LJL参加チームおよび関係者に対するペナルティについて - League of Legends Japan League
違反者およびペナルティの内容
PENTAGRAM(y’s agency株式会社: LJL 2018 春スプリットWeek 1から5での各マッチにおいて各1ゲーム没収
中村洋樹氏(y’s agency株式会社取締役):LJLおよびLJL CSへの出場停止(リーグ開催期間3ヶ月間)
藤田拓也氏(y’s agency株式会社従業員):LJLおよびLJL CSへの出場停止(リーグ開催期間3ヶ月間)
Dara選手(Burning Core所属):口頭での警告
Tussle選手(USG所属):口頭での警告
参考: 違反したルール
LJL公式ルール
10.2.10 不道徳行為
チームメンバーは、不道徳、破廉恥、又は適切な倫理的言動の慣習的な基準に反すると運営チームがみなす行為を行うことが禁止されています。
よりわかりやすく解説したものはこちらに。
『LoL』PENTAGRAMにペナルティ、Dara、Tussle選手に警告を付与―在留カードを提出させた問題で | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト
本件は「LJL」に出場するPENTAGRAM(旧Rampage)の運営会社、y’s agency株式会社の従業員である藤田拓也氏が、前シーズンまで所属していたDara選手に対し、チームのゲーミングハウスに私物を取りに戻った際に「在留カードを渡さないと帰さない」と伝えたことに起因。選手からは新しい所属先で在留カードの更新が必要であるとの旨を伝えたにも関わらず、数時間にわたり在留カードの提出を要求し、提出させたとのこと。さらに、Tussle選手に対しても、新しい所属先であるUnsold Stuff Gamingの選手として在留資格の更新を行おうとした際に、情報提供を拒否し、さらに「在留カードはPENTAGRAMの所有物である」といった虚偽の情報を伝え、同様に在留カードの提出を行わせています。
失望している。
『League of Legends』というタイトルのファンであり、かつ割りと長い間LJL(『LoL』の公式プロリーグ)を応援してた身としては、残念でならない。
公式側の発表によれば、PENTAGRAMはビザやパスポート同様に法的に認められた「証明書」である在留カードを、選手との取引材料に使った挙句、一時的といえ選手から取り上げ、事実上選手を不法滞在者にしたと考えられている。
これに対し、LJLは「LJL 2018 春スプリットWeek 1から5での各マッチにおいて各1ゲーム没収」という、LJL運営の中で類のない重い罰則を取り決めた。
既に公式側によって明確な見解が示されているので、ここで深く追求しない。一つ明確なことは、「去年LJLで優勝し、世界大会に日本代表として出場したチーム」が、人権侵害と言って過言でない行為に及んでいたという事実。
「在留カード」という言葉を耳にしたことがない方も多いと思うが、要は一時的に滞在している外国人のために入国管理局が発行している身分証明書の類。中長期在留者には在留カードの受領、携帯義務があり、権限のある官憲からの要求があった場合には、これを提示しなければならない。しかし2名の選手はPENTAGRAMにより在留カードを「提出」させられ、手元にない状態だった。
何故PENTAGRAMが在留カードを、Dara選手の私物と引き換えに提出を要求し、Tussle選手に更新の情報提供を怠り、また虚偽の情報を伝えてまで「提出させた」のか、わからない。
常識では信じがたい。PENTAGRAMはRampage時代からLJLで歴史の長いチームだ。ファンも多く信頼もされている。報酬等でトラブルがあった、法的な問題に関して無知だった可能性も考えられるが、PENTAGRAM公式は2018年2月6日23時現在、沈黙を続けている。
だがどんな理由があれ、今回の一連の事実については、断じて許されざることではない。
PGMの行為を「人権侵害行為」と称したのも何ら過剰な表現ではない。
日本において当然外国人は不安定な身分にあり、在留カードやビザ、パスポートがあってようやく対等な立場に置かれる。雇用者がそれを奪い、取引の材料に使うなど、「外国人の弱さ」「労働者の弱さ」につけ込んだ極めて卑劣な行為だ。二重の人権侵害である。
特にこの行為を行った藤田拓也氏は無論だが、PENTAGRAM代表の立場にありながら、こうした事実を看過・追認していた中村洋樹氏(Mizurussian)の責任は極めて重い。
(有識者に伺ったところ、『Dota 2』には国家の入国ルールがプライバシー侵害と判断され、大会がプロサーキット外となった事例がある。参考までに。*1)
昨年12月に放映された「ガイアの夜明け」で外国人実習生が雇用者に虐げられる実態が暴かれネットで話題になったように、日本における外国人の労働者の立場は未だ脆弱である。
「ガイアの夜明け」砲で明らかとなった“外国人実習生のブラック労務問題”、ジャパンイマジネーションが「大いに反省すべき点であると認識」とコメント - ねとらぼ
そもそも、今回の被害にあったDara選手、及びTussle選手は単なる労働者ではない。日本が招き入れた韓国のスタープレイヤーだ。日本人選手以上の活躍が見込まれ、彼らの影響を受けてLJLの競技シーンは進歩した歴史もある。去年のLJL決勝後のサイン会では、Dara選手、Tussle選手の前に長蛇の列が形成されていたのが記憶に新しい。
加えてDara選手はRokenia選手らと並んで2015年からLJLを支えてきたベテラン選手である。彼の美しいプレイに魅了されたファンも多く、言うまでもなく昨年Rampage(現PENTAGRAM)がLJLで優勝したのも、彼のLuluの貢献なくしては考えられない。
ここまで彼らに支えてもらった上で、こうした不道徳行為を行ったPENTAGRAMは一体何を考えているのか。選手とチームの間に、どのようなアクシデントや確執があったか想像も出来ないが、少なくともDara選手、tussle選手のファンからすればどんでもない裏切り行為に映るだろう。
ただし、今回で前向きに考えられる点もある。
まず、この事件を独自に調査し、発生から1ヶ月という迅速な処罰を下したRiot Games、及びLJL運営の判断は評価すべきだ。
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LJLの過去には選手間のいわゆる「替え玉行為」が行われたことを公表せず、他チームのリークによって発覚したことで、運営チームの誠実さが疑われていたが、本事件では独自に調査し迅速に処罰したことで信頼を取り戻したと言えるだろう。
ただし、「LJL 2018 春スプリットWeek 1から5での各マッチにおいて各1ゲーム没収」という罰則が妥当のものかは議論の余地がある。
今回PGMの行為は紛れもない人権侵害であり、LJLどころか国内でも例の少ない事件だ。この罰則は妥当なものか、或いはPGMの選手たちだけ負担が重すぎる可能性はないか、ファンやスポンサーへのケアはどうするか。Riot Gamesの今後の対応はより慎重になる必要があるだろう。
そしてPentagramの選手たちについて。
当然だが彼らは全くの無関係だ。今回の事件の処罰「LJL 2018 春スプリットWeek 1から5での各マッチにおいて各1ゲーム没収」で最も苦しむのは実際に戦う選手であり、今回の事件でのTussle選手、Dara選手と同じ被害者だ。
日本人選手であるPaz選手、Ramune選手、YutoriMoyashi選手は皆優秀で誠実な選手だ。特にRamune選手は1年間で大きな成長を見せたことで「主人公」ともファンに言われている。苦境に陥ったのは事実だが、1プレイヤーとして、今期のLJLでの彼らの活躍が楽しみでならない。
またLJL全てのチームが外国人選手を不当に取り扱っているわけでない。
同LJLのDetonatioN Gamingは2016年に、自チームの2人の韓国人選手に対し興行ビザ基準省令3号(通称アスリートビザ)を日本で初めて取得させた経歴がある。同チームは議員は企業の賛同を集め、「日本国内の外国人選手」もまた立派な日本のアスリートであることを認めさせ、立場を尊重した。
LJLの6チーム全てが最低2人以上選手として韓国からプレイヤーを迎えており、同時に6チーム全てが責任を持って彼らを守る義務があることを忘れるべきでない。また、DNGのように彼らを尊重するチームがあることも同時に認識すべきである。
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恐らく今回の事件は、LJLに留まらず日本の競技シーン(e-Sports全体)を揺るがしかねない、凶悪な事件であることは疑いようがない。
あえて本紙で取り上げたのも、『LoL』をプレイしていない層に、この事件を知って頂きたいからだ。現在ではFPS等でも外国人選手を迎え入れたチームが多いが、こうした人権侵害が行われている可能性はある。
まして、LJLは今年から全試合観戦可能となり、e-Sports自体も様々な前進を見せる中での事件だ。プロゲーマーの地位向上を訴え、外国人選手の地位も見直される中、こうした事件が起きたことは許されざることだ。
最後に、今回の事件の渦中にあったDara選手、及びTussle選手が、かつてどうして日本で戦い続けているのか答えたインタビューがあるので引用させて頂く。
彼らが何を考えて韓国から日本まで来て戦い続けているのか、その心情をご理解頂ければ幸いだ。
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