「災害と疫学」テーマに議論

集団での病気の発生原因などを研究する日本疫学会の総会が3日、福島市で開かれ、福島県内では原発事故に伴う避難生活で肥満と診断された人が大幅に増えていることや、福島で行われている子どもの甲状腺がんの検査について議論されました。
日本疫学会の総会は、「災害と疫学」をテーマに福島市で開かれ、集団での病気の発生原因や予防などを研究する研究者など、650人余りが参加しました。
シンポジウムでは、県立医科大学の大平哲也教授が、原発事故で避難を余儀なくされた人では、心筋梗塞などの一因になる肥満と診断された人の割合が、事故後2年で震災前の1.3倍に増えるなど、全国平均を大きく上回るペースで健康状態が悪化していることを報告し、研究者と行政が連携して、被災者の健康維持を図ることが重要だと呼びかけました。
また、大阪大学の祖父江友孝教授は、原発事故当時に18歳以下だったおよそ38万人を対象にした甲状腺がんの検査について、「診断が進む一方で、治療の必要がないのにがんと診断される不安も大きな課題になっている」と指摘しました。
これに対し、出席者からは、「悩む患者のために診断に応じた手術の時期を明確に示すべきではないか」といった意見が出されていました。
学会では、今回のシンポジウムの議論を、福島やほかの被災地での被災者の健康を守る研究に生かすことにしています。