映画『美少女戦士セーラームーンR』を観て吐くほど泣いた俺を笑ってください。
そもそも、セーラームーンに対しては「色分けされた複数のセーラー服の女がなんらかの敵と戦う」程度の認識しかなく、それぞれのセーラー戦士がどんな性格なのかもほぼ知らない。そんな俺がこんな一昔前の女子供向けのアニメを楽しめるのか…と、最初はむしろ小馬鹿にしつつも、付き合いで仕方なく観ることにしました。
……結果、超最高でした。名作中の名作。死ぬ前に10本映画選べって言われたら入れる。
まず、60分っていう決して長くない時間のなかで、セーラー戦士みんなの誰がどういう性格でどういう立ち位置なのかっていうのが、めちゃくちゃわかりやすく描かれてて。
主人公の月野うさぎ(セーラームーン)は外見どおり、いっつもおちゃらけてバカやってるんですよ。それでボーイフレンドのまもちゃん(タキシード仮面)のことが大好き。
青髪ショートカットの水野亜美(セーラーマーキュリー)は頭が良いみんなのまとめ役。なんか急に手のひら型のパソコン?みたいな機械取り出してピコピコやりながら「まだよ!人間を操っていたエナジーの発生源は、まだ消えていないわ!」とか言ったりひとりだけスカウターみたいなメカ装着してたりする。
黒髪ロングの火野レイ(セーラーマーズ)は神社の娘なんですけど、みんなで作戦会議するときにたぶんいっつも集まってる。巫女だから変身してないのになんか御札とか使って敵を成仏させたりとかする。1人だけハイヒール。
ポニーテールの木野まこと(セーラージュピター)は背高くてちょっと声も低くて、敵に向かって「女の子暴力振るうなんて最低だぞ!」ってタンカ切る男まさりな性格っぽいんですけど、ちびうさっていう子供にお弁当作ってあげたりとか、めちゃめちゃ家庭的な娘。
金髪ギャルの愛野美奈子(セーラービーナス)は紹介観た感じだと、たぶん最初は単独行動してて最後に仲間になったっぽい設定のアレ。うさぎと性格が似てていっしょにバカやってたりする。
…っていうのが、始まって10分くらいですぐわかった。構成力ハンパじゃない。今回戦うべき敵「フィオレ」も、まもちゃんが子供の頃に仲良くしてたって描写があるんですけど、たぶん昔は優しかったんでしょうね、でも明らかにTHE黒幕!みたいな女に操られてんのわかるんですよ。「ああ…のっぴきならない事情があるんだろうな…」ってのがわかるんですよ。まだはじまって20分ですからね。濃。
それで、操られたコイツが前半超強くて、一気にセーラームーン以外の4人をドガァッ!!っつってぶっ飛ばしちゃう。で、「ンフフ、まもる君を騙すお前は念入りに始末してやる、死ねぇ!!」ってセーラームーンに襲いかかるんですよ。
そしたら…来るよね〜〜〜〜、やっぱ来るよね、タキシード仮面。
「美しき花も歪んだ心で育てれば醜く染まる、そこまでだフィオレ」
とか言って、だ、だせぇぇ〜〜〜〜〜〜。でも、ダサいんですけど超カッコイイんですよ。現れるべきときに現れる。小学生の時、好きだった女子に「タキシード仮面様が好き」っつってフラれたの、今んなってやっと納得言ったよ。
「もうこんなことはやめるんだっ」ってタキシード仮面が説得するんですけど、もうフィオレはゴリゴリに操られてるもんだから「この娘がキミを騙してるんだぁ!!」って不意打ちでセーラームーンを殺そうとしてね。
「やめろぉぉぉぉ!!」
ドカァァアッッ!!
ズバァァッッッ!!
…タキシード仮面がセーラームーンかばって代わりに全身貫かれてね、フィオレがタキシード仮面抱えて消えてね。弱ぇぇぇ、弱いんだけど、そういうところなんだろうな、自分犠牲にして大事な人を躊躇なく守れるところなんだろうな俺とタキシード仮面との違いは…。
それで、回想で事故で両親を亡くした衛が病院で偶然出会った異星人がフィオレだったっていうことが明らかになって、「孤独」抱えたもの同士、短い時間でもそれはかけがえのない時間だった。そして最後に衛はフィオレに花渡すんですよ。それはフィオレにとって初めての「宝物」。
「今度は僕がいっぱい花を持って帰ってくるからね」
それだけがフィオレの生きる理由になった。そしてようやく衛に贈るにふさわしい花を見つけた。
それがもうゴリッゴリの「呪いの花」。
「キセニアンの花を手にしたとき、ふいに気がついた。衛くんをひとりぼっちにして放っておいた地球人たち。奴らは全て抹殺しなきゃいけないんだって…」
全然意味わかんねぇ……。しかも、そのキセニアンってののアジトが地球に落下してくるらしいんですけど、そうなったらもう終了。地球滅亡。まもちゃんどうこうだけの話じゃないんですよ。
いざ、覚悟決めてアジトに乗り込む5人 セーラー戦士。
着いてあっけないほどすぐ衛もフィオレも見つかるんですけど、いきなり「安心しろ、衛くんは返すが地球人は全員殺す。お前達も殺す」みたいなこと言い始めるんですよ。サイコ!どサイコ!
当然「そんなことさせるか!」つって攻撃するんですけど、フィオレ君は周りのザコいくらやっつけても本体倒さない限り無限に再生するタイプのボスで、何億匹って増殖して全ッ然歯が立たなくて、セーラームーン以外の4人は捕縛されちゃう。
「仲間が大事なら武器を捨てろ、さもなくばこうだぞ!」って4人に拷問かけて、セーラームーンに2択を迫るド畜生・フィオレ。「セーラームーン、わかってるわね…」「戦うのよ…」「地球を救えるのはアナタだけ…」とセーラームーンに「自分たちはいいから戦え」っつー4人…。
ステッキ、ボトリ…
「やめた…みんなゴメンね…あたし戦えない…みんなのこと大事だもん…」
「この…いくじなし!」
「だって…みんなが苦しむの…もう見てらんないよ…」
「お…ぉぉぉ…なんだ…あの人間たちは…この気持ちは…いったい」
「フィオレ…騙されないで…セーラームーンはアナタから衛くんを奪おうとする悪い子よ……」
「そ、そうだ…」
ババァァァァァン!!!!
超変身するフィオレ
「そうだ…僕や衛くんを一人にする嘘つきは生かしちゃおけない。
孤独が、僕や衛くんの孤独がお前にわかってたまるか、孤独を知らぬお前に。
この世に生まれたことを不幸だと感じたことのないお前たちになにが分かる。
仲間が、友達のいない寂しさがお前たちにわかるか。
誰にも理解されないものの寂しさがわかってたまるか」
…このフィオレの言葉に4人がめっちゃ反応するんですよ…。亜美はその頭の良さから周りから疎ましく思われ…まことは身体も大きくて力が強いことを理由に周りから怖がられ…美奈子はうさぎの仲間になるずっと前からセーラーVとして1人で戦ってきたことを周りから好奇の目で見られ…レイは霊感が強く、霊感少女と周りから呼ばれ気味悪がられてきた…。
みんな、ずっと1人だった……。そう、うさぎに出会うまでは。俺が冒頭で「いつもバカやってる」って言ったうさぎの底抜けの明るさ、誰とでも分け隔てなく接する優しさにみんな救われてきた…。
遊んでる時でも参考書を離そうとしない亜美に「こら!遊ぶときはちゃんと遊ばないないとダメでしょ!」と叱るうさぎ。そんな子、今までいなかった…。
「うさぎちゃん…!」
神社の仕事をしているレイに「すごーい!レイちゃんってがんばり屋さんなんだ!」と本気で尊敬するうさぎ。そうやって自分のことをちゃんと認めてくれるのってうさぎだけだった…。
「うさぎ…!」
周りから怖がられていたまことに対しても「うわー、そのおにぎりおいしそー!」と気さくに話しかけるうさぎ。「あんた、わたしが怖くないの?」「へ?なんで?」その言葉がまことにとってどれだけ嬉しかったか…。
「うさぎちゃん…!」
いくらセーラーVとして地球を守ってもバカにされることも多かった美奈子、「カンドー!あこがれのセーラーVちゃんが目の前にいるなんて!」と目を輝かせるうさぎに、なんてことないという態度を取りつつも本心は涙が出るほど嬉しかっただろう…。
「うさぎちゃん…!」
顔面ベッッッチョベチョ。もう嗚咽(おえつ)漏らすほど泣いた。もう何年かしたら30なんだけど大丈夫なのか俺。いまこうやって文章打ちながら思い出して泣いてる。でもこんなんPepperでも泣くわ。レイちゃんだけ「うさぎ」って呼び捨てにするのいいよね…。
……というのを経て、ラストはこれ以上ないくらい最高の終わり方をするので、ぜひ観ていただきたい。マジでミラクル・ロマンスです。