岡崎体育のファンクラブの一連の炎上について。金を払うことの是非ばかりが議論されていて,ランキングを利用したその手法の悪辣さに対する指摘が少ない。ここが気になったので書く。この「ランキング商法」は,「絵合わせ」なんかと同様に法律で禁止されるべき悪徳商法だと個人的には思っている。
ランキング商法とは何か。実はググッてもそれをさす用語が見つからなかったので,いま私が名前をつけた。以下のような特徴を持つ販売方法のことである。
2.全体の順位がほぼリアルタイムで把握できる(金額まで可視化されてるとより悪辣)
これがそろうと,購入者間で凄まじい出費額競争が発生する。多くの購入者は正常な判断ができないまま,際限ない出費を繰り返す事になる。販売側は,何もしなくても儲けがどんどん増える状況がうまれる。
特に悪辣なのが,サービスを得られる境界が,上位のまばらな領域ではなく100位とか1000位とか,人数が団子になっている領域に設定されている場合だ。こうなるとあと少し順位を上げればサービスを得られる人間にとって,わずかな金額を払えば追加サービスを得られる,という強烈な誘惑が発生する。本来なら過去に払った金額全体が追加サービスとつりあうかを比較しないといけないのに,差額のみが比較検討の対象となってしまう。既に払った金額がもったいないという感情まで発生してしまうので,追加出費を我慢できる人間は少ないだろう。そうして順位を上げると,今度は落とされた人間が同様の誘惑にさらされる。
肉マイレージでも過去の購入額(厳密には食べた肉の重さ)による追加サービスかある。毎月ランキングも出している。だが3.が違う。追加サービスを得られる条件は順位でなくて固定されたものだ。
肉マイレージのランキングで得られるのは名誉だけだ。1t食べてる1位の人も103kg食べてる250位の人も,得られる追加サービスは「ダイヤモンドカード」で同じものになっている。100kgの肉を食べれば,順位に関係なく誰でも同じサービスが得られる。
#話はずれるが,1t食べてるオフロスキwさんはもっと評価されるべき
金額を競い合い,提示した金額の高い順で購入できる(たいていは1位のみ)オークションは,一見するとランキング商法と同一の構造を持っているように見える。が,順位に入らなかった人間が提示した金額を払わなくていい点が根本的に異なる。これにより「差額の錯誤」がおこらないようになり,購入者の判断がゆがめられることはなくなる。
これも入札の際に実際にその金額を払うようにすると,これはランキング商法と全く同一の構造を持つようになる。周知の通り,これは「ペニーオークション」として大きな批判に晒されている。
実際には,多くの企業は上位の優良顧客に限った特別なサービスを提供している。場合によっては,そのサービスの存在が広く公表されていることもある。しかし,ほとんどの企業は2.のランキングの公表をおこなってはいない。顧客からは,他の顧客がどのくらい出費しているかという情報は隠されている。この場合にも,順位を上げようとする際の錯誤はおこらないため,問題にはならない。
結果によって得られるのが投票者本人の利益ではなく,投票者の支持するアイドルの利益になっているが,じつはランキング商法と同じ構造になっている。利益の源泉が1位のセンターを決めるところではなく,実際には選抜メンバー入りをかけた戦いの部分になっているところも悪辣さ加減が高い。
過去に,なんかのソシャゲで課金額のランキング順位による特別なサービスが企画され,猛烈な課金競争が起きて批判を浴びた事例があったと思う(検索したけど見つからなかったので見つけた人は教えてください)。
このような商法は,業界で自主規制されるべきだし,それが無理ならば法律で規制されるべきだ。岡崎体育のファンクラブは,特別サービスを「上位○人」ではなく「ポイント○以上の人」という絶対値に変えるべきだ。