ご挨拶 テーマ1チーム強化と選手育成について 質疑応答1 テーマ2サッカースタジアム建設について
テーマ3試合運営について テーマ4顧客戦略部の取り組みについて 質疑応答2
本日はお寒い中、サポーターズカンファレンスに多数、ご参加いただき、誠にありがとうございます。また、日頃は当クラブに多大なるご支援と応援を賜り、厚く御礼申し上げます。
サッカースタジアム建設に関しての当クラブの考え方、現状についてお話ししますが、まず本題の前に、スタジアム建設を取り巻く外部環境、特に国全体の取組みについてご紹介いたします。
我が国の経済の再生に向けて、成長戦略の実現のための司令塔として、内閣の下に、「日本経済再生本部」という組織が設置されています。本部長は安倍晋三総理大臣、本部長代理は麻生太郎財務大臣、そしてすべての関係閣僚がメンバーとなって構成されています。
昨年6月、この日本経済再生本部が作成した「未来投資戦略2017-Society(ソサエティ)5.0の実現に向けた改革-」を、政府が閣議決定しました。この「未来投資戦略2017」の中に、重要な国の基本方針として、“スポーツを核として、音楽イベントや健康づくりなど、にぎわいやコミュニティ創出の拠点であり、経済活性化の起爆剤となるスタジアム・アリーナを、2025年までに新たに20拠点、実現する”と明記されています。
この方針の下、主管省庁であるスポーツ庁は「スタジアム・アリーナ推進官民連携協議会」を立ち上げ、「スタジアム・アリーナ改革ガイドブック」が取りまとめられました。これは、先進的なスタジアム整備の形成支援を行いつつ、スタジアム整備に向けた環境づくりを推進する、といった内容になっています。
一方、国土交通省でも動きがあります。昨年のサポーターズカンファレンスでも少し触れましたが、全国には12万4000ヘクタールの広さの都市公園があります。その活用策として、民間の活力やノウハウを生かし、都市公園の再生、活性化を推進するため、都市公園法が昨年、改正されました。「パークPFI」という新たな手法を活用して、例えばスタジアムのようなスポーツ施設を、これから都市公園の中に建設し、運営していくことで、都市公園を活性化していこう、という議論が様々な方面で進められています。「旧市民球場跡地」や「中央公園広場」がまさしく、この都市公園であることは重要なポイントです。
一方、経済産業省は昨年7月、「地域未来投資促進法」をスタートさせました。それぞれの地域の特性を活用して高い付加価値を創出し、それによって地域経済に波及効果を及ぼすとともに、地域経済を牽引する事業プロジェクトに対し、予算や税制、金融、情報、規制緩和などで、パッケージで集中的に支援を行う、というのが、この法律の基本になっています。
そして先日、発表しましたが、サンフレッチェ広島は経済産業省から「地域未来牽引企業」に選定されました。当クラブはご存じの通り、広島市中心部にサッカースタジアムを建設し、それによって街の賑わいを創出するとともに、スポーツを楽しむ市民生活の創造に寄与することで、地域の持続的成長への貢献を目指すことを、今後の事業として挙げています。具体的な進め方はこれからですが、経済産業省からは今回の選定を契機に、当クラブが地域経済に貢献していくための諸々の取り組みに対して、支援を検討したいとの意向をお聞きしています。
以上のような点から、今、日本という国全体に、スタジアム建設に対して大変前向きな、まさに追い風が吹いていると言えるでしょう。
ここからは本題である、広島のサッカースタジアム建設について、もう少し詳しく話していきます。
すでに広島県、広島市、広島商工会議所、サンフレッチェの4者間で、「新しいサッカースタジアムは、4者が協力して整備に向けて取り組んでいく」こと、また「中央公園広場を第3の候補地として、4者が協力して検討する」ことについて、公式に合意がなされております。「整備」という表現は行政分野でよく使われる用語ですが、つまりは建設する、ということです。
昨年12月1日に県・市・商工会議所の3者は、「旧市民球場跡地」、宇品の「みなと公園」に、「中央公園広場」を加えた、実現可能性調査資料「サッカースタジアムに係る各建設候補地の比較」という資料を公表しました。また同日、広島市議会の「都市活性化対策特別委員会」で資料の内容が報告されました。
その資料の中には、候補地の順位付けや、決定時期について、具体的な明言はありませんでしたが、主な内容として、事業費の面では「中央公園広場」が最も安く、またアクセス面では「旧市民球場跡地」と「中央公園広場」の評価が高く、集客力の面でも「みなと公園」に勝るとの比較結果が記述されていました。
当社としましても、「中央公園広場」は、グリーンアリーナを挟んで「旧市民球場跡地」に近接しており、なおかつ市内中心部に立地していることから、「旧市民球場跡地」と同様に、スタジアム建設の候補地として適しているものと評価しております。現在は、行政から周辺住民の方々への説明行われていますので、当クラブとしては、その推移を見守っている状況です。しっかり丁寧にご説明していただき、一定の理解をいただくことも大事であると考えております。
一方、サンフレッチェとしては、広島市の中心にサッカースタジアムを作ろう、ということで、市内中心部でのサッカースタジアムのあり方について、行政と実務的な意見交換を定期的に行っています。定期的に集まって意見交換を行い、いろいろな課題を持ち帰って、それぞれ研究して再び集まる、という形です。
それと並行して、当クラブは独自に国内外の先進事例を収集し、スタジアムの仕様、スペック、運営手法についてのノウハウの集積と研究を進めております。一例を挙げますと、昨年10月28日から11月5日までの9日間、Jリーグ主催の欧州スタジアム視察が実施されました。リーグのスタジアム部門、すべてのJクラブではありませんが、スタジアム建設を予定している、もしくは、これから建設していきたいというJクラブのスタッフ、政府機関、設計会社、建設会社、コンサルタント、政府系の金融機関、学術機関など、総勢37名という大人数の視察団でした。サンフレッチェからは私自身が参加し、6カ国11のサッカースタジアムと、2つの育成施設をこの目で見てまいりました。
視察対象となったスタジアムは、基本的にはUEFA(欧州サッカー連盟)のスタジアムカテゴリー4を中心に、大規模なものから中小規模のものまで、さまざまなクラスのスタジアムでした。具体的には
★伝統あるオーストリアのラピッド・ウィーンのホームスタジアム、「アリアンツ・シュタディオン」
★ハンガリーのフェレンツバロシュの「グルパマアレナ」
★ハンガリーのウィペストの「スサ・フェレンツ・シュタディオン」
★スロバキアのスパルタク・トルナヴァの「シティ・アレナ」。ここはショッピングモールとスタジアムが合体している、非常に面白いつくりでした。
★ドイツのインゴルシュタットの「アウディ・シュポルトパルク」
★ドイツのヤーン・レーゲンスブルクの「コンチネンタル・アレナ」
★ドイツのバイエルン・ミュンヘンの「アリアンツ・アレナ」。ここはちょっと別格で、非常に大きなスタジアムですね。
★ドイツのフォルトナ・デュッセルドルフの「エスプリ・アレナ」。デュッセルドルフは日本企業が多く、日本人が多く住んでいるところです。クラブのフロントスタッフには日本人の方もいて、詳しくスタジアムの運営・管理手法を学びました。
★ドイツのボルシア・メンヘングラッドバッハの「ボルシア・パルク」
★オランダのフィテッセの「ヘルレドーム」。ここはアメリカのプロモーターがスタジアムを所有しているそうです。スタジアムのあるアーネムは人口14万人ほどの都市ですが、レディー・ガガ、マドンナなどもライブをやっていて、先日はローリング・ストーンズもやったそうです。運営管理手法によっては、14万人の都市でも、このようなビッグネームのアーティストを呼べるんだな、と感心しました。ヨーロッパのアーティストであれば、地続きだからわからなくもないですが、アメリカから行くとなると大変ですので、そこは驚きました。
★フランスのジロンダン・ボルドーの「スタッド・マトミュット・アトランティック」。ここは、純白の美しいフォルムが特徴的なスタジアムでした。
これらのスタジアムを視察しました。どのスタジアムも、それぞれ歴史や特徴を有しており、フォルムや仕様、運営形態も様々でした。ひとくちにサッカースタジアムといっても、まったく違う。しかし、そのほとんどに共通しているのは、スタジアム自体がその街の誇りであり、アイコンにすらなっているということです。愚問ですが、「どのスタジアムが一番良いと思うか」と、クラブのスタッフや運営会社のスタッフに訊くと、みんな「私のところだ」と仰っていました。
スタジアム自体の仕様や構造だけでなく、運営、管理、建設費、資金調達、儲かっているのかどうか、という収支の状態など、かなり突っ込んだ内容の視察でしたが、ここで得られた多くの知見、先進事例を、今後の広島のスタジアム建設にぜひ役立てていきたいと考えています。
また現在、当クラブでは、関係省庁や研究機関、全国のスポーツを核とした事業に積極的な民間事業者との、ネットワークづくりを独自に進めています。これはスタジアムができてからでも役立つものですが、今季はこのネットワークを活用して、スタジアムの先進事例に詳しい方々、実際に建築に携わった方などを実際に広島にお招きし、広島市の中心部に建設する、国際平和文化都市「広島」にふさわしい、都市型・未来型のサッカースタジアムの具体的なあり方について、シンポジウムを開催したいと考えています。
どのようなスタジアムを作るかについて、サポーターの皆さんのご意見もお聞きする、参加型のシンポジウムにできればと思っています。市内の中心部、本当の真ん中にできるスタジアムは、日本では初めてだと思います。そういう場所で、ピッチは選手のために、観客席、スタジアム全体はお客様のために、という都市型・未来型スタジアムを、日本で初めて作りたい。皆さんの意見を聞きながら作るためのシンポジウムです。
詳しい方々をお招きして、国内外の最新のサッカースタジアムの機能・事例を紹介するとともに、冒頭で紹介した「未来投資戦略2017」にある、“経済活性化の起爆剤となるスタジアム・アリーナを、2025年までに新たに20拠点、実現する”ことが国の方針ですから、街づくりや地方創生の観点から、それにのっとった最先端のスタジアムを考えていきたいと思います。
広島の街に、どのような仕様のサッカースタジアムが望まれるのか。視察した際に欧州の方々は「街のアイコン、街の誇り」と仰っていました。広島の方々の街の誇りとなり、できてよかった、広島にはこういう素晴らしいものがあるんだ、と言ってもらえるスタジアムは、どんなものなのか、具体的な形としても示していきたいと考えております。ぜひ楽しみにしていただければと思います。
最後に、ファン・サポーター、広く県民、市民の皆さんに喜んでいただける、新しいサッカースタジアム建設の早期実現。これが変わらぬ我々の願いです。ご清聴、誠にありがとうございました。