リニア新幹線「2027年開業」が難しすぎる理由

開業遅れると全国のプロジェクトが大混乱?

昨年12月25日未明に公開されたリニア品川駅の建設現場(撮影:尾形文繁)

2027年の開業まで残り10年を切ったリニア中央新幹線。すでに駅舎やトンネルなどの建設が進むほか、品川や名古屋といったリニア新駅の予定地周辺では、駅前再開発や観光PR、企業誘致など開業を見越した動きも盛んだ。沿線自治体は、新たな“夢の超特急”の到来を指折り数えて待っている。

ところが、ここへ来て2027年の開業に間に合わないのでは、という懸念が持ち上がっている。発端は、昨年末に浮上したリニア工事の談合疑惑だ。東京地検特捜部や公正取引委員会が大手ゼネコン各社を家宅捜索した。

捜査を受けても現場の工事が止まるわけではないが、JR東海が契約手続きの厳格化を表明するなど、今後締結される工事への影響を懸念する見方が上がっている。リスクを警戒して工事の受注に及び腰になるゼネコンが出てくる可能性もある。

「何が起こるか分からない」南アルプス

懸念材料は談合疑惑だけではない。2027年開業というスケジュールにはいくつものハードルが待ち受ける。第一の関門は、工事が滞りなく進むかどうかだ。

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昨年12月末時点ですでに契約が締結されているリニアの工事契約を見ると、竣工が最も遅い工事は南アルプストンネル(静岡工区および長野工区)で2026年11月。開業予定のわずか1年前だ。この2つの工事以外にも開業ギリギリに竣工する大工事が散見されるほか、いまだ受注契約に至っていない工事も数多い。

トンネル工事に10年もの期間がかかるのは、南アルプスの掘削が「前人未踏の領域」(ゼネコン幹部)と言われるほどの難工事だからだ。土被り(地表からトンネルまでの距離)が最大で1400mという前例のない環境で、土中に何が眠っているかも「掘ってみなければ分からない」(別のゼネコン幹部)。

トンネル工事において、想定外のアクシデントに見舞われることは珍しくない。工事関係者の脳裏に焼き付いているのが、岐阜県内を通る東海北陸自動車道の「飛騨トンネル」だ。2005年の愛知万博に間に合うように工事がスタートしたものの、相次ぐトラブルによって工事が遅れに遅れた結果、開通したのは万博開催から3年も経った08年7月だった。

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  • NO NAMEc5159d22c6bd
    中川村はリニアの沿線ではないのでリニアのトンネル工事が行われているはずはありません。地図を調べればすぐわかります。崩落があったことは事実ですが、原因になったといわれるトンネル工事は県道の改良工事の一環です。道路改良はリニアの本線トンネルの掘削残土を運搬するためではあるのですが、地元の長年の要望でもあったもの。南アルプスの本線トンネルとは距離的に離れているし、地質的にもことなります。誤解を招く表現だと思います。
    up20
    down1
    2018/2/6 10:01
  • NO NAME140abf88244f
    開業が遅れるのは別に悪いことではない。 突貫工事で作り後で事故を起こされたのでは、たまったもんではない。 試運転は慎重にやるべき、たしかに新幹線はいままでのノウハウがあるから、短い期間で開業出来た。それでも北陸新幹線は雪の影響を見るため二冬掛けて慎重に試験をかさねた。 全く未知の領域である500㎞/hの高速長距離運航はノウハウがないのだから、時間かけてよい。 あと話は変わるが政治家の皆さんはこの事に関して口出ししないでもらいたい。 それが嫌なのでJR東海は全部自己資金でやると言ったのに、無利子でお金貸すからと大阪開業の前倒しを迫った。 これでは何のために国鉄を分割民営化したのか解らない。
    up16
    down2
    2018/2/6 10:06
  • NO NAME6466c2e700c1
    この記者が論評するには、テーマが大きすぎる。もっと小さいテーマを対象にした方がよい。
    up18
    down6
    2018/2/6 08:51
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