女児避難間一髪 陸自ヘリ墜落 父親「無事でよかった」 泣く娘に声掛け抱きしめ
大きな爆発音とともに、ヘリコプターが真っ逆さまに住宅へと突っ込み炎上した。佐賀県神埼市の住宅街に5日、陸上自衛隊のAH64Dヘリが墜落した。当時、直撃した住宅には11歳の女児がいたが、避難して間一髪で助かった。残骸が飛び散った周囲には小学校や認定こども園があり、一歩間違えば大惨事になった恐れも。「自分のところに落ちてくると思った」。事故を目撃した住民たちは恐怖で声を震わせた。
自衛隊ヘリコプターが墜落した神埼市千代田町の住宅は、会社員川口貴士さん(35)の一家4人が暮らしていた。
川口さんの話によると、事故当時、自宅には千代田中部小5年の長女、來愛(くれあ)さん(11)がいた。來愛さんが学校から帰宅後、1階リビングで宿題をしようとしていたところ、突然、大きな音がした。來愛さんはすぐに自宅外に飛び出した。ヘリは、リビングとは反対側の2階屋根に衝突する形で墜落した。
勤務先から急いで自宅に戻った川口さん。現場で対面した來愛さんは泣いており、ショックですぐに言葉が出ない状態だった。「無事でよかったね」。川口さんがそう声を掛けて抱きしめると、來愛さんは少しほっとした表情をみせたという。ヘリの破片が背中に当たったのか、來愛さんは腰痛を訴え、近くの病院で治療を受けた。
長男(13)は当時、中学校にいて、煙を見て慌てて帰宅したという。川口さんは勤務先から帰宅した妻(36)、長男、隣に住む両親と一緒に近くの知人宅に避難。黒煙が上がる自宅を映すテレビのニュース画面を食い入るように見詰めた。
自宅上空を自衛隊ヘリが行き交うのは日常の光景だった。「まさかうちに落ちるなんて夢にも思っていなかった。とにかく家族が無事でよかった」。取材に対し、そう気持ちを落ち着かせるように話した。
◇ ◇
■オスプレイ配備影響か
佐賀県神埼市の住宅街に自衛隊ヘリコプターが墜落した事故は、防衛省が進める佐賀空港への陸自オスプレイ配備計画の行方にも影響を与えそうだ。
山口祥義知事は5日、県庁で記者団の取材に対し、「現場が住宅地で、近くには小学校や認定こども園がある。極めて憂慮すべき状況だ」と述べた。配備計画への影響については「そこにまだ考えが至らない」と答えるにとどめた。
山口知事は昨年7月、計画受け入れに前向きな姿勢を示した後、米軍オスプレイの相次ぐ事故を受けて「安全の問題は重要。それがはっきりするまで進むとは考えられない」とし、判断を先送りしている。
計画では空港西側に2019年度以降、陸自オスプレイ17機や墜落した機体が所属する陸自目達原(めたばる)駐屯地のヘリ50機を配備する。
「佐賀空港への自衛隊オスプレイ等配備反対地域住民の会」の古賀初次会長は「ついに佐賀でも墜落事故が起きた。反対運動を強める」。計画推進を求める佐賀県議会の自民党県議は「計画への影響は避けられない」と話した。
=2018/02/06付 西日本新聞朝刊=
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