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自閉スペクトラム症の視覚世界をVRで体験

time 2018/02/05

この記事は約 6 分で読めます。

自閉スペクトラム症の視覚世界をVRで体験

たーとるうぃずでは、発達障害の方の視覚体験ができるVRについての海外からの情報を、これまでにもいくつかご紹介してきました。

しかしまだ、ヘッドマウントディスプレイをつけた本格的なVRの体験をしたことが私はありませんでした。

早くしてみたいと思っていたところ、LITALICO発達ナビさんからご招待を頂き、初めて本格的なVR体験をすることができました。

 

「発達ナビの運営会社である株式会社LITALICOでは、東京大学先端科学技術研究センターと情報通信研究機構脳情報通信融合研究センターとの共同研究プロジェクト、JST CREST「認知ミラーリング」に参画しております。
自閉スペクトラム症(ASD)視覚体験ワークショップを実施いたします。」

●主催:JST CREST「認知ミラーリング」http://cognitive-mirroring.org/
情報通信研究機構脳情報通信融合研究センター
東京大学先端科学技術研究センター 当事者研究分野
株式会社LITALICO

LITALICO発達ナビ https://h-navi.jp/

 

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東京大学先端科学技術研究センターにて、2/3に開催された会に取材参加させて頂きました。

事前に応募された一般の方60名も参加されています。(発達障害の子を持つお母さんと思われる方が多くいらっしゃいました。)

VR体験の前に、情報通信研究機構 長井志江 主任研究員よりこの研究についての講義を聴きます。

「自閉スペクトラム症の視覚世界を体験 〜なぜ対人コミュニケーションが難しいのかを考える〜」

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国立研究開発法人 情報通信研究機構
脳情報通信融合研究センター 脳情報工学研究室 主任研究員
長井志江 博士

 

まず、自閉スペクトラム症の方にはどのように世界が見えているのか?

Youtubeでも長井氏が公開されているこちらの動画が紹介されました。

大阪大学内の風景だそうですが、私たちが見ているのとは少し違う、いや大きく違うように見えていることがわかります。

「自閉スペクトラム症(ASD)とは、コミュニケーションが難しいなど「社会性の問題」と知られています。

しかし、ASD当事者たちの声を聴くことで、コミュニケーションに難をかかえる前に「感覚の問題」があること、そしてそれが社会性の問題につながってくることがわかってきました。」(長井氏)

そこで感覚の問題に対して支援を行うことで、結果的には社会性の問題への軽減にもつながるはずと長井氏は考えました。

そうして、ASDの方たちの視覚についての研究に取り組むことになります。

 

まず研究を進めるにあたって、大きな二つの課題がありました。次のようにアプローチしました。

 

1)主観的体験の客観的評価

視覚という当事者のみにしかわからない主観的な体験をいかにして、客観的に評価するか?

(例えば「まぶしい」と言ったときに、私のまぶしさとあなたのまぶしさでの明るさは全く同じではないでしょう。)

ASDの方の主観的な体験を客観化するために、ASDの方の視覚症状、つまりどう見えているのかを6種類に整理し、その見え方を誰にでも見えるようにした。

 

2)社会的文脈の定量化

非定型な視覚を引き起こしている社会的な文脈をいかにして定量化するか?

(例えば「部屋を暖かくして」とお願いしても人によって違います。25度と指定できれば違いはなくなります。そうできるようにするのが定量化。)

ASDの方がふだん目にするシーンを撮影。その動画に含まれている、輝度、動き、エッジ、音強度など21種類の数値化できる情報を用いる。

 

こうして、

定量化された「目に見るシーン」(社会的文脈)と、6パターンの視覚症状(客観化した主観的体験)とを用いることで実験が可能となりました。

 

22名のASDの成人の方が実験に参加しました。

29種類の各シーンの動画をディスプレイで見てもらい、どんな視覚症状が現れるのかを、6パターンの視覚症状から選び、その程度をパソコンで再現してもらいます。

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その調査の結果、ASDの方に共通して次のような見え方があることがわかりました。

 

1.スキー上など「輝度」が高いシーンでは、ますます眩しく見える。(コントラスト強調、高輝度化)

この症状の原因は、これまでの研究でわかっているASDの方特有の瞳孔サイズが大きいことによる、眩しさへの応答時間の長さや収縮率の低さによると考えられるとのこと。

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2.電車がホームに入ってくるなど「動き」があるシーンでは、色が無くなってしまうことがある。

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3.動きの激しさや音の大きさの変化が強いシーンでは、砂嵐上のノイズが見えてくる。

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そして、実験に参加されたASDの方の中には、自分がどんなときにどんなふうに見えてしまうのかに気づき、自分を客観的に見れるようになった方もいらしたそうです。

その方は、輝度が高いシーンでは自分には眩しく見えることに気付いて、サングラスを利用されるようになって過ごしやすくなったとのこと。

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長井氏はこういいます。

「ASDの方が見ている世界と、定型発達の方が見ている世界は全く異なるわけではありません。」

 

客観的な実験、研究を通じてのお話です。

発達障害のうちの子。自分の子どもでもわからないことがよくありますが、そう言われると少し安心できます。

周囲の理解や感覚に対する支援技術の開発によって、うちの子をはじめ発達障害の方たちが日常をよりよく生活できるようになればと、心から願います。

そして、自閉症スペクトラムのVR視覚体験です。

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私もヘッドマウントディスプレイをかぶり、ヘッドフォンを耳に載せ体験をしました。

私が体験したシーンは、これから外に出ていこうとする玄関にいるところでした。

少し暗い玄関が、真っ暗に見えました。

頭を上下左右に動かしても、暗いです。

そして、ドアを開けて外に出ます。

眩しい。すごく眩しいです。外は真っ白に見えました。見渡しても真っ白。

しばらくすると光が落ち着いてきました。

しかし、頭をあげて上を見ると、日陰のところには白い丸い斑点のノイズがたくさん。

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画像でお伝えすることができないので、体験頂くしかないのですが、ヘッドマウントディスプレイを通じてのVRはとてもリアルでした。(是非、ご体験を頂きたいと思います。)

理屈でわかるのとは違い、発達障害の方がふだん直面している困難や不安のわずかだとは思いますが、「感じる」ことができました。

ますますこういう体験ができる機会が増えて、多くの方に感じてほしい。

発達障害の方や子が、より過ごしやすくなるように、こうした確かな科学的な研究、技術開発が進んでほしい。

そんな期待がふくらみました。

 

たくさんのLITALICOのスタッフの方たちがていねいに対応をしてくださる体験ワークショップでした。

貴重な機会を頂いて、誠にありがとうございました。

(チャーリー)

 

 

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