日本人の2人に1人が生涯でかかるとされる「がん」。闘病経験のある「がんサバイバー」の生き生きとした表情を撮影し公開することで、つらいイメージが先行しがちな印象を変えてもらおうという企画が「世界がんデー」の4日、東京都内であった。イベント「ラベンダーリングデイ」の中で開催されたもので、闘病中だったり、乗り越えたりした約20人が参加し、笑顔で撮影に臨んだ。【大村健一/統合デジタル取材センター】
主催したラベンダーリング事務局の月村寛之さんは「本来ならばもっとも助けがいるはずの患者が、診断を機に仕事を辞めざるをえなくなったり、悩みを誰にも言えずに抱え込んだりして、孤立するケースが多い」と指摘。「写真を通じて『がんになったら何もできない』というイメージを変え、がんになっても笑顔で暮らせる社会にしていきたい」と、趣旨を説明した。
東京都福祉保健局が2013年に都内のがん患者約600人に調査したところ、がんと診断された人の約5人に1人が退職していた。うち約18%が退職の理由として「職場に居づらくなったため」、約15%が「職場から勧められたため」と回答している。
大手広告代理店に勤務する月村さんが活動を始めたきっかけも、同僚ががんと診断されたことだった。月村さんのチームは「働きたい」という同僚の意向をくみ、病気の情報を共有して全員で戦う意思を示すステッカーを作成。周囲が「自分とは別世界の関係ない話」と切り離さずにコミュニケーションを密にしたことで、同僚は治療と仕事の両立を続けられたという。この体験をきっかけに、がんにまつわる悩みを少しでも減らそうと、社内の有志と一緒に、手弁当で「ラベンダーリング」をつくった。
「明るさを強制するものではない こういう側面や生き方もあることを知ってほしい」
「がんサバイバー」の写真でがんのイメージを変える企画も、この中で出た。企画に賛同した化粧品大手・資生堂の協力を得て、同社のフォトグラファーとメーキャップケアリストが参加した。昨年8月、都内であったがん関連イベントで初めて開催した際は、約70人が参加した。「またやってほしい」との反響も多く、再び開催することに。
「企画は、がんを経験した方に明るさを強制するようなものではなく、こういう側面や生き方もあることを多くの人に知ってもらうためのもの。そうすれば少しずつ状況は変わるはず」と月村さん。イベントは患者を支援するNPO法人「キャンサーネットジャパン」も協力し、国立がんセンターの医師の講演なども開催された。また、小児がんのことを患者家族だけでなく多くの人に知ってもらうワークショップもあった。
今後も開催予定で、詳細はラベンダーリングのホームページ(http://lavender-ring.com/)に掲載する。