納入業者へのアンケートで分かる
ドラッグストアやホームセンターは納入業者に不当な取引を求める割合が高い懸念がある--。公正取引委員会が大型チェーン店の納入業者に行ったアンケート調査で、こんな結果が出た。ドラッグストアでは「売れ残りの返品」、ホームセンターでは「協賛金の負担」を求められるとの回答が多く、独占禁止法で規制されている「優越的地位の乱用」にあたる可能性もある。公取委は業界団体に取引適正化の徹底を促している。
アンケート調査は昨年7~8月、大型チェーン店の納入業者に実施し、全国8201業者(延べ1万9289取引)から回答を得た。その結果、全体の15.9%にあたる延べ3063取引で優越的地位の乱用の可能性があった。
不当な取引内容では、業務に直接関係ないイベントやセールなどの費用負担を求める「協賛金の負担」が全体の6.7%で最多。次いで、売れ残りなどを理由にした商品の「返品」が6.4%、取引価格を一方的に決定する「買いたたき」(3.6%)と続いた。
業態別の集計では、ドラッグストアで28.8%、ホームセンターで22.6%の納入業者が問題となり得る取引があると回答。ドラッグストアでは「返品」の回答割合が17.3%と全体や他業態に比べ突出して多く、ホームセンターでは「協賛金の負担」の割合が13.8%と他業態より高かった。
公取委が聞き取りしたところ、ドラッグストアの納入業者は「薬品業界の返品の慣習を、他の商品にも適用している」との指摘があった一方、「返品を拒めば陳列スペースを減らされる」との不安の声も上がった。ホームセンターの納入業者からは「ポイント還元セールのたびに協賛金の要請がある」「物流センターの利用料の支払いを求められる」などの指摘があった。
公取委によると、「返品」は一般的な商習慣である場合を除き、条件を事前に決めない場合は違法取引の可能性がある。「協賛金の負担」も目的や負担額、算出根拠を事前に明確にする必要がある。違法取引にあたるかどうかは公取委が個別審査する必要があるが、公取委は調査結果を業界団体に周知し適正取引に努めるよう要請している。【中井正裕】
優越的地位の乱用
取引相手よりも有利な立場を利用して、一般的な商習慣と比べて不利益を与える行為。独占禁止法で規制されている。公正取引委員会はガイドラインで、押し付け販売▽協賛金の負担要請▽不当な返品▽従業員の派遣要請▽取引価格の一方的な決定(買いたたき)--などを不当取引の類型として示している。公取委が独禁法違反と認定した場合、違法取引の差し止めを求める排除措置命令を出したり、違法取引の総額に応じて課徴金の納付を命じたりすることができる。