フワージャ・ラワーシュ団地は、アフガニスタンの首都カブール郊外、カサバ地区に2017年に完成した共同住宅で、約9000人が暮らす。入居者は海外からの援助と軍需景気で2001年以降に急増した中間層の人々だ。彼らにとって、治安の良さがこの団地の一番の魅力である。カブールの中心部ではタリバンによる脅威が高まっているからだ。
水道やセントラルヒーティングを完備するこの団地は、薪ストーブの煙が充満するスラム街とは別世界といえる。カサバの自由で安全な社会を象徴するように、女性たちは自由に外出して、アイスクリームを食べながらおしゃべりに興じる。
何十年も続く内戦が、カブールを形作ってきた。市街地では現在、自爆犯によるテロが激しさを増し、北大西洋条約機構(NATO)の装甲車が警戒のために走り回っている。カブールの外交区域は「グリーンゾーン」と呼ばれる安全地帯にあるが、NATOや米軍司令部、各国の大使館をすべて収容するため2倍以上に拡張されつつある。新たに設けられる「ブルーゾーン」には、市街地の大部分が含まれ、交通規制がかけられる予定だ。もはやアフガニスタンの一般市民は、大統領府など街の主要な建物に近づくことさえできない。
ある日の午後、団地の住民は不吉な光景を目にして立ちすくんだ。白い煙がゆらゆらと立ち上っている。山岳地帯から北に向かって反政府武装勢力タリバンが放った迫撃砲が、近くの空港を直撃したのだ。
タリバンと欧米諸国の支援を受けた政府軍との戦闘が激化すれば、カサバの平穏も脅かされかねない。住民の一人はカサバの今後を心配している。「この地区も、戦いに巻き込まれる危険はかなりあります」
※ナショナル ジオグラフィック2月号特集「カブール 中間層の暮らし」は、アフガニスタンの首都郊外に暮らす中間層を描いたフォトストーリーです。