部屋のどこにいても、僕に握手を求める妻。
たまに気の狂った怪獣のような顔をして接近してくる妻。
鼻炎持ちで年がら年中、鼻にティッシュ詰めてる妻。
カーペットの汚れを指差し、きっと自分が食べたチョコレートの汚れだろうに僕に向かって「ここでウ◯コしただろ?!」と言ってくる妻。
茶碗洗いをしてくれてたので「ありがとう」というと、全身震わせ『っは!びっくりしたぁ!!』と驚く妻。
本日土曜日、妻は休みで家にいる。
今日は天気がいいなぁ。そろそろ出よう。
コントの大きな小道具を持って行かねばならないし。
うん、早めに出たほうがいいだろう。
二階で掃除機をかけている妻に向かって叫ぶ。
「行ってきます」
妻も掃除機の音に負けんとばかりに叫ぶ。
『…行ってらっしゃいっ!!!』
ありがたい。
ほんわかした気持ちで家を出る。
ほんといい天気だなぁ。
家から駅まで遠い。
自転車は駅だ。
昨日遅くまで飲んでしまい、
駅に自転車を置いてきてしまった。
こういう時はバス。
家からバス停まで徒歩8分。
ゆっくり歩こう。気持ちが良い。
晴れ渡る空、
揺れる緑、
鳥の声、
誰も住んでない団地、
駐輪場と化した公園、
補助輪をつけた自転車を乗る子供、
それを見守るお母さん。
そんな風景をゆったりと見ながら、バス停到着。
なんだか体が軽い。この晴れ渡る天気のせいだろう。
早めのバスに乗ることが出来た。
子供の笑い声や、おばあさん同士の世間話が響き渡る平和なバスの中。
ポケットでスマホが揺れる。
妻からだ。
あ…
着信で気付く。
自分の身軽さに。
コントの大きな小道具を忘れた。
玄関に置きっぱなしだ。。
…だもの体が軽く感じてたわけだ。
この天気のせいではなかった。
大きな小道具を持ってなかったからだ。
LINEのやりとり。
私「ごめん、小道具だよね?」
妻『どうする?もどる?』
私「いまバス。駅まで届けてくれる?」
妻『いまいく!』
バスが到着すると同時に妻の車到着。
深々と頭を下げて迎える私。
車の扉を開けて、
「ほんとごめん!危なかった!ありがとう!マジで忘れてた。」
すると妻がこう言った。
『頭おかしいんじゃないの?(笑)』
いやぁ、ほんとありがたい。
感謝の言葉をたくさん述べて、
小道具を受け取り妻の車を見送り、駅へ。
『頭おかしいんじゃないの?(笑)』
…ちょっと言い過ぎじゃない?
『バカねぇ』
『もぉ、おっちょこちょいなんだからぁ』
『わすれんぼさんっ』
言い方はたくさんあると思う。
『頭おかしいんじゃないの?(笑)』
妻はいつもそうだ。
僕と一緒で、
あまり物事考えずに思いついたことを言う。
その言葉が合ってようが間違ってようが、
ニュアンスが伝わればいいのだ。
だから、あの時笑いながら、
《もぉ(笑)》
みたいな軽い気持ちを込めてぇの、
『頭おかしいんじゃないの(笑)』
と言い放ったのだ。
帰ったら伝えよう。
「確かに忘れ物したのは悪かったけども、『頭おかしいんじゃないの?』は酷すぎるんじゃないの?」と。
なんで返してくるだろう。
それを楽しみに、今日も頑張れるのだ。
相変わらず天気はいい。
小道具はずっしり重い。