シェアリングエコノミーの代表として、急成長を遂げてきた配車サービスのウーバーは、2017年に数々の試練に直面した。中でも、CEOだったトラビス・カラニックの失言、セクハラ報道などは大きな問題となった。シリコンバレーでも注目の成功企業を育てたトラビス・カラニックは、どうつまずいたのか。世界的ベストセラー『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』の著者、ブラッド・ストーンの新刊『UPSTARTS UberとAirbnbはケタ違いの成功をこう手に入れた』から、一部を抜粋して連載する。
UPSTART(アップスタート)とは、成功を収めた人物で、経験豊富な年長者や確立された手法をあまり尊重しない者のこと。そう、シリコンバレーの破壊者たちのことだ。シリコンバレーで最も注目を集めるウーバーとエアビーアンドビーの2社のこれまでとこれからを追った。
著者:ブラッド・ストーン
ブルームバーグニュースのシニアエグゼクティブエディター。ニューヨーク・タイムズ紙ベストセラー『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』(日経BP社)の著者。15年以上にわたり、シリコンバレーについて報道してきた。カリフォルニア州サンフランシスコ在住。著者のウェブページは、http://www.brad-stone.com/
ウーバー前CEO、トラビス・カラニックから離れていく人は彼との関係でなにがしか傷ついており、暴露話を記者に語ったりしがちだ。実際、カラニックの失脚を早めたと言える騒ぎが起こった。
インドのデリーでウーバー運転手が26歳の乗客をレイプした2014年12月の事件にまつわる医療記録を、ウーバーのアジア事業を統括するエリック・アレクサンダーが不正に入手し、所持していたと、ブルームバーグとテクノロジー系ニュースサイトのリコードが報じたのだ(ブルームバーグの記事を書いたのは私の同僚である)。
この事件は、エミル・マイケルの友だちでずっと一緒に仕事をしてきたアレクサンダーの証言もあり、加害者は終身刑に処され、ウーバーは被害者に350万ドルを見舞金として支払うという形で決着した。それほどの大事件だったわけだが、アレクサンダー、カラニックをはじめとするウーバー幹部は、医療記録を入手・閲覧しただけでなく、インドにおけるウーバーのライバル、オラ社の陰謀ではないかなどとばかげたことを真剣に考えていたことがブルームバーグとリコードの記事で明るみに出た。
社外と同じくらい社内にも激震が走った。ある幹部社員はこう語っている。
「社内で爆弾が爆発した感じでした。(この件が報じられたあと)だれも出社しませんでした。みんな、いなくなってしまったのです。越えてはならない一線を越えてしまったと、みな、思ったのです」
早い段階でウーバーに出資したある投資家は、このスキャンダルが表沙汰になった直後、妻にこう言われたという。「私はウーバーを削除しますからね。子どもたちにも削除させます。あなたもそうすべきよ」
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