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『バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさん』ねこます氏にインタビュー! アバター文化は世界を変えるのか?

 「どうもー、バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさんでーす!」
 「本物のねこます様ですか…!お会い出来て光栄です!」

インタビューに応じるねこます氏

インタビューに応じるねこます氏

 2018年2月1日、寒気が猛威を振るいインフルエンザも流行る厳しい環境とは無縁の、暖炉で薪の爆ぜる音が響く豪奢な会議室。ここは「VRChat」という、仮想空間でコミュニケーションを取れるソフト内で用意された部屋の一つである。この建物は「The Hallwyl Museum」というストックホルムの美術館を再現している。
 筆者の目の前では狐の耳を付けた女の子のアバター(外見)をまとった人物が、まるでそこで生きているかのように身振り手振りを行っている。
 この人物こそ、『バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさん』として一躍時の人となった「ねこます」氏である。
 現在、多くのメディアから注目を浴びる同氏に、これから発展の予想されるVR(バーチャル・リアリティ)技術や仮想世界におけるアバター文化について語っていただいた。

仮想現実への馴れ初めと予想外の反応

 ――本日はインタビューに応じていただきありがとうございます。まず、ねこます様はどうしてVR界隈に興味を持たれたのでしょうか。

 高校を卒業し専門学校に行っていた時期がありまして、「.hack//」や「ソードアート・オンライン」などの仮想世界に入り込む作品が好きでした。そんな中、2012年にOculus社(VR機器の開発メーカー)から『DK1(VR用ゴーグルの試作版)』がキックスターターで資金を集めているという話が出た時に、その情報だけは仕入れていました。そろそろ自分も始めないと乗り遅れると思って、去年にVR製品を購入しました。

 ――現在バーチャルYouTuberとして動画を公開し、コミュニティの登録者数も20万人を越えました。最初からヒットする見通しはありましたか。

 動画についてはある種、ポートフォリオ(自己作品集)として見せたいと思っていました。技術的な話をメインにするのではなく、バーチャルYoutuberであるキズナアイさんの様な会話形式で紹介した方が訴求力が高いと感じ、製作をスタートしました。動画はゲームの開発などに比べて更新のサイクルが早いので、暫時最新の技術をアピールする事が出来ます。動画の登録者数が伸びたのは嬉しいのですが、あくまで主目的はポートフォリオとして動画を作るというところにあります。

広がるVRブーム

 ――昨今VRがブームとなっていますが、その主な牽引役はどこにあるのでしょうか?

 元々他の分野でVRを広める活動をしていた個人や団体が下地を築いてきたというのが大きいでしょうか。またVR ZONE SHINJUKU(新宿にあるVRアミューズメント施設)やPlayStation VR(プレイステーション4で使用できるVRゴーグル)が普及してきたのも一因ではないかと感じています。もちろんバーチャルYouTuberの活動により、VRそのものの知名度が上がった点も多少はあるかもしれません。

 ――製品が登場した時に比べて、今では比較的安価で流通していることも普及に一役買っていると見ていますか?

 最初は10万円代という価格の製品が多かったのですが、現在は値下げが行われていて、その中でもOculus Rift(VRゴーグルの製品のひとつ)は現実的な値段になったと考えています。技術に対するコストパフォーマンスは高いのではないでしょうか。

 ――現在は「スマホでVR」という触れ込みの製品も多く出ていますが、今後VRのムーブメントの中心になるのはどういった要素と考えていますか。

 「スマホでVR」という表現については、一つの到達点を迎えていると感じています。Oculus RiftやHTC Vive(VRゴーグルの製品のひとつ)を経て、今はこうしてフルボディトラッキング(全身の動きをパソコンに認識させる方法)を行っていますが、その機材を揃えたり、高性能なパソコンを揃えたりと、道具のハードルが非常に高く、またソフトウェアの知識も無いといけません。ハイエンドVR(高品質なバーチャル・リアリティ)はギーク(パソコンに詳しい人を指す英語のスラング)のおもちゃである感覚はありますから、パソコンでもスマホでもない「他の機材を使わない、独立して動かせるVRゴーグル」が出てきたら、そこが中心になるのではないかと。例えば、携帯のキャリア会社のところにそういった機械が置かれて、購入契約を結んだ初日に「電源を入れて機材を被れば即座にVRが利用出来る」という形になれば爆発的に広まるのではないでしょうか。

『アバター』文化と仮想世界の価値基準

 ――脚光を浴びるアバター文化ではありますが、今後仮想世界におけるアバターを中心とした文化はどう展開していくのでしょうか。

 Twitterにおけるアイコンに近い概念となっていくと考えます。Twitterではユーザーが、自分の好きなキャラクターや描いたイラスト、写真等をアイコンとして載せていますよね。Twitterという平面の世界でのアバターがアイコンとするなら、それが3次元になるだけの話ではないでしょうか。

 ――仮想世界のアバター文化の中では、アバターを着ているユーザー(使用者)その物が重視されるのでしょうかか、それともアバターそのものが重視されるのでしょうか。

 3Dのメディア世界、つまり仮想世界における最上位に位置する要素は間違いなくアバターの「見た目」であると思います。その奥にいるユーザーの人格や性格といったものは、少なからず外見であるアバターから影響を受けると考えています。実際のところ、このアバターにユーザーの内面が「引きずられる」力はとても大きく、そのために仮想世界ではユーザーの内面性ではなく、アバターそのものに価値が置かれているところはあります。

 ――Twitterで「スキャニングした自分の姿をVRChatのアバターにする」という話が一時期、話題になりましたが、今後、現実の自分の姿をスキャニングしてアバター化するということは一般化していくのでしょうか。

 そちらの方が主流、あるいは半々になってくると思います。Twitterで自分の顔をアイコンにするのと同じような話ではないでしょうか。全身をスキャンするのはとても高額な方法になりますが、iPhoneやHoloLens(Microsoft社の提供するVR機器)などで、首から上はスキャンした自分の顔の3Dデータを使い、首から下は出来合いの3Dアバターの体を設定する方式が来るでしょう。また最近では、人工知能を用いて2Dの写真データから3Dの骨格データを形成することも可能となっていると聞きます。この2つのアプローチから一般化するのではないでしょうか。

今後世界は現実とバーチャルを融合させる方向にシフトしていく

 ――今後の製品開発はAR(拡張現実)やMR(複合現実)の方にシフトしていくのでしょうか。

 Microsoft社がWindows Mixed Reality ヘッドセットというものを開発しています。これだけの大企業が既にそういったものを普及させるべく動いており、またiPhoneのARToolKitなどはMRの前提となる機能をiPhoneに搭載したというだけではないかと考えられます。今後世界は現実とバーチャルを融合させる方向にシフトしていく、むしろ「向かわざるを得ない」と表現される流れが生まれるのかもしれません。

 ――これからの社会の中でVRやAR、MR技術は中核を為していくのでしょうか。

 その可能性は大いにあり得ます。例えばTwitterで人気になるために奇行をする人は、Twitterが存在するからこそ注目されるような行動を取っていますし、Instagramがあるからそれに沿って“インスタ映え”する価値基準や生活をしている人も一定数存在します。それと同じように、もしVR技術が社会の中核を担うようになれば、行動や価値基準に新たな変化が起こるのではないでしょうか。

 ――実際のところ、VRChat内では価値基準が既にその環境に最適化しているという状態でしょうか。

 最適化、というとそうかもしれません。やはりこの世界で過ごしていく中で分かった事として、VRChatのコミュニティ内では既存の段階を“飛ばした”会話などが行われていますから、ある種価値基準を超越していると言えますね。

 ――それでは最後に、VR技術やアバター文化について興味がある方に向けて一言アドバイスをお願いします。

 大変かもしれないですけれど、今一番安く買える「未来」だと思います。

フルボディトラッキングを存分に活かすため寝転がるねこます氏

フルボディトラッキングを存分に活かすため寝転がるねこます氏

 その後、会議室内で自由に寝転がったりするねこます氏に連れられ、VRChat内の会議室を抜け出した。幾つかの某ゲームソフトや映像作品を模したワールドを案内される中で、氏は今後の3D文化は、「閉じていくのではなく、オープンに開いていく世界」であってほしいと語っていた。
 現在、VRChatではその在り方をめぐり、幾つかの問題も散見されているが、そうは言っても、無限に広がる仮想世界の前では、いずれもが些事に思えてきてしまうほどには先進的な、ある種インターネットの黎明期に立ち返るような流れに、筆者には思えてくる。

【 ~ [100%] ~ 】

 筆者はVR機器を持っていないため平面のモニター越しではあったのだが、インタビューを行ったねこます氏をはじめ、これを両目で見ることの出来るVR機器のユーザーには一体この世界がどう見えているのだろうか。
 われわれが普段見る世界の在り方とは違ったものがそこに見えているのだとしたら、ぜひともそこに「入門」してみたいと感じさせる内容であった。
(聞き手・市村龍二)

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