Webの書き手にいま、求められること。

  • &マガジン5周年記念セミナーレポート(後編)
  • 2018年2月6日

 インターネットを使えば、だれでも発信できるような、便利な時代に生まれて。十数年前では埋もれていたかもしれない小さな言葉が、今では本や雑誌よりも影響力を持つことさえあります。

 その反面、Web上に積まれていくコンテンツは、その質を保ちにくいのも事実。全体としての信頼性やイメージはまだ発展途中にあると言えるかもしれません。

 1月26日、朝日新聞デジタルのWebマガジン『&M』創刊5周年を記念して、Yahoo! JAPANのコワーキングスペース「LODGE」で開催されたセミナーには、そんなWebコンテンツ作りに興味を持つ110人が来場しました。

  

 登壇されたのは、読者やメディア関係者の間でコンテンツが高く評価されている、カルチャー・クリエイティブシーンを伝えるWebメディア『milieu(以下、ミリュー)』編集長の塩谷舞さん。

 テーマは「いま求められるWebコンテンツの作り方と届け方」です。

 前半(レポート記事:「伝えたい」ものを「届けたい」ところへ。“無人島でお祭り”にならないWebコンテンツづくり)では、サプライズゲストのゆうこす(菅本裕子)さんも交えて「SNSを使った発信の仕方」を学び、後半からは「いまのWebライター業界」の話へ。

 来場者の中には、Webライター・編集者も多く、それぞれが自分と重ね合わせながら、真剣な表情で塩谷さんの声に耳を傾けます。

  

Webライターの現状

 オウンドメディアブームに伴って、Webライターは慢性的に人手が足りず、未経験でも参入しやすい職業になっています。

「似たようなスキルを持った人が何万人、何千人といる。本来、専門職であるはずのWebライターという職業が、なかなかそう認知されない状況になりつつあります

  

 社内にも社外にもノウハウがないまま、低コストで作られた記事が溢れていく。本来あるべき影響力をメディアが持たず、読者を連れてきてくれるインフルエンサーに、メディア側が寄りかかる構図も増えているといいます。

 すでにいくつもネット上に情報がある生い立ちや、仕事を始めたきっかけから取材されるケースも多く、似たような記事が量産されるだけでどれも“バズ”らない。

 また、スキルのないライターが書いた誤字脱字だらけの原稿を、タレントやインフルエンサー本人が時間をかけて校正するというケースも少なくないそうです(しかも、その多くは無償である…)。

「『ライターです』『Webメディアです』と言うと、ぺしゃんと心を閉ざされてしまうような状況になる前に、個人も企業も、ちゃんと記事のレベルを上げて、メディアと言って恥ずかしくないレベルの拡散スキルを身につけなければいけないと思います」

忘れてはならないディレクション

 続いて話に挙がったのは、いい記事を作るのと同じくらい、忘れてはいけないというWebディレクション業務について。

・デバッグ、マルチデバイス対応、サーバーの許容人数の確認、SNS連携の確認 etc.

 これらはコンテンツを支える、大事な土台の部分。Webライター、編集者、ブロガーは、自分たちでこの土台を固める必要がありますが、確認が抜け落ちているWebメディアも数多くあるそうで……

「使い勝手が悪く、読者にストレスを与えてしまったり、サーバーが落ちちゃったりすると、せっかく記事が届いても見てくれません。島でお祭りやってるから来てー!って言ってるのに、いざ行ったら地盤がゆるゆるで100人乗ったら沈む、みたいなサイトがWeb上にはゴロゴロあります」

(こちらの内容については、「WEBメディアでの情報発信をする前に、気をつけるべき26のポイント」にも詳しく書いてあるとのこと。要チェック!)

前半では、拡散力をもたないWebメディアを「無人島でお祭りを開いている状態」と例えました

好きなことで人を喜ばせる

 元々は、自身のブログに書いたイベントレポートがきっかけで、書き手として注目されるようになったという塩谷さん。

「バズで人生変わるなあと思って、その後、イベントレポートをたくさん書きました。そのうち仕事として、レポートブログを書いてくださいと言われるようになり、最初は1万円、2万円と原稿料をいただいて、今では40万円になりました……(小声)」

 同じように、ブログがきっかけで書く仕事のオファーが来た例がこちら。

・近藤哲朗(チャーリー)さん→note記事「ビジネスモデル図解シリーズ」から書籍化

・最所あさみさん→note記事『【図解】赤文字・青文字はもう古い。細分化される私たちの新しい「カラー」』などからNewsPicksの連載

・はましゃかさん→ブログ「かわいいと言われて吐き気がしたことがあります」から『ar(アール)Web』のコラム連載

 いずれも、元々好きでやってきたことが仕事につながったケース。それぞれの記事が来場者のなかでの認知度も高く、名前が出ると反応が見え、一度のバズが生む効果を改めて感じます。

 彼ら彼女らの共通点として挙げられるのは、「専門性があり、キャラ立ちしていて、情報が有益である(もしくはエンタメ性が高い)」こと。なおかつ、無料で公開しているということもポイントです。

 noteの有料マガジンを運営している塩谷さんは、有料にすることにはメリットとデメリットの両方があるといいます。

「最初から有料にして閉じてしまうと、非常に狭い世界になってしまいます。無料で公開するのはもったいない、と言われたりもしますが、それがあとから仕事に繋がることもあるので、最初は無料でどんどん情報を出してみてください」

インターネットでいま求められる人材

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 いま、ニーズがある発信者として例えられたのが、TBSテレビ「マツコの知らない世界」に出演しそうな人

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