日曜ワイド「欠点だらけの刑事」[デ][解][字] 2018.02.04
(秒針の音)
(秒針の音)おはよう夏男くん。
(橋本夏男)ん…。
おはよう冬美男おじさん。
さあ着替えて。
パジャマとシーツと毛布と枕を持って部屋を出よう。
4分後に。
(夏男)わかった。
ただいま!
(橋本紗代)おかえり。
好きね百野さん家。
(夏男)うん!おじさんの家は静かできれいだから。
(橋本岳太郎)またあいつん家泊まってきたのか!夏男!いくらご近所だからってなあんまり出入りするのは…。
おはよう。
これ夏男くんの忘れ物。
え〜?何も入ってないけど。
髪の毛が1本落ちていた。
(ため息)捨ててくればよかったのに…。
勝手には捨てられないよ。
これは僕が所有していたものではないからね。
そ…そうだよな。
ああ〜サンキュー百野。
それと夏男くんの左ひざ下3センチの位置に赤い斑点があった。
(紗代)えっ嘘!?どこ?だからそこ。
左ひざ下3センチ。
(橋本)3センチ…。
あっ!あった…。
これか?
(紗代)全然気づかなかった…。
すぐ病院に行き診てもらったほうがいい。
それじゃ。
いってらっしゃい!
(紗代)本当相変わらずね。
(天野陶子の声)どんな欠点でも必ず克服出来ます。
(陶子)そもそも欠点のない人間などいません。
ですからまず自分の欠点から目を背けるのではなく向き合う事から始めてみてください。
私自身欠点を受け入れた事で新しい洋菓子を作る事が出来今ではこうして洋菓子のプロデュース会社を立ち上げ本まで出版する事が出来ました。
第二部では私の経験談を交えながらいかにして欠点を克服していったらいいかそのプロセスをお話ししたいと思います。
では今から15分間の休憩に入ります。
ありがとうございました。
(拍手)わかった。
大丈夫よ。
またすぐ連絡する。
(天野翔平)お疲れ陶子。
(陶子)あなた来てたの?ああ今さっきね。
悪いんだけどさ金貸してくれないかな。
今月はもう駄目よ。
いや本当少しだけでいいから。
いい加減にして。
(舌打ち)それに今手持ちないの。
控室に財布置いてきたから。
(ノック)陶子社長第二部のお時間です。
失礼します。
(悲鳴)
(悲鳴)
(パトカーのサイレン)母校でスピーチを?
(九十九健作)広報課から依頼がありましてね。
小学生の前で夢を語ってもらいたいと。
他を当たってください。
僕には不向きな仕事です。
いやいや…「他には」はないんです。
この学校の卒業生である百野さんご指名で来た仕事ですから。
断ります。
どうして?10人以上の前で話す事は小学6年の夏以来なるべく禁じています。
昔からくじ運が悪く嫌々ながらにクラス代表として弁論大会に出された時シャツのボタンがずれていた事に気づき話が飛んだ。
一生涯心に深く刻まれる傷となった。
二度とあんな思いはしたくない。
あっ…ちょっと待ってください!今まで百野先輩いろいろとフォローしてきたじゃありませんか。
そのおかげで君は刑事課長になれました。
お互い様ですよ。
広報課長にはいろいろとお世話になってるんです。
少しは私の顔も立ててくださいよ。
断ってください。
あっ百野さん!百野さんにパートナーが出来たんですが…。
パートナー?ええ上から言われましてね。
いつまでも百野さんの単独捜査を認めるわけにはいかないって。
無理だ。
絶対に無理!他人と行動を共にするなどという苦行は耐えられない!九十九課長なんとかしてください。
これはもう決定事項ですから。
しかし事前にその人のプロフィルをお見せする事は出来ますけど…。
見たい!今すぐ見せてください!だったらこれを。
どんな人ですか!?
(万城目千鶴)お疲れさまです。
本日より刑事課に配属となりました万城目千鶴です。
よろしくお願い致します。
なんだか気合入ってますねえ…。
生活安全課からの異動。
非行少年たちから絶大な人気を誇っていたらしい。
(三竿)へえ〜あのおばちゃんが…。
あっ九十九課長!
(九十九)おう万城目くん今日からよろしく。
はいお世話になります。
課長1つどうですか?九十九課長の肝煎りだってよ。
頑張りまーす。
あっあの…はじめまして万城目といいます。
あのこれよろしかったら1つどうぞ。
ああ…どうも頂きます。
はい。
いいなあ百野さんとバディ組めて。
百野さん?知らないんすか!?スゴ腕の名刑事っすよ!自分百野さんみたいになりたいっす。
へえ〜!そんなすごい人が私のパートナーに?え〜緊張しちゃう!フフッ…。
ああ…どうぞ。
あっ来ましたよ。
あっ…。
あの本日からお世話になります万城目千鶴です。
よろしければこれどうぞ。
手作りですか?はい。
張り切って昨日寝ないで作っちゃいました。
僕は結構です。
どうしてですか?遠慮しないでください。
はいどうぞ。
フフッ…。
(電話)おい!文化センターで事件だ。
急行してくれ。
(一同)はい!百野さん…。
被害者は女性。
あの天野陶子さんが経営する会社の社員だそうです。
「あの」?はい。
…えっ?もしかして知らないんですか?ほらこれ!今ベストセラーになってるんですよ天野陶子さんの自叙伝。
幼い頃から貧しい家庭に育ち学歴もなく質素な生活を続けてきたけどある時椎の実とパンの耳を使った独創的な洋菓子がコンクールで入賞してそれをきっかけに大成功したんです。
私この本から勇気をもらったんです。
私も念願かなってやっと刑事課に転属出来た!もう心機一転頑張ります!うるさいです。
はい?うるさいです!それに距離が近すぎます。
あっ…。
パーソナルスペースという言葉をご存じありませんか?1.5メートル以内に入らないよう注意してください。
すみません…。
(ため息)小学6年の冬インフルエンザにかかった同級生がパーソナルスペースに踏み込んだ事によって僕もインフルエンザにかかった。
おかげで5日間外出出来なくなり小学校生活最大のイベントである修学旅行に参加出来ず一生涯心に深く刻まれる傷となった。
それ以来踏み込まれる事をなるべく禁じています。
はい…。
そもそも自分が大の甘いもの好きだからといって挨拶代わりに手作りのケーキを配り歩くセンスが理解出来ません。
どうして私が甘いものが好きだって知ってるんですか?まさか自分が好きなものは他人も好きだと思ってませんよね?勘違いしないでください。
君中心で世界が回ってるわけではない。
無神経にもほどがあります。
君みたいな性格は刑事には向いてません。
今すぐ生活安全課に帰って素行不良の少年少女の世話係に戻ったほうがいい。
素行不良って…はあ!?えっちょっと…百野さんどこ行くんですか?百野さんそっちじゃないですよ!えっ?あっ…百野さん?ちょっと百野さん…。
どうぞ。
遅くなりました。
本日付で刑事課に配属となりました万城目です。
よろしくお願い致します。
(一同)お疲れさまです。
(三竿)被害者は坂本菜摘さん35歳。
株式会社スイーツ・トーコの専務でした。
(立花)背後から頭部を殴打されてますね。
(花形誠)この手提げ金庫が凶器でしょう。
随分荒れてますよね。
荒れてはいるけど整ってもいる。
はっ?百野さん何してるんですか?きれいだ。
等間隔に荒らされている。
金庫の中の売上金20万ごっそり持っていかれたそうです。
売上金?会場で物品販売をしていたんです。
お金の管理をしていたのが運営事務局として働いていた被害者の坂本菜摘さんです。
なるほど。
窃盗犯と鉢合わせして殺されてしまったって事ですね。
(立花)恐らく。
死亡推定時刻は午前9時から11時の間と見られます。
どうやらやってしまったようですね。
えっ?何がですか?君あのポットのボタン押してみてください。
えっ?百野さんが言ってるんですよ。
早くお願いします。
うわっ!アッチー…。
やはり中身はコーヒーでしたか。
なんなんですか?これ別にボタン押さなくてもコーヒーだってわかりますよね?ここコーヒーの跡があります。
えっ?小学5年の秋父のためにとポットからコーヒーを入れた時に僕も同じ事を…。
熱い!アツッアツッアツッ…。
(百野の声)おかげでお気に入りだったシャツにコーヒーが付着し二度と着れなくなり一生涯心に深く刻まれる傷となった。
それ以来ポットの使用をなるべく禁じています。
あっ待ってください。
あのここでカップを使った形跡ないですよね。
どうかしたんですか?被害者に何か不審な点はありませんでしたか?
(花形)そうですね…。
あっコンタクトレンズが片方しか入ってませんでした。
片方だけ?わかった。
殴られた衝撃でどっかに落としちゃったんじゃないですか?今のところまだ見つかってないけどな…。
けど刑事課初日としてはなかなかいい推理です。
ベーシックだなあ…。
あっ…。
百野さんちょっと見てくださいよこれ。
私のセーターにもコーヒーはねちゃってる。
えっ?あっいいんですか?違います。
えっ?そこのカップ取ってください。
あっ?これ。
百野さんが言ってるんですよ。
早くお願いしまーす。
はい。
やっぱりここだ。
えっ?あっ!さすが百野さんだ。
なんでわかったんですか?0.5ミリほど傾いていました。
えっ…。
犯人は被害者と近しい人物ですね。
どうしてですか?犯人と被害者はここでコーヒーを飲んでいました。
つまりは顔見知り。
それを隠すために殺害後にカップを洗って元に戻した。
ここにコンタクトレンズが飛んだ事に気づかず…。
しかも犯人は左利きです。
なんでわかるんですか?取っ手の位置。
確かに!もし右利きだったらカップの取っ手はこう右に向いてますよね!近い…。
それにすっごくうるさい!あなたが第一発見者の武山沙織さんですね。
はい。
天野陶子さんの秘書をされてるとか。
はい。
あの部屋にはなんのために?セミナーの第二部が始まる時間だったので陶子社長を呼びに…。
それは何時頃ですか?
(沙織)二部が始まる直前だったので午前11時前だったと思います。
坂本菜摘さんが殺害されたのは午前10時5分から11時の間。
えっ?あなたはどこにいましたか?この間あなたはどこにいましたか?物品売り場や来場者のチェックなど会場内を動き回っていました。
南葉署の万城目千鶴です。
(陶子)沙織さん午後からの打ち合わせ予定中止の連絡した?あっすみません。
まだ…。
何やってるの。
早くして。
はい。
どうやらやってしまったようですね。
えっ?人が1分間にまばたきをする平均的な回数は20回程度です。
しかしあなたは不自然なほど多かった。
現に僕もそうでした。
小学校5年の夏母親に隠れて…。
あっ百野さん今その話は…。
人の話を勝手に遮らないでください。
最後まで口にしないとこの辺がむずがゆくなります。
そのせいで小学5年の夏…。
そんな事言ったら百野さんだって私の話さっきから遮ってるじゃないですか。
もう一度言います。
話を遮らな…。
ほら今遮った!かゆい…かゆい…。
(陶子)沙織さん何か隠してる事があるなら全部言って。
実は見たんです。
菜摘さんが旦那さんと抱き合っていたのを…。
天野陶子の夫が不倫していた?はい。
秘書の武山沙織さんが午前10時20分過ぎに夫の天野翔平さんと被害者の坂本菜摘さんが抱き合ってたのを見たそうなんです。
天野陶子は2人の関係を知ってたのか?噂レベルでは耳にしていたようです。
だとすると嫉妬した天野陶子が坂本菜摘を殺害したという事もあり得るな。
いいえ。
天野陶子にはアリバイがあるんです。
第一部が終わった10時45分以降あなたはどうしてました?すぐにこの物品売り場に来ようとしたんですが夫がやって来たので立ち話を。
どこでですか?そこの中庭です。
何分間話しました?さあ…1分ぐらいじゃないでしょうか。
そこの中庭から殺害現場となった部屋まではおよそ225メートル。
秒速1.25メートルで進めば10時50分15秒には殺害現場に到着出来ます。
ちょっと…取り調べじゃないんですからそういう言い方は…。
10時50分15秒から10時59分までの間はどちらに?秒単位でわかるわけないじゃないですか…。
ここの物品売り場にいました。
本を購入した人と写真撮影を。
これを調べたらどこで何時何分何秒に撮られたものかわかるんじゃないんですか?完璧です。
ちょっと拝見してもよろしいですか?ええ。
あの九十九課長。
ん?百野さんって本当に名刑事なんでしょうか?
(九十九)どうしてそう思うの?そりゃ一瞬はすごいなと思った場面もありましたよ。
でもその他はただの偏屈な変わり者じゃないですか。
僕のどこが偏屈な変わり者だというんですか?ぼくのいつどの箇所の発言が該当するのか…。
そんな事わかりません。
そういうところがそうなんです。
かゆい…。
まあまあまあまあまあまあまあまあ…。
名刑事と変わり者は表裏一体なんです。
課長…。
(ドアの開く音)
(立花)九十九課長!おう。
坂本菜摘さん殺害の動機を持った女性がいました。
この女性同僚の飯塚妙子です。
天野翔平と不倫関係にあったそうです。
えっ?どういう事ですか?天野翔平は殺害された坂本菜摘さんと不倫してたんですよ。
隠れて2人と関係持ってたんですよ。
同僚の証言によると飯塚妙子は天野陶子よりも坂本菜摘のほうが邪魔だったと言っていたそうです。
その飯塚妙子のアリバイは?それがセミナーが始まる前の午前9時半頃坂本菜摘と口論となり帰されたそうです。
男絡みの犯行で間違いないです。
愛憎のもつれってやつですよ。
事件前に菜摘さんと会ってた天野翔平も気になりますよね。
2人の間に何かトラブルがあったとか…。
よし急ごう。
立花飯塚妙子に話を。
(立花)はい。
(九十九)万城目百野さん天野翔平の当日の足取りを探ってくれ。
はい。
何やってるんですか?ちょっと…。
なんなんですか?あれ。
百野さん!スピーチ頼みましたよ。
スピーチ?はい。
「夢を持つ事はとても大切な事です」「夢は必ずかなう」「みんなも夢を大きく持って生きていきましょう」駄目。
書き直し。
なんで?どこが駄目だったの?
(ため息)みんな夢がかなったら社会は成り立たない。
夢に破れた大多数の人間が生活のために好きでもない仕事に就き人生のほとんどの時間を仕事に費やしせっせと税金を納める事で国は成り立ってるんだよ。
つまり「夢は必ずかなう」などというのは嘘なんだ。
僕は嘘はつきたくない。
うーん…じゃあもうおじさんが書いてよ。
言ったよね。
僕はこういうのを考えるのが本当に嫌いなんだ。
じゃあなんで引き受けたの?交換条件だったんだ。
パートナーの詳細を教えてもらう代わりにスピーチを引き受けろと脅された。
それで得た情報がなんの役にも立たないこの紙切れだった。
最悪なパートナーを押しつけられた。
他人の事にすぐ干渉してくる最も嫌いなタイプの人間だ。
おかげで今日は一日中体がかゆかった。
この事件が解決したらコンビ解消を申し出る。
どう考えても割に合わない。
大変だね大人って。
さあ再開しよう。
10分以内に書き直して。
え〜!短すぎるよ。
(橋本)アレルギー?そう皮膚科でね夏男のひざ下の赤い斑点。
小さいからすぐ治るらしいんだけどね。
気づくのが早くてよかったって言われたわ。
百野のおかげってわけか。
ただ自分が赤い斑点大嫌いだから気がついただけでしょ。
夏男は?百野さん家。
スピーチの練習に付き合うって出てった。
また泊まる気じゃないか?連れ戻してこいよ。
(ため息)あと1分23秒だよ。
出来たよ。
確認しよう。
ねえおじさんはうちのお母さんと結婚してたんでしょ?うん。
532日間の結婚生活だった。
なんで別れたの?性格の不一致だよ。
お互い一緒にいるのが耐えられなかった。
だけどね僕たちが離婚したおかげで夏男くんが生まれたんだよ。
夏男くんにとって僕は命の恩人なんだ。
句読点が多すぎて目がチカチカする。
もう一回書き直そう。
え〜…。
(チャイム)夏男!お父さんがもう帰ってこいって。
(夏男)ちょっと待って!書き直すから。
書き直すって…えっ?何やってるの?スピーチの原稿を書いてもらっている。
はっ?夏男に書かせてるわけ?夏男くんはありきたりで当たり障りのない文章を書く。
僕には到底まね出来ない凡人レベルの文章だ。
小学生向けのスピーチとしてはもってこいだと判断した。
自分で書きなさいよ!夏男帰るわよ。
ストップ!入っちゃ駄目だ。
なんでよ?このご時世元女房が元旦那の部屋に上がり込むなんて事があったら真っ先に不倫を疑われてしまう。
何が不倫よ!あなたとより戻すなんてあり得ないから!よりを戻す話などしていない。
不倫を疑われる可能性について言及しているんだ。
大体真下に旦那がいるのよ。
こんな状況で不倫する馬鹿がどこにいるのよ!夏男!ほら帰るよ。
はいはいほら。
またね冬美男おじさん。
真下に旦那…ん?あっ!嘘!?耳がキーンとしました。
鼓膜が破れます。
大げさな…。
でどうしてそう思うんですか?昨日の沙織さんの証言が嘘だって。
実は見たんです。
菜摘さんが旦那さんと抱き合っていたのを…。
わざわざ妻が近くにいる場所であいびきする人はいません。
ああ…。
いやでもなんでそんな嘘つく必要があるんですか?さあ…?うわっ!ごめんなさい。
ちゃんと前見て歩いてください。
君が勝手に近づいてくるからじゃないですか。
(チャイム)夫はもうすぐ帰ると思うのでどうぞあちらへお掛けになってください。
あっはい。
今何かご用意しますね。
あっどうぞおかまいなく。
ああ…ああきれい!これもしかして新作のケーキたちですか?
(陶子)ええそうなんです。
わあ…。
完璧です。
ですよね。
これぞ主婦のかがみ。
いや…女のかがみだな。
アハハ…昔は何も出来なくて欠点だらけだったんですよ。
あなたが?
(陶子)ええ。
一つ一つ克服していったんです。
自叙伝!読みました。
(陶子)ありがとうございます。
あの…自分を信じる事が大切なんですよね。
ええ。
何か1つでいいから得意なものを持てれば人は変わります。
はい!ですって。
ちゃんと聞きました?似たような事を小学校5年の夏担任だった中村章子先生に言われました。
これを乗り越えたらなんだって出来るって。
それで?チャレンジしました。
苦手だったあの赤いプツプツした斑点だらけのイチゴを口にしたんです。
結果は?ストレスで3日間おなかを壊しました。
おかげで夏のキャンプに参加出来なくなり一生涯心に深く刻まれる傷となった。
アハハ…面白い方なんですね百野さんって。
面白いっていうかただの偏屈な変わり者っていうか…。
ああ…私たちここでご主人が帰られるまで待たせて頂きます。
よかったら一緒にケーキ作りませんか?新しいケーキの試作中なんです。
いいんですか!?よかったら百野さんも。
ザクロを使ったケーキなんですよ。
ザクロ!?千鶴さんお上手ですね。
本当ですか?家ではよく作るんですよ。
私は独り身ですけど…。
アハ…。
百野さん大丈夫ですか?は…はい。
ジューサーお願いします。
はい。
何やってるんですか?百野さん。
もう!これぐらいとっととやってくださいよ。
はい。
これ終わったらここに入れてくださいね。
はい。
もう十分ですよ。
はい。
(スイッチを切る音)うわっ!あ…すいません。
もしかしてザクロも苦手でしたか?いえ…。
ごめんなさい手伝わせてしまって…。
その後捜査に何か進展はあったんですか?すみません捜査上の事は…。
旦那さんは坂本菜摘さん以外とも不倫していました。
えっ…?相手は飯塚妙子さんです。
ちょっ…百野さん!妙子さんとも…。
どうやらそっちが本命だったようです。
まさか夫は事件に何か関係を…?あ…いえいえ。
あの…あくまでも可能性の話…。
別れ話がもつれて殺害したとか旦那さんの動機ならいくらでも考えられます。
別れ話って…。
沙織さんの証言では2人は抱き合っていたって…。
その証言は嘘です。
でもなぜ沙織さんがそんな嘘の証言を…?そうですよね。
あの本当にあくまでも可能性の話なんで…。
(ドアの開く音)すいません!
(ドアの閉まる音)
(足音)誰?南葉署の百野です。
万城目です。
どうぞこちらへ。
昨日午前10時過ぎにセミナー会場にいらっしゃいましたよね?はあ?なんでですか?あなたを見てた人がいるんです。
菜摘さんと仲良く話してたって。
(天野)えっ?ちょっと待ってくださいよ。
確かに俺は昨日あの場所には行きました。
でもそれは妻に会いにいっただけであいつと話したりなんてしてないですよ。
いやでも見た人がいるんです。
ちょっと!あ…ごめんなさい。
この隊長は後ろを向いて部隊に指示を出しています。
向きは逆です。
勝手に触らないでください。
これでいいんです。
顔の向きを合わせてるんですから。
納得しました。
納得したんですか?ええ。
志向は違えどあなたのお気持ちはよくわかります。
ちょっと…。
左利きですね。
左利き?しかも犯人は左利きです。
それが何か?いえ…。
(立花)飯塚妙子から話を聞く事が出来ました。
事件当日飯塚妙子はセミナー参加者の受付を担当していましたがそこで被害者の坂本菜摘とトラブルになったそうです。
トラブル?
(坂本菜摘)妙子さんちょっといい?
(飯塚妙子)はい。
お願いします。
これ誤字があったんだけど。
最終確認してって言ったよね!?ごめんなさい。
わかってる?陶子社長に怒られるのは私なのよ!?八つ当たりしないでくださいよ。
もういい。
今日帰って。
わかりました。
帰ります。
(九十九)会場を後にした時間は?午前9時30分頃だったと言っています。
それから家に真っすぐ帰ったと。
周辺の聞き込みと防犯映像を取り寄せて裏を取ってみます。
(九十九)引き続き頼む。
(立花・三竿)はい。
百野さん天野翔平が左利きだっていうの報告しなくていいんですか?僕はしませんが君がしたければどうぞ。
えっ!?どうしてですか?
(立花)それと1つ気になる事を…。
なんだ?昨日の夜妙子の携帯に天野翔平から連絡があったそうなんです。
お金が入った?2人でどっか旅行でも行こう。
しかし妙子はその誘いを断ったそうです。
天野翔平は趣味にお金を費やしすぎて妻に秘密の借金があったそうで…。
それの返済に充てたほうがいいって。
借金?その手に入れた金ってあのセミナー会場で盗まれた売上金の事なんじゃないかと…。
その可能性はあるな…。
おい万城目!はい。
(九十九)天野翔平の足取りはどうだった?はい。
菜摘さんと話をした事は否定しましたが犯行時刻に会場に来ていた事は認めました。
そうか…。
(ドアの開く音)
(警察官)九十九課長。
ん?昨日の事件に関して話したいという方がお見えになっています。
どうぞ。
ごめんなさい。
どうして嘘の証言をしたんですか?私がお願いしたんです。
(陶子)警察に何か聞かれたら菜摘さんと仲良くしている姿を見たって言ってほしいって。
どうしてそんな事を?沙織さんもういいから本当の事を全部話して。
あの日私が本当に翔平さんを見たのは第二部が始まる午前11時前です。
(沙織の声)陶子社長を呼びにいった時翔平さんが控室から出てきました。
殺害現場から出てきた?はい。
そのあとすぐに部屋に入ったら…。
(悲鳴)間違いありませんね。
警察が来るまでの間沙織さんからその事を聞いてきっと彼がやってしまったんだと思って…。
その事は黙ってほしいむしろ2人が仲良くしているところを見たって嘘ついてほしいって頼んでしまったんです。
ご主人をかばったんですね。
すみません。
話してくださってありがとうございました。
ごめんなさいあなたまで巻き込んでしまって…。
重要参考人として天野翔平から話を聞くぞ。
はい。
完璧です。
(立花)天野翔平さんあなたの指紋を採らせて頂きます。
(天野)なんで!?凶器からいくつかの指紋が見つかりまして関係者の指紋である事が確認出来たんですが1つだけどうしても判明しなかった指紋があったんです。
(天野の声)確かにその時間あの場所には行った。
でもその時にはもう死んでたんだって。
菜摘…菜摘!
(天野の声)最初から売上金を奪おうなんて思ってなかったよ。
妻の財布から数万円抜き取ろうとしただけで…。
(立花)なんであの部屋に財布がある事を知っていたんだ?本人が言ってたんですよ。
財布は控室に置いてきたって。
あれ?百野さんもういいんですか?もう十分です。
(立花)金を盗んだ事は認めるんだな?はい。
(立花)そうか。
じゃあじっくりと話を聞かせてもらおうか。
あ〜あなんだか切ないですね。
夫に不倫されてるのにその夫をかばうために嘘の証言させるなんて。
そんなに愛されてるのにあの男…。
最低ですよ!もう本当許せないわ。
君はいつもそうなんですか?えっ?何がですか?他人事に感情移入を?そりゃするでしょう。
生活安全課にいた頃は不運な家庭環境のせいで非行に走った少年少女たちの話を聞いてはもう泣けて泣けて…。
そういうのありますよね?ありません。
いや絶対ありますって。
じゃああれはどうですか?テレビとか映画とか見て泣いたり笑ったりしますよね?あり得ません。
決められたセリフを口にする事で報酬を得ている労働者たちを見て何が楽しいんですか?何がって…。
あれは全て演技です。
僕たちを必死でだまそうとしている哀れなピエロとしか思えません。
わかりました。
もういいです。
もういい?何がもういいんですか?僕の意見に反論があるなら…。
ありません!もうそのとおりでいいって事です。
何度も言いますが僕の言葉意見を遮らない…。
はいはい!わかりました。
ごめんなさい!かゆい…ものすごくかゆい…。
かけばいいんじゃないですか?なんなんですか?いつも。
断固拒否します。
かけば君に負けた事になる。
どこ行くんですか?皮膚科に行ってきます。
ああっ…。
万城目。
はい。
百野さんは?皮膚科に行くと言って帰りました。
出たか…。
課長私あの人とやっていく自信ありません。
大丈夫。
荒くれ者の非行少年たちと忍耐強く接し心をほぐしてきたお前だったらうまくやれるさ。
そんな事言われても…。
相手を大人だと思うからいけないんだ。
私は常日頃5歳児だと思って接している。
飴と鞭を使い分けてな。
飴と鞭…。
これ百野さんに届けてくれ。
なんですか?これ。
セミナーに参加した人たちの名簿だ。
大至急手に入れてくれと頼まれた。
えっ…?ここ?こんにちは。
すいませんまだ開店前なんで…。
あっ違うんです。
百野さんのご自宅ってこちらですか?離婚?そう。
あの人と結婚した事が私の人生の最大の汚点。
大変ですよねあの人と一緒にいるの。
フフ…まあ…。
他人と行動を共にする事が出来なくてね。
唯一大丈夫だったのが今課長やってる九十九くんなんです。
九十九課長が?昔は百野の部下で今じゃ上司。
そうだったんですね。
あっ…失礼なんですけどどうして離婚されたのにこんな近くに住んでるんですか?あの性格だろ?家が決まんなくてなあ。
何時何分からの日当たりがどうのこうのって難癖つけるからうるさがられて不動産屋さんから断られちゃうんだよ。
ああ…なんとなく想像つきます。
でだったらこの店の上に住まわせてあげればいいってうちの旦那が…。
ご主人が?この上は昔からあいつと一緒に遊んでた部屋だったからまあここならあいつも住めるかなと思ってさ。
まあ同級生の元妻と再婚するっていう負い目もあって…。
えっあの…百野さんの同級生で百野さんの元妻?うん。
そう。
へえ…。
あっすみません。
ボリューム上げて頂けますか?ああ…。
「この度は私の夫のしてしまった事で多大なご迷惑をおかけして誠に申し訳ございませんでした」「夫の罪は妻である私の責任でもあります」よく出来た奥さんよね。
この人の旦那何人もの女性と不倫してたんでしょ?私だったら嘘でもこんな事言えないわ。
(橋本)当たりめえだろ。
お前の嘘演技なんてすぐバレるよ。
(紗代・橋本の笑い声)演技?あれは全て演技です。
僕たちを必死でだまそうとしている哀れなピエロとしか思えません。
「さあみんな。
夢を持とう」「夢がかなう人はほとんどいないけどそれでいい」「どうせ将来は就きたくもない仕事に就くのだ」「それまで夢ぐらい見ようじゃないか」「夢に向かって走れ」おしまい。
なんか僕が考えた文章そのままじゃない?そのままじゃないよ。
句読点の位置と「夢に向かって走れ」という勢いのある言葉を追加した。
(テツオ)おっさん!子供集めて何やってんの!?スピーチの練習。
(コウジ)ああ?本当かよ。
だったらうちらも聞いてやるからやってみろよ。
それは出来ない。
君たちを入れたら聴衆者が10人に達してしまう。
あ?やっぱこいつ怪しい。
おっさんちょっと来いよ。
百野さん何やってるんですか?
(コウジ・テツオ)千鶴ねえさん!ちわっす!おお!テツオとコウジじゃん。
(コウジ)お久しぶりっす。
(テツオ)お久しぶりです。
久しぶり。
元気だった?
(テツオ)はい。
この子たち昔結構悪くて私が面倒見てたんです。
まだやってたんだね不審者から子供たちを守る会。
(テツオ・コウジ)はい。
あああの人は私の同僚だから大丈夫。
あっこれは大変失礼しました。
失礼しました。
(コウジ)じゃあうちらはこれで…。
うん。
(テツオ・コウジ)失礼します。
またね。
気をつけて帰るんだよ。
(テツオ・コウジ)はい!失礼します!失礼します。
フフ…!どうして君がここに?はいこれ九十九課長から。
どうしてセミナーの参加者名簿を集めたんですか?それは僕の考えです。
君には関係ありません。
そうですか!じゃあこれは渡せません。
はっきり言いますけど私あなたのお守りをするために刑事課に来たわけではありません。
今までは単独捜査で好き勝手にやってきたかもしれませんけど今は私が一緒にいるんです。
今までのやり方は捨ててください。
私決めたんです。
これからは百野さんの事は素行不良の少年だと思ってビシバシと指導していきますから。
僕のいつどの行動が素行不良の少年だと…。
つべこべ言わない!これが欲しいんだったら理由を教えてください。
(ため息)かゆい…。
天野陶子が何か隠してる?そうです。
それとこの名簿が何か関係あるんですか?どうやらやってしまったようですね。
えっ?あの家で僕がこの名簿に目をやった時天野陶子は親切を装ってすぐに手を出しました。
そして手にした名簿を裏返しにしました。
よほど見られたくなかったんです。
たまたまじゃないですか?天野陶子は完璧な女性です。
汚れたままで名簿を裏返すなんて行為は決して行いません。
なるほど…。
まあまずは参加者たちを洗ってみましょう。
言われなくても君にお願いするつもりでした。
はいはい。
おっ!いい感じです。
さあ頂きましょう。
僕はいりません。
おなかすいてないですか?このお店の名前ご存じですか?てごね…ですよね?他人が手でこねたものを食べる人の気が知れません。
まあまあまあまあ…。
人それぞれさ。
どうも。
はいありがとうございます。
夜分遅くにすみませんでした。
はい失礼致します。
おはようございます!おはよう。
百野さんちょっと…!私お手柄かもしれません。
穏やかな朝を君は台無しにする天才ですか?この東堂美月っていう女性なんですが登録された電話番号使われていませんでした。
住所も存在してませんでした。
天野陶子に聞いてみましょう。
ねっ早く!何やってるんですか?早く!短大時代就職活動で行き詰まっていた時に声をかけてくれたのが陶子社長でした。
じゃああちらからコンタクトがあったんですね。
はい。
秘書を募集中だから働いてみないかって。
そうですか。
あの…まさか陶子社長を疑っているんですか?はい。
えっあっいえ…そういう事ではありません。
あっ陶子社長。
(陶子)なんですか?こんなところまで。
お忙しいところすみません。
少しだけお話伺えますか?ごめんなさいこれから出版イベントが始まりますので…。
お時間取らせません。
沙織さん準備をお願い。
わかりました。
(陶子)それで聞きたい事って?あっはい。
あのセミナーの参加者名簿を調べたんです。
この東堂美月さんっていう方ご存じじゃないですか?いえ。
この方が何か?この東堂美月さんっていう方だけが当日なんの連絡もなく不参加なんです。
住所も電話番号もデタラメで名前も本名かどうか…。
そうですか。
登録されたものが本物かどうかまでは調べてはいませんので。
そうですよね…。
何か事件と関係があるんですか?気になりますか?あっ…別に。
夫が逮捕された事で事件は終わったものかと…。
安心してください。
旦那さんは人を殺してはいません。
昨日彼の部屋に入った時コレクションしていた雑誌は巻数ごとにきれいに並べられていました。
そして僕が兵隊のジオラマの向きを変えた時彼はすぐに元に戻しました。
ちょっと!
(天野)これでいいんです。
顔の向きを合わせてるんですから。
彼はとても几帳面な性格です。
殺害現場に犯人が置いたと思われるカップが2つだけ左向きで置かれていましたが彼が置いたとするならばカップは全部左向きもしくは右向きにそろえなければ気が済まないはずです。
それはただ急いでいたからじゃないんですか?早くその場から逃げたくて慌てていたんじゃ…。
小学5年の夏学校の図書館で図書委員として本の整理をしていた時飼っていたセキセイインコのピーちゃんが危篤状態に陥ったと連絡が入りました。
僕は慌てふためきすぐに自宅に戻ろうとしましたが作業中だった本の整理がどうしても気になり動けませんでした。
その結果ピーちゃんの死に目に会えず一生涯心に深く刻まれる傷となった。
何が言いたいんですか?どんなに急いで慌てている場面でもその人の持つ性分が勝る…という事です。
そのとおりです。
じゃあ犯人は天野翔平に罪を着せるためにわざとカップを左向きに置いたって事?その可能性が高いと言えます。
つまり犯人は天野翔平が左利きである事を知っている近しい人物だという事です。
まるで私が犯人みたいな言い方ですね。
また来ます。
あっ…。
失礼します。
百野さんもしかして天野陶子の事ずっと疑ってたんですか!?近づくのをやめるか声のボリュームを低くするかどちらかにしてください。
確かに夫の不倫相手を殺害しその罪を夫に着せる。
それが彼女なりの復讐だった。
そう考えるとまあすっきりはしますよね。
でも天野陶子には完璧なアリバイがあります。
完璧?そんなものあり得ません。
どんな人間にも必ずほころびはあるものです。
なるほど!百野さんみたいにですね。
まあ百野さんはほころびだらけだから論外か。
僕に言わせると君のほうこそほころびだらけ…。
さあ捜査続けましょう。
東堂美月?あの日受付をされてたんですよね?ええ。
その方だけ当日来てないんですよ。
以前も登録されてた方でしょうか?さあ…?一人一人の名前まで覚えてませんよ。
住所もデタラメの謎の女性なんですよ。
何か心当たりありませんか?謎の女性?はい。
あっそういえば菜摘さんに怒られて私だけ先に帰された時…。
(陶子)こんなところにまで来ないで。
あれが最後って言ったはずよ。
帰って!ハットを被った女性と言い争ってた?いつも冷静な陶子社長にしては珍しい事だなと思って。
その女性が東堂美月でしょうか?セミナー会場内の防犯映像の解析は?終わりました。
飯塚妙子は確かに午前9時30分に会場を後にしています。
その後会場に戻ってきた形跡はありません。
ちょっと待ってください。
その防犯映像を見せて頂けませんか?どうした?万城目。
百野さんその防犯映像に東堂美月が映っているかもしれません。
ではハットを被った女性は僕が捜します。
君はハットを被っていなくても行動の怪しい女性がいないか捜してください。
えっ?それ私のほうがずっと大変じゃないですか!防犯映像見せてください。
わかりました。
一体誰なんだ?東堂美月って。
それ私たちも知りたいんです。
えっ?わかりました調べますよ。
あっ!ちょっと止めてください。
あっ違う…。
もう1回お願いします。
(舌打ち)止めてください。
はい。
今の映像巻き戻してください。
はい。
ストップ!この女性を拡大出来ますか?はい。
いた!この人が東堂美月?この女性あの時の…。
え…?うわっ!ごめんなさい。
ああ!天野陶子の家の前でぶつかった…。
じゃあやっぱりこの人が東堂美月!?百野さん一体どういう事なんですか?またあなたたちですか…。
これ以上一体何を聞くおつもりですか?本当に何度もすみません…。
あなたが夫に罪をなすりつけようとした事は明白です。
ちょっと百野さん!カップを2つだけ左向きに置くようなわかりやすい細工をしたのはあなたです。
それだけじゃありません。
あなたはあえて控室に財布がある事を彼に話しました。
それに今手持ちないの。
控室に財布置いてきたから。
借金で金に困っていた彼なら必ずあの部屋に行く。
そこで売上金を目にすれば盗むはずだと考えたんです。
つまりあなたはその時点であの部屋に菜摘さんの遺体がある事を知っていたのです。
アハハハハ…なんの冗談ですか?
(陶子の声)菜摘さんは10時5分までセミナー会場でガイダンスをしていて私はそのすぐあとに登壇して10時45分まで話していました。
夫が突然現れたのは第一セミナーが終わった直後です。
私に彼女を殺す時間なんてありませんよね?確かにあなたは完璧です。
だからわからないんです。
どうしてあなたのような人がようやく築き上げた今の地位を危険にさらしてまで犯行に手を染めたのか。
なぜですか?それはこの人と関係がありますか?あるんですね?いい加減にしてください!やってもいないのにしつこく人の職場や家へ訪ねてきて…。
問題にしますよ。
どうぞご自由に。
今日のところは失礼します。
失礼します。
お…怒らせた?はい。
問題にすると。
まずいですね…。
世間的に天野陶子は不倫夫を最後までかばい続けた悲劇のヒロインって事になってます。
問題にされたら相当たたかれますよ。
そんな事もお構いなしに突っ込んじゃうなんてさすが百野さんだ。
百野さん勝算はあるんですよね?いえ。
東堂美月の正体がわからなければアウトです。
まずいですね。
これで事件解決出来なければ九十九課長の出世にも響きますよ。
えっ!?あの夫の天野翔平だったら何か知ってるかもしれません。
聞いてみましょうか。
そうですねお願いします。
何言ってるんですか?百野さんも一緒に行くんですよ。
無理です。
僕は狭いところが苦手なんです。
密室で他人と長時間過ごすくらいなら僕は聞かなくて構いません。
駄目です。
百野さんが今回の事件と関係あるって言ったんですよ。
直接聞いてください。
はい行きましょう。
いや無理無理。
絶対無理なんです。
百野さん!いやあの百野先輩…頼みます!いや絶対無理なんです。
いやいや行きません。
僕は本当に無理なんです。
勘弁してください。
無理無理。
本当に無理なんです。
無理無理無理無理…。
見覚えありませんか?この女性東堂美月さんといいます。
聞いた事ありませんか?何も話したくない。
ふざけんな。
人を犯人扱いしたくせに。
わかりましたもう結構です。
失礼します。
まだ始まったばっかりですよ。
百野さんからもちゃんと質問してください!君ドア開けといて。
はい。
ふう…。
ああ息苦しくて仕方ない…。
では…この写真に見覚えはありませんか?えっ?これってあなたの?ちょっと百野さんふざけないで…。
そうなんです。
君ならわかってくれると思っていたこのすごさが。
まだあるんです。
おお!すげえ!はあ?刑事さんセンスいいわ!うわあ…マジリスペクト。
すげえ〜っ!こっちの写真に見覚えは?あっこれはないね。
あっでも東堂美月って名前なら聞いた事あるな。
どこで?家に電話かかってきたんだよ。
どちら様ですか?もしもし?東堂美月って…えっ…嘘でしょ?なんだか血の気が引いたような青ざめた顔して。
そんな陶子の顔見た事ないからびっくりしちゃってさ。
そこからなんだか様子がおかしくて…。
陶子?何かを調べてた?まあ多分だけどね。
いやでもこれ本当すげえなこれ。
あっ…。
もう限界です。
僕はこれで。
東堂美月から電話があったあとに何を調べてたのかがわかれば真相に近づくと思うんです。
そうは言ってもなそれだけの事では家宅捜索には入れんぞ。
わかってます。
だからパソコンを調べるいい作戦が…。
作戦?だんだんわかってきたんです百野さんの使い方。
ウフフフフ…。
しっかりお願いしますよ百野さん。
ここはあなたの力が必要なんです。
自信はありませんがやるだけやってみます。
大丈夫ですよ!百野さんだったら絶対に出来ます。
ちょっと待って。
もう一度セリフ確認させてください。
あの本当に何度も何度も申し訳ありません。
これつまらないものですが…。
あの私が趣味で作ったものなんですけどプロの方のお口に合うかどうか…。
まあわざわざ…。
実は捜査のほうが二転三転しておりましてですねやっぱりご主人が怪しいんじゃないかななんていう動きが出てきておりまして…。
そうなんですか?はい。
それで翔平さんのアリバイを確認したくてですねセミナー会場の防犯映像を一緒に見て頂けませんか?構いません。
ありがとうございます。
あっ…あれっ?やだ!私パソコン忘れちゃった。
どうしよう?百野さん。
どうしよう?百野さん。
駄目だ。
セリフ忘れました。
陶子さんすみませんパソコン貸して頂けますか?ああ…はい。
しっかりしてください!ごめんなさい。
「パソコンをお借りする事は」…。
ああそれはもう終わりました。
「ああ美味しそうなケーキだな」はい。
お借りします。
あっ…ああ美味しそうなケーキだな。
僕も1つ食べていいですか。
どうぞ。
うっ…うわあイチゴが入ってる…。
ぐっ…。
もう子供なんだから。
陶子さんすいませんお水ください。
はい。
パソコン汚れてないかしら?ごめんなさい…。
(九十九)白骨遺体?はい。
天野陶子が見ていたのはこの記事です。
3カ月前鹿間の山中で発見された身元不明の白骨遺体…。
なんでこんな記事を?わかりません。
遺体は10年以上も前のものじゃないかと書かれてますね。
九十九課長。
この白骨遺体と東堂美月は何か関係があるかもしれません。
百野さんと一緒にここに行っても構いませんか?もちろんだ。
至急頼む。
私の…。
私の出世がかかってるんだ!!お前らはセミナー会場付近の防犯映像をしらみ潰しに調べてこの東堂美月の正体を暴け。
(三竿)はい…。
以上!!鹿間署の桐山です。
わざわざご苦労さまです。
南葉署の万城目です。
お世話になります。
もう1人いらっしゃるとお聞きしたんですが…。
はい。
ええっ!?どんだけ運動不足なのよ刑事のくせに!こちらです。
この辺りです白骨遺体が発見された場所。
遺体の身元は判明してないんですよね?ええ。
10年以上も前のものなので状態が良くなくて…。
唯一の遺留品は毛髪に絡まっていた飾りだけなんです。
髪の飾り?ちょっと見せてください。
はい。
金属部分が腐食しちゃってプラスチックの花だけ残ってるんですがこれじゃあ手がかりとまではいかなくて…。
大丈夫ですか?少し休みますか?いえ。
おなかすきませんか?いえ。
私はおなかすきました。
いえ。
何か食べましょう。
ねっ。
いえ…。
白骨遺体から情報を得るのは難しそうですね。
難しいです。
A定食には卵がついてますがB定食には卵がついてない。
しかしトータル的に食べたいのはB定食です。
天野陶子はどうして白骨遺体の記事なんて見てたんでしょうか?それと東堂美月さんは本当に関係あるのかしら?お決まりですか?あっはい。
じゃあ私はA定食で。
では僕もA。
はい。
いややはりBをお願いします。
AとBですね。
あっ待ってください!B定食にはこの食器を使ってください。
(店員)これを?冗談です。
人が真剣に話してるのを勝手に冗談に変えないで…。
このお店は長いんですか?おかげさまで30年以上もやらせてもらってます。
AとBお願いね!はいよ!あの…。
この女性ご存じないですか?さあ…?ちょっと借りますね。
あんたこの写真の人知ってる?えっ?東堂美月さんっていう方なんですけど。
ああ美月ちゃんだったら随分昔にこの近所のスナックにいた子じゃないかな。
ああ思い出した!あの洋菓子を作るのが上手だった美月ちゃんね。
洋菓子?
(店主)そうそう。
昼間は洋菓子店でアルバイトしててね。
小さい時から貧しい家庭に育って両親は蒸発。
高校も行かないで若い時から1人で働いて生きてきた苦労人なんだよ。
そのエピソード…ちょっと待ってください。
あのその美月さんってこの方じゃないですよね?ハハッ…やだ!この人ってあれでしょ?今話題になってる天野陶子さんでしょ?全然違いますよ!そうですよね…。
当時の美月さんを知る方は他にどなたかいますか?「幼少期から、貧しい家庭に育ち中学三年の、冬に差し掛かった頃両親が、突然蒸発して、いなくなりました。
」「それからの生活は、地獄だった……。
」「そんな私の心の支えは美味しい洋菓子を、作ることだったのです。
」句読点が多すぎます。
まるで夏男くんの文章を読んでいるようだ。
目がチカチカする…。
やっぱりこのエピソードさっき聞いた美月さんの過去とそっくりじゃないですか?どうやらやってしまったようですね…。
えっ?
(植野容子)すいません!
(容子)すいませんお待たせして。
いいえ。
こちらこそわざわざご足労頂き申し訳ありません。
私もずっと捜してたんです美月の事。
だから協力出来る事があればなんでも。
ありがとうございます。
ここに美月が写った写真があります。
拝見させて頂きます。
どうぞ。
拝見致します。
どうも…。
15年前の写真ですか?ええ。
仲の良かったお客さんたちと一緒にキャンプに出かけた時に撮ったものです。
この女の子は?美月の娘で奈緒ちゃんです。
娘さんがいらしたんですか?はい。
じゃあ娘さんも一緒にいなくなった?いいえ。
娘を置いてどこかに…。
そのあと奈緒ちゃんは施設に預けられました。
あっいました。
美月はこの子です。
えーっと…。
あっほら。
美月と奈緒ちゃん。
これ…この髪飾り…。
(桐山)金属部分が腐食しちゃってプラスチックの花だけ残ってるんですがこれじゃあ手がかりとまではいかなくて…。
まさかあの白骨遺体は東堂美月さん…?間違いありません。
白骨遺体ってこの付近で最近見つかったあの事ですか?死後10年以上経過していたっていう…。
はい。
それはあり得ません。
なぜですか?美月はいなくなってからも施設にいる奈緒ちゃん宛てに手紙を書いていたんです。
これが奈緒ちゃん宛てに届いた手紙です。
これどうして施設で保管を?奈緒ちゃんがここに来たのは5歳になる頃でした。
毎年誕生日になるとお母さんから手紙が届くので奈緒ちゃんはそれを楽しみにしていたんですけど…。
おめでとう奈緒ちゃん。
ほらいつものよ。
(東堂奈緒)ありがとう!10歳になった頃お母さんの手紙はもういらないって。
どうしてですか?お母さんは迎えになんて来ない。
私は捨てられたんだって。
だからもう読みたくないって。
それからはもうお母さんの話は一切しなくなりました。
そんな事があって12歳になった小学校6年生の時養子縁組が成立してここを出ていきました。
そうですか…。
でもそれからも誕生日になるとこの手紙がここへ。
捨てるに捨てられなくて…。
中身を拝見します。
どうかしたんですか?目がチカチカします。
えっ?
(携帯電話の着信音)あっ…ちょっと失礼します。
もしもし万城目です。
防犯カメラに映っていた東堂美月の正体が判明した。
えっ!?ああ…ちょっとお待ちください。
ちょっと席外します。
失礼致しました。
で正体って?東堂美月は偽名。
本名は松田佳子42歳。
派遣社員として働いていた会社を3カ月前に辞めてからホスト通いにはまっていた事がわかった。
松田佳子は金づるを見つけたとホストに話していたらしい。
その金づるというのが天野陶子かもしれん。
これから立花たちに松田佳子の行方を追わせる。
そっちの状況はどうだ?こちらにも進展がありました。
今から署に帰って報告致します。
わかった。
よろしく頼む。
はい。
失礼致します。
お待たせしま…。
あれ?百野さん?あっ…ありがとう。
(九十九)はあ…。
百野さんがいなくなった!?そうなんですよ。
電話にも全然出なくて。
養護施設で美月さんからの手紙を一緒に見てたんですけどね。
あの人は時々暴走するところがあるからな…。
俺からも電話してみる。
お願いします!はあ…。
目がチカチカします。
句読点が多すぎます。
まるで夏男くんの文章を読んでいるようだ。
目がチカチカする…。
わかった…。
(携帯電話の着信音)置いていってるし…。
おい万城目!あれ?いないし…。
人は誰しもが欠点を持っています。
私もそうでした。
幼い時から家庭環境は良くなく自分は欠陥品だこんな自分が何をやってもうまくいかないだろうとネガティブな発想ばかりしていました。
しかし人は必ず変わる事が出来ます。
今を恐れずにどんな事にも挑戦していく事。
それが成功への第一歩だと私は信じています。
以上で終わります。
ありがとうございました。
(拍手)なんであなたがここに?
(拍手)あの…。
10人以上の前で話す事は小学6年の夏以来なるべく禁じていました。
しかし今の講演を聴きのちほど2人きりの場でお話ししようと思っていた事をこの場で話す事に挑戦します。
なんなんですか?
(ざわめき)天野陶子さんどうやらやってしまいましたね。
あなたが坂本菜摘さん殺害に関わっていた事は明白です。
(ざわめき)
(沙織)百野さん!
(沙織)困ります!出ていってください!事件直後秘書の沙織さんから事情を聴いていた時あなたは沙織さんをかばうように現れました。
沙織さん午後からの打ち合わせ予定中止の連絡した?あっすみません。
まだ…。
何やってるの。
早くして。
はい。
お時間取らせません。
沙織さん準備をお願い。
(沙織)わかりました。
沙織さんに嘘の証言をさせた時もやはりあなたはかばいに来ました。
どうして嘘の証言をしたんですか?私がお願いしたんです。
それでわかったんです。
あなたたちは共犯関係にあり夫である天野翔平に罪を着せようとしたのだと。
ちょっと待って。
私たちが犯行に関わっていたならなんで嘘の証言なんかする必要があるの?最初から夫があの部屋から出てきたって言えばよかったじゃないですか。
それは夫をかばう妻を演じる事で疑いの目を避けようとしただけの話です。
菜摘さんを殺害したのはあなたです。
(ざわめき)凶器に使われた手提げ金庫の角に不自然な指紋が付着していました。
調べればあなたのものと判明するはずです。
そしてこれは事件当日の天野陶子さんの通話記録です。
10時45分37秒あなたからの着信があります。
あの日あなたはあの殺害現場で菜摘さんとコーヒーを飲んでいた。
しかし些細な事で口論となりあの手提げ金庫で背後から頭を殴りつけた。
ああーっ!
(殴る音)我に返ったあなたはすぐに陶子さんに連絡を入れましたね?陶子社長…私とんでもない事…。
わかった。
大丈夫よ。
そんなあなたの前に夫の天野翔平が現れました。
その時にとっさに思いついたんです。
夫に罪を着せようと。
そして10時46分52秒今度はあなたから沙織さんに電話を入れてその後の指示をしました。
金庫の鍵を開けてその場を離れて。
10時59分に控室に私を呼びに来たふりをして遺体を発見するの。
そのあとすぐに警察に連絡を入れて。
あなたの予想どおり天野翔平は金を盗み部屋を出ていき…。
10時59分それを見届けたあなたは陶子さんの指示に従ってあの部屋に行きいかにもその時遺体を発見したかのように警察に連絡を入れました。
そこであなたは部屋に入り天野翔平を犯人に見立てるための細工を施したんです。
しかしここで最大の疑問にぶつかりました。
あなたはどうして赤の他人である沙織さんをかばう必要があるのか?そこが解明出来なければこれはただの空論に過ぎません。
その謎を解く鍵は3カ月前に発見された…。
あっ…。
(舌打ち)その謎を解く鍵は3カ月前に発見された白骨遺体に隠されていました。
やめて…。
武山沙織さんあなたは15年前突然姿を消した東堂美月さんの娘…。
東堂奈緒さんですね?
(東堂美月)奈緒ちゃん!
(美月)よいしょ。
じゃああっち行こうか。
えっ?…はい。
12歳の時に武山家に養子に入った事で名字が変わりその後名前も奈緒から沙織へと改名していた。
いつまで経っても迎えに来てくれない母親を次第に憎むようになっていたから。
でもねあなたのお母さんは迎えに来なかったんじゃなくて迎えに来られなかったの。
えっ?あなたのお母さん東堂美月さんは…。
もうやめて!陶子社長…?ごめんなさい…。
私が…あなたのお母さんを殺したの…。
15年前私と美月は同じ洋菓子店で働いていた。
美月はみんなに愛されていた。
私もそんな彼女が好きだった。
(陶子の声)その頃洋菓子コンテスト用の作品を作ってたんだけどうまく出来なくて…。
(陶子の声)そんな時…。
どう?すごく美味しい。
そうでしょ?椎の実とパンの耳を使ってみたの。
うちお金なかったからよくどんぐりを拾って食べてたからそこから思いついたの。
そう。
ねえこの商品一緒に売り出さない?そうね。
だけど私は美月が考えたその試作品をコンテストに…。
(美月)これ私が考えたやつだよね!?うちが貧しかったから椎の実とパンの耳を使ったって私が言った事だよ!ごめん…。
黙って出すなんてひどいよ!一緒にお店やろうって言ってたのに…。
こんなやり方間違ってる。
コンテストの主催者に正直に話して!美月!陶子が言えないなら私が言う!ちょっと待って!美月!
(美月)ちょっと…離して!
(陶子)待って…。
(美月)ちょっとどいて!
(陶子)美月待って!
(美月)やめて!
(陶子)ちょっと話聞いて!
(美月)離して!主催者に言ってくる!
(陶子)行かないで!行かないでったら!
(頭をぶつける音)
(美月)うっ…!美月…。
私何もかも失うのが怖くて…。
それで鹿間の山中に遺体を埋めたんですね?嘘…。
だって誕生日の日にはお母さんからずっと手紙が届いてたんです!あの手紙は陶子さんが美月さんのふりをして書いてたの。
ずっと私の事をだましていたんですか?コンテストで入賞した時貧しい家庭で育ったから出来たと嘘のコメントをした事であなたは美月さんが歩んだ人生を生きなければいけなくなった。
あの自叙伝は美月さんの人生を盗んだからこそ書く事が出来たものです。
ごめんなさい…。
本当にごめんなさい…。
許せない…。
母の命だけじゃなくて人生まで奪うなんて!あなたは沙織さんに手紙を送り自分のそばで働かせ今回の事件では共犯にまでなった。
沙織さんを助け贖罪を続ける事で殺人という大きな過ちを隠そうとした。
それはあなたにとって取り返しのつかない欠点です。
本当に必要な事は罪を認めて償う事。
欠点を受け入れて犯した罪を一生涯心に深く刻まれる傷として欠点と共に生きていく事だったのではないでしょうか。
ご清聴ありがとうございました。
えっ?
(三竿)坂本菜摘を殺した動機は?私は…陶子社長を尊敬していたので菜摘さんが不倫をしていた事が許せませんでした。
だから…。
(菜摘)知ってるよ〜。
あなた母親に捨てられて就職も決まらず陶子社長に拾われたって。
もしかして陶子社長の事ママだと思ってたりして。
フフッ…気持ち悪っ!
(立花)それでカッとなって殺害したんですか?ごめんなさい…。
美月さんと同級生?そう。
松田佳子は中学の同級生だったんだと。
だからあの自叙伝を読んで天野陶子の嘘を見抜き金を強請った。
ホスト遊びで金が回らなくなったんだと。
何をやってるんだか…。
人それぞれ欠点もいろいろありますね。
どうせ将来は就きたくもない仕事に就くのだ。
それまで夢ぐらい見ようじゃないか。
夢に向かって走れ!おしまい。
(拍手)内容はともかく雰囲気はいいんじゃない?うん!今までで一番聞きやすかった!
(橋本)悪くないぞ。
信じられないよ。
あのお前がみんなの前で話す日が来るとはな。
つい先日大勢の前で話した事でスピーチ嫌いを克服出来たみたいで。
なんか泣けてきた。
人って成長するのね。
ああ…。
頑張って!うん。
(夏男)おじさんなら出来るよ!
(拍手)そろそろ時間ですかね?
(立花)今日でしたっけ?百野さんのスピーチ。
いいなあ俺も聞いてみたいなあ百野さんのスピーチ!フフフ…。
おい!百野さんもう出たのか?ええとっくに。
しまった…。
まずい事になった…。
百野さん!やっちゃいました!間違いだったんです。
すぐに撤退しましょう。
どういう事ですか?広報課のミスだったんです。
母校から依頼を受けたのは百野さんじゃなくて交通課の千野さんだったんです。
今頃交通安全についてお話ししてるはずです。
さあ戻りましょう。
冗談じゃない。
僕は今日の日のために血のにじむような練習をして完璧に仕上げてきたんです。
あの…まさかとは思いますけれどもスピーチ嫌いの欠点を克服したとか思ってないですよね?したじゃないですか。
あの聴衆の前で見事に僕は…。
いやいやいやいや…!途中でシャツのボタンを閉め直してたじゃないですか。
あれ私が行かなかったらもうグッダグダになっちゃって事件解決してませんよ。
今まで再三にわたって言い続けてきましたが人の話を遮らないで…。
はいはいはいはいわかりました。
はい!戻りましょう。
かゆい…ものすごくかゆい…。
だから我慢しないでかけばいいじゃないですか。
断固拒否します。
かけば君に負けた事になる。
2018/02/04(日) 10:00〜11:50
ABCテレビ1
日曜ワイド「欠点だらけの刑事」[デ][解][字]
小日向文世主演の新作ミステリーが誕生!!100以上の欠点を持つ刑事・百野冬美男が、その欠点から芽生えた“唯一無二の観察眼”を駆使して事件の謎を鮮やかに説く——!!
詳細情報
◇番組内容
百野冬美男(小日向文世)は凄腕の刑事だが、自分が決めたルールを破ることができない不器用な男。別れた妻・紗代(西尾まり)と、再婚相手の橋本岳太郎(大谷亮介)が営む鍋料理店の2階に住んでいる。これまで単独行動を認められていたが、年下の上司・九十九健作(林家正蔵)から、生活安全課出身の刑事・万城目千鶴(森口瑤子)とペアを組むよう命じられ…大雑把な性格の千鶴に百野はイライラするが、千鶴もまた細かい百野に辟易として…
◇番組内容2
その矢先、洋菓子のプロデュース会社を営む天野陶子(高橋惠子)のセミナー会場の楽屋で、彼女の部下・坂本菜摘(芳野友美)が殺害される。第一発見者の秘書・武山沙織(土居志央梨)は事件直前、陶子の夫・翔平(比留間由哲)と菜摘が抱き合っているところを見たと証言する。なんと、翔平は社員の飯塚妙子(海老瀬はな)とも不倫関係にあるらしい。だが、百野は突然、沙織が嘘をついていると言い出して…!?
◇出演者
小日向文世、森口瑤子、林家正蔵、今野浩喜、西尾まり、大谷亮介、南岐佐/高橋惠子、土居志央梨、比留間由哲
◇スタッフ
【脚本】徳永友一
【監督】近藤一彦
◇おしらせ
☆番組HP
http://www.tv-asahi.co.jp/nwide/
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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