組みを改めて文書にまとめ、保護者に公表しました。
保育士が、1人で子どもと接する時には、必ず周りに声をかけ、扉をあけることも徹底。
着替えの際に、子どもが異性を嫌がった場合は、同性の保育士が対応。
万が一のために、全ての保育室にはカメラも設置しています。
保護者
「うちは大丈夫と思うのではなくて、きちんと自分のところも1回考えようと思ってくれるというのは、とても信頼が上がると思う。」
保護者
「そんなに意識してくれているんだなと。
先生方も大変だなと思った。」
わかたけかなえ保育園 園長 山本慎介さん
「なかなか保育園の中は、一般の人から目が届きにくかったり、利用されている方自体も、日中の保育の様子、職員の言動は、なかなか目に触れる機会が少ないので、伝える努力というのが必要だと思った。」
都内の保育士養成学校です。
この春、卒業した4人に1人が男子学生でした。
保育士不足が深刻化する中、男性保育士は今後も増えていくと見られています。
専門家は、今回のネット上の論争は、保育士の仕事への理解が不足していることが原因にあると見ています。
玉川大学大学院 大豆生田啓友教授
「『男性だからおむつ替えをさせるべきではない』というのは、非常に一面的なところからの理解だなと思う。
保育士は専門職。
国家資格であり、保育士がどう関わるかということ、子どもの発達に関わる重要な問題。
そうであるにもかかわらず、保育士というのが、すごく社会的には、十分な理解をされていないのではないかということを考えさせられる。」