ADHDの息子に社会常識を教えるために使った「意外な方法」 まるで宇宙人に諭すように…

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宇宙人に地球人の優しさを伝授せよ!?

発達障害がある子の育児は、「オモシロイ!」と思うことがたくさんあります。
いや、もちろん育てにくいですし、障害特性が原因でイライラさせられることが多くて大変!それでも「オモシロイ!」と肯定的に思えるようになってきたのは、息子が理屈を理解しはじめた小学校6年生頃からだったでしょうか。

小学校中学年頃までは、自分の話したいことは何時間でも話すのに、人の話を全く聞いてくれなかった息子。伝えたいことがあっても、意志の疎通すらうまくいかないもんですから、

「私は一生子どものことで悩み、苦しんで死んでいくんだわ…。あぁしんどい人生…」

なんて思っていたものです(涙)

そんなザルの耳を持つ息子でも、小学校高学年になって物事の道理が分かりはじめると、成長が見えはじめました。

そんな息子の成長を見守る日々は、誤解を恐れずにぶっちゃけるなら、

“愛について知らないヘッポコ宇宙人に、「地球人は思いやりや感謝を持って人と繋がり、支え合って暮らしているんですよ」と丁寧に教え込む日々“

といった感じでしょうか。失敗しながらも、徐々に地球に順応していく様がオモシロイんですよね。

ただし、宇宙人に地球の思いやりを教えるのには、少々コツがいります。


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私が息子を宇宙人扱いしてしまうのは、教えたことや注意したことに

「オレにはその考えがないから分からないな」
などと、あり得ない反論をしてくるからです。

例えばある日、友だちとトラブルがあったという話をしてきたので

「周りにモンクばかり言っていないで、困っている人がいたら積極的に親切にしなさい」

と諭しました。すると息子は

「無条件に誰かに親切はできない!そんなの損じゃないか!」

と、損か得かというヘリクツで反論してきて、私をキレさせたんですよね(涙)

そこで私は、敢えて息子側の視点に立って、

「それは違う!人に優しくするのは得なことだ!」

という“損して得取れ”の話を、図で説明してみました。

「親切は巡りめぐって、数年後に何倍にもなって返ってくるもんだ。だから普段から人に優しくしなさい」

という話を図解したわけです。

「フンッ。そういうもんかね?」

と腕組して聞いていましたが、“お得”というキーワードを提示すると、少し耳を傾けてくれる息子なのでした。

必殺!恩を仇で返す!

“親切”が理解できないといえば、こんなこともありました。

それは、少しずつ話し合いが出来るようになってきた小学校5年生のときのことです。
忘れ物キングの息子は、習字道具をたびたび忘れるので、その都度近くの席の女子に道具をシェアしてもらっていました。

しかし、筆を汚れたまま返すなど道具の手入れを怠ったために、ある日「キレイに使ってくれないから、もう貸したくない」と断られてしまったのです。


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普通の人なら「そんなに嫌な思いをさせていたのか」と反省したり、「今までごめん!次からは絶対にキレイに洗うから!」と謝ったりしますよね?

でも息子の場合は、

「道具の取り扱いに不満があったのなら、ナゼもっと早く言ってくれなかったのか!今になって突然言われても、あてにしていたから困る!」

といった、非常に身勝手な怒りが芽生えちゃうわけです。

この件を担任の先生から聞いた私は、息子の身勝手さに心から呆れたのでした。
そこで当然、親として

「親切にしてくれた子に逆ギレするとは何事かッ(怒)」

と説教しました。しかし息子は

「筆が汚いくらい、オレだったら気にしない!怒るほどのこと?」

と、相手の気持ちを全く理解できていない様子でした。

そこで息子の話をよく聞いてみると、

「一度人から受けた親切は、その後もずっと継続されるものだ」

と思い込んでいることが分かりました。相手にも感情や立場があることが抜け落ちているんです。

そもそも、自分が忘れ物をしないように気を付ける努力はせずに、「借りればいい!」とあてにしすぎていることも、大きな問題です。

結局このときも、


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とイラストにして、人の心がどう揺れ動くものなのかを細かく教えた母なのでした。

チャンスを逃さず道徳の授業開講!

発達障害の特性で、息子は自分以外の人の気持ちを考えることが苦手です。ですから我が家では、何か問題が起こったときに「今だ!」とばかりに“道徳の授業”を開きます。その出来事に意識が向いているうちに、息子の気持ちや相手の子の気持ちをねちっこく話し合わないと、認識のズレを修正できませんから。

発達障害がある子は、「わざと悪さをしている」などと誤解されることがよくあります。でも、多くの場合は息子みたいに、

「この年齢だったら、この程度の一般常識は理解しているだろう」

という普通レベルに達していなくて、意外と何も分かっていないんですよね。
自分以外の人に興味がないので、他の人の所作を考察したり取り入れたりしませんから、認知にズレが出ているんじゃないかと思います。

私の著書『うちの子はADHD 反抗期で超たいへん!』でも描いていますが、中学生になった頃に、“真夜中に大音量で音楽を聴いてしまう”というトラブルもありました。


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このときも、息子の言い分を聞いてみると、「音楽というのは、自分が心地よく感じる音量で聴いていいものだと思っていたから」という主張で、近所迷惑には全く考えが至っていませんでした。

そんな息子にポカ――ン=☆

夜は静かだから、音が響くこと。近隣から聞こえてくる騒音は、不快なものであること。この時間は寝ている人がいて、大きな音は眠りの妨げになること。

中学生にもなって、そういう常識を何ひとつ知らなかったことが分かりました。

他人に興味がない息子は、常識を知らないどころか、

「そんなの気にしたことねーよ」

とか言うんですよ!?ガックリです(涙)

怒りを数値化してグラフに!?

他にも学校で起こったトラブルで、物の道理を教えるのに困ったことがありました。
ある日、いつも周りに迷惑かけている息子と、普段は穏やかなA君が、タイマンの口喧嘩でクラスを騒がせ炎上してしまいました。

「A君はみんなから怒られなかったけれど、オレはみんなからブーイングを受けた」

そう怒りながら帰宅した息子。

大人の社会でも「ソレあるあるあるーーー!」ですので「仕方ない!よくあることだ!」と伝えたら、納得できずに暴れだしちゃいました(汗)

でも世の中あるじゃないですか。同じことをやっても怒られない人と怒られる人って!

それって、日頃の行いを見て周りが判断しているわけですよね。“発達障害の特性”という理由はあるにしても、怒られるキャラクターになってしまった責任は自分にあるわけです。日頃から人に親切にしていたり、怒らないように自制できる人であったら、いざという時に周りの人の見方も変わります。

そのことを説明しておきたかった私は、難しすぎて息子には分からない部分をグラフにして、見せながら説明しました。

息子は“人の話を落ち着いて聞けない”という特性があるので、難しい話は図や絵を見せながら視覚的に説明すると理解しやすいからです。


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やっぱり悔しそうな顔はしていましたが、

「A君みたいに怒られないタイプは、自分と何が違うのか?」

と、自分と他人の違いを気にするきっかけになってくれればいいな~と思ったのでした。

平等って、結局何だろうね……

こうした“息子が納得できないトラブル”が起こった場合は、私が一方的に説明するだけでなく、息子の気持ちをしっかり聞くようにもしています。インタビューするみたいに質問を重ねていくと、「平等に対するこだわり」から生じた問題だと分かってきました。

こだわりに固執して譲ることができないのも、息子が抱える発達障害の特徴のひとつです。例えば息子は、物を半分こするときも“同じ体積にすること”に異様にこだわります。人間関係も、

「自分に向けられる思いやり度が、周りと同じでなければズルい!」

という考えのようです。

そんなふうに他人に厳しい息子本人は、いつでも先生やクラスメイトにフォローしてもらっているのにな~。厳しい扱いだけでなく、たくさん支えてもらってもいるのにな~。

なんて思うんですけどね。そこが見えない、理解できないのが難しいトコロ。
いつか気がついてくれる日が来るかしら…。

どうか、早く周りの優しさに気がついておくれ~!と祈る母なのでありました。

編集:森祐子