はじめまして、ライターの吉川ばんび(@bambi_yoshikawa)と申します。
みなさんは、梅干しはお好きでしょうか?
私はとにかく梅干しが好きで、外出するときにも干し梅やカリカリ梅がカバンに入っていないと動悸・息切れ・気つけを起こす梅干しフリークの一人です。
ですが、そんな梅干し大好き人間の私は、思うのです。
梅干しが嫌いな人って、何が嫌なの?
最初に食べた梅干しがまずかったから、トラウマになってる?
もしかして、めちゃくちゃおいしい梅干しを食べたら、意外と好きになるんじゃないの?
「◯◯が嫌いな人は、本当においしいものを食べたことがないだけ」みたいな理屈には容易に賛同できない私ではありますが、梅干しに限って言えば、本気でそう思うのであります。
というわけで今回は、「梅干しが苦手な人に“おいしい梅干し”を食べてもらうとどうなるか」検証してみたいと思います!
老舗の梅干し専門店へ行ってみよう
ウッキウキの私がやって来たのは、紀州梅干し専門店「五代庵(ごだいあん)」さん。
創業はなんと、天保5年(1834年)! 天保5年って、江戸時代〜〜〜!? 大塩平八郎の乱が起きたときにはすでにお店があったってこと〜〜〜!?
とまぁ、それくらい歴史のある五代庵の本社は、梅干しの生産が盛んな和歌山。実店舗は東京、大阪、和歌山にあります。今回の取材では、大阪の天満天神店にお邪魔しました。
店内にはさまざまな梅干しがズラリと並んでいて、てっきり天国かと思いました。
梅干し以外にも、調味料や梅酒、珍しい「梅酢」なんかも豊富に取り揃えられています。すでにこの時点で、これからも五代庵に通うことが私の中で決定しました。
こちらは、五代庵の藤本さん。「顔写真は恥ずかしいので無理です……!」と乙女な一面を持つお姉さんです。梅干しの専門家として、梅干しが嫌いな人でも食べられそうな商品を選んでいただきます。
そしてこちらが、梅干しが苦手な前田さん。
もともと知り合いで、梅干しが苦手なことが私にバレてしまったばっかりに、無理やり連れて来られたかわいそうな人です。
今日はよろしくお願いします!!!
こちらこそよろしくお願いします。
……。
前田さん、どうしたんですか?
いや、前にも言ったけど僕、梅干しが本当にダメなのよ。だから克服なんか絶対に無理だと思う。だから藤本さんに申し訳ないなと……。
いえ、大丈夫です。必ずおいしく食べてもらいます。
「五代庵の名にかけて」
「じっちゃんの名にかけて」みたいに言った。
本当に大丈夫かな……。不安だ……。
おいしい梅干しができるまで
そもそも、梅干しのどういうところが苦手なんですか?
とにかくめちゃくちゃしょっぱくて、すっぱいのがダメ。なぜあれを白米と一緒に食べられるのかが全然わからない。
「しょっぱくてすっぱいからこそ、ごはんに合うのに……」
梅干しはしょっぱくてすっぱいイメージかもしれませんが、梅は本来「甘み」があるものなんですよ。製造段階で手間暇やコストをかけると、その甘みを保ったままの梅干しを作ることができます。
手間暇をかけるというのは、どういうことなんですか?
五代庵には、会社が所有する梅の農園があるんです。果実が完熟して自然に落下するまで待って、その梅を天然ミネラル塩と一緒に漬け込むのですが、うちはこの工程をすべて手作業でやっています。
しかも、果実が落下してすぐに収穫しなければ実が傷んでしまうので、複数人が何度も何度も果実を拾いに行きます。
そんなに大変な作業をずっとやってらっしゃるんですね……!
そうなんです。手間暇かけてあげると梅本来のおいしさを引き出せるので、私たちにとっては「必要な手間」なんですよね。ずっと昔から梅干しが愛されて続けてきたのは、こうして「おいしい梅干し」を世に送り出してきた人たちの努力のおかげだと思います。だからこそ私たちも「味」という文化を伝えなければならないし、知ってほしいと思っています。
正直、今まで「1粒何百円の梅干しなんて高すぎる」と思っていたんですが、それだけの価値があるものだったんですね。
梅干しが嫌いな自分がちょっとだけ情けなくなってきました。今日から梅干しを好きになれればいいんですが……。
専門店の“おいしい梅干し”を食べてみよう
さぁさぁ、こちらがうちの自慢の梅干しです。
うわあ〜〜〜〜〜! むっちむちだ〜〜〜〜〜〜!!
私が漬けた梅干しと全然違う……。
苦そう。
苦くないわ! でも、友だちに食べさせたら「めちゃくちゃ塩辛い!」って、ものすごい形相でキレられました。もう私の味覚がおかしくなってしまってるのかもしれない……。
今回は、五代庵さんで「お試しセット」として販売されている「白干梅(しらぼしうめ)」「しそ漬梅」「こんぶ梅」「黒糖黒酢仕込み」「紀州五代梅(はちみつ梅)」「はちみつ梅うす塩味」の6種類で検証します。
白干梅
まずは、塩のみで味付けした「白干梅」。日本古来の伝統的な梅干し。
じゃあ、すみません。我慢できないので、まずは私からいただきます。
……………。
「めちゃくちゃおいしい……!!!」
皮がやわらかくて果肉がぎっしり詰まってる。普段食べている梅干しに比べて水分が断然多い。塩分濃度20%くらいあるのに梅の甘みがしっかり残ってるから、嫌な塩辛さが全然ない。しかも後味が上品ですっきりしているのにコクがちゃんとある。今まで食べた梅干しの中で一番おいしい。これが本物の梅干し……。
なんかめっちゃしゃべってる。
続いて、梅干しが苦手な前田さんにも食べてもらいましょう。
…………。
「すっぺ」
たしかに梅の甘みがあるんだけど、しょっぱくてすっぱいのは変わらないので、僕は苦手です……。すみません……!
まぁまぁ、ここまでは想定内です。白干梅の原材料は梅と塩だけですから、無理もないですね。
しそ漬梅
お次は、「しそ漬梅」。しその香りが爽やか。
あっ、さっきの白干梅よりも食べやすいし、しそのいい香りがする! 少しだけど後味に梅の甘さも感じられる。でも、まだちょっとしょっぱさが強いかな……。
反応が変わった!
こんぶ梅
お次は、「こんぶ梅」。こんぶの旨味と風味が、塩味と酸味を包み込んでいる。酸味が抑えられていて食べやすい。
……これは食べられる! おいしい!! そこまで塩辛くないし、昆布の味がしっかりついているから食べやすい!! ご飯がめちゃめちゃ進みそう。
ほらほらほら! ねっ!! おいしいでしょ!!!
うれしそう。
すでに「おいしい」と言わせることに成功してしまいましたが、せっかくなので残り3種類も食べてもらいましょう。
黒糖黒酢仕込み
お次は、「黒糖黒酢仕込み」。黒糖と蜂蜜を使った深いコクのある甘さと、黒酢のすっきりした酸味が、梅のおいしさを引き立てている。
今までイメージしてた梅干しとは違って、塩味より甘みが強く感じられる。黒糖の甘みも強すぎず、梅本来の甘みや香りもしっかり感じられる。お茶うけによさそう。
梅干しに慣れてきた……!?
紀州五代梅(はちみつ梅)
お次は、「紀州五代梅(はちみつ梅)」。本みりんやはちみつを使用した独自の二度漬けで長期間熟成している。梅本来の塩味・酸味とのバランスがとれた五代庵の自信作。
あっっっっっ!
なに?
これすごい! めっちゃおいしい!!
「好き……!!!」
告白した!
塩味がかなり控えめなのに、甘すぎるわけでもない。コクが口の中に広がって、甘さとしょっぱさがそれをうまく引き立ててる。梅の本来の甘さと香りが後に残るから、味のグラデーションが楽しめる。
めっちゃしゃべってる。
おいしいでしょう……! この紀州五代梅(はちみつ梅)は、うちのメインの商品で一番人気なんです。梅干しが嫌いな方がたまたまこの梅干しを食べて大変気に入ってくれたのか、大量にお買上げいただいたこともあったんですよ。
その気持ちわかります。僕もこれ気に入りました!
はちみつ梅うす塩味
なんかもう完全に梅干しを克服してしまった感じの前田さんですが、一応、はちみつ梅うす塩味も食べておいてもらいましょう。
紀州五代梅(はちみつ梅)と同様、はちみつが入っている。五代庵の商品の中で一番、塩分は控えめ。
あー、これもおいしい……。さっきのよりも少ししょっぱいけど、すごく食べやすい。多分、梅干し苦手な人でもおいしく食べられると思う。
さっきよりあからさまにテンションが落ちたのが気になりますが、気に入ってもらえたようで何よりです。
何が一番おいしかった?
いろんな梅干しを食べてもらいましたが、どうでした?
最初に出演の依頼がきたときは正直「悪魔かよコイツ」って思ってたけど、結果的には初めて梅干しのおいしさを知ることができてよかったです。
どの梅干しが一番おいしかったですか?
断然、紀州五代梅(はちみつ梅)ですね。梅干しが苦手な人は「しょっぱさ」や「すっぱさ」が苦手なんだと思うんですが、はちみつと梅の本来の甘さがしっかり感じられると、ちょうどいいバランスになる。
私は白干梅が一番好きでした! 塩がしっかり効いていてしょっぱくてすっぱいので、「これこそ梅干し!」という感じで。梅干し好きの人はこれが一番満足できると思います。
安価で手に入る商品よりコクがあって複雑な味わいでした。「だだ辛い」だけということがなく、ごはんのお供ではなく主役としておいしくいただけました。専門店の梅干しってスゴイですね。
ということで、
「梅干しが嫌いな人は、本当においしい梅干しを食べれば意外とイケるんじゃないか」
こちらの検証が終わりました。
結果はコチラです!
はちみつ味は、甘みが強いものや塩味が強いものなど、お店によって全然味が変わったりするので、お好みによって選んでもらえたらいいかと思います。
こんぶとかはちみつ入りの梅干しなら、苦手な人でも食べやすいのかもしれませんね。今日から僕も梅干しを食べます!
私が漬けた梅干し持って帰る?
苦そう。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
梅干しが大好きな人も、苦手な人も、一度“本当においしい梅干し”を食べてみませんか?
きっと、今まで食べていた梅干しとの違いに驚かされること間違いなし!
一つひとつ手作業でこしらえられた食べ物は、丁寧に手間暇がかかっている分、やはり格別においしいのです。
国民食として親しまれている梅干しのおいしさが、この記事を通してもっとたくさんの人に伝われば、梅干しフリークとして何よりうれしいです!
現在の我が家の冷蔵庫。五代庵の梅干しを買うようになってからというもの、自家製の梅干しが減らなくなってしまいました。
紹介したお店
TEL:06-6882-0039
営業時間:10時~18時(年中無休)
URL:http://www.godaiume.co.jp/
※掲載された情報は、取材時点のものであり、変更されている可能性があります。
筆者プロフィール
吉川ばんび(よしかわ ばんび)
フリーライター。持ち前のフットワークの軽さで全国あちこち飛び回っています。梅干しやすっぱいものに対して異常な執着心を見せる。
Twitter:@bambi_yoshikawa
編集:ノオト