世界的にリベラル民主主義の価値が減退する一方で、中国のパワーが増大している。実際、海外において中国の影響力はどれほど高まっているのか?
年末に初めてカンボジアを訪れ、華語学校1や華人2のコミュニティを見て回った。筆者は現代中国研究を専門としており、東南アジアに関しては全くの門外漢だが、視察から見えたことを書いてみたい。
日本人にとってカンボジアといえば、カンボジア内戦後に設置されたUNTAC(国連カンボジア暫定統治機構。
1992年にパリ和平協定に基づいて設置)やその後のPKOヘの初の自衛隊派遣、さらにはODA(政府開発援助)やNPO(非営利団体)を通しての協力を思い浮かべるだろうか。
そして、親日国のはずのカンボジアが、最近は中国に取って代わられているというイメージもあるのではないだろうか。
実際に、内戦後長く、カンボジア最大の援助国は日本だった。しかし、カンボジア中央銀行の報告書は、「2010年より中国がカンボジアの最大の援助国」と記している。
ただし、中国の援助の中心は有償協力だ。中国への負債が占める割合は、2011年に24.4%であったのが2016年には53.7%に増加し、中国への依存が年々高まっている。
中国はカンボジアにとって最大の貿易相手国であり、海外直接投資額も、中国が群を抜いて一位(2016年は約5億200万ドル。香港を加えると約7億5100万ドル)で、二位の日本(1億9900万ドル)、三位のベトナム(1億8400万ドル)を大きく引き離している。
このように、中国はカンボジアにおいて、援助、投資、貿易のいずれにおいても他を圧倒しているが、「見せ方」が上手いことでも話題になっている。
例えばプノンペンでは、国際協力機構(JICA)が基礎調査や社会実験を行った上で、2014年にバス公社を設立し、公社が中国企業に委託して、路線バスの運行を開始した。
だが、公社の経営はうまくいかず、中国企業が撤退したため、日本は改めて公社の運営改善を支援することになった。
そのような経緯があるというのに、2017年7月、中国政府はバス100台をカンボジアに贈呈した。そして今やプノンペンでは、「中国援助 CHINA AID」と大きく書かれたバスが頻繁に見られるようになった。