ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

断言する、モンハンは作業ゲーじゃない。

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ひろゆき「例の素材を繰り返して出すしか無いんだよ オンラインゲームって」

ひろゆき「同じことの完全繰り返し、マラソンですよ。はい爆弾置きましたー。罠置きましたー。ってさグルグルマラソンするだけじゃん」

ひろゆき「それを超えられると思わないんだけど、もし超えてたらやりたい」

 

このブログを読んでくれてる方なら多分知ってるけど、私は『モンスターハンター』というシリーズが好きだ。

なので当該シリーズの評価が贔屓目なのは否めない。だけど、このひろゆき氏に限らず、うんざりするほど耳にする「『モンハン』は作業ゲー」という意見は、単純にゲームを評価する客観的な立場でも、的外れな意見と断言させてもらう。

 

そもそも、引用したひろゆき氏の意見は、およそゲーム全般に飽きたがための意見だろう。「『スプラトゥーン』も同じ、だけど対人だからマシ」とすら言ってるし。興味ない人にとって、ゲーム(というか趣味全般)が作業になるのは仕方ない。

けど、素材のために同じクエストを何度もこなす、どのクエストも究極的にモンスターを倒すだけ、アイテムを活用したりPT組んで狩る、こうしたことを指して「作業ゲー」と言っているなら、噴飯物の理屈だ。

第一、それなら世間の8割のゲームは作業ゲーだ。よく「モンハンは作業ゲーだから世界で売れない」と言う人間がいるが、彼の地で産まれ、無数のクローンを生み出した傑作『Diablo』は同じことの繰り返しではないと言えるのか。

 

さて、「作業ゲー」の定義は置いておいて、私は『モンスターハンター』は現状最も純粋に3D Melee Actionを研究したゲームシリーズの1つとして評価している。

3D Melee Action、とは文字通り3Dアクションから、Melee(近接攻撃)による剣戟に特化したアクションゲームを指す。モンスターハンターはこれを独自に進化させ、「ハンティングアクション」と定義したもの、と私は捉えている。

一方、3Dアクションは最もメジャーなジャンルながら、ACTを部分的に活用した作品が多い。RPGと組み合わせたARPG、ADVやパズルと組み合わさったもの、加えて、ロックオンして連打すればOKという簡易的なアクションゲームがACTジャンルの大部分を占めているのが現状だ。*1

こうした3DACTを取り巻く現状は、海外で言うFPSやTPSの潮流に近いと個人的に感じている。演出を強化した『COD』や、他ジャンルを取り込んだ『Pray』に対し、『モンスターハンター』は『DOOM』や『Serious Sam』に近い、純アクションゲームといえるだろう。

 

モンハンは徹底してアクションゲームとしての駆け引きを追求している。「敵の攻撃をいなし、自分の攻撃を叩き込む」…。ただこれだけの戦略に、無数の武器と、無数のモンスターを、絶妙なバランスで調整することで、何度遊んでも飽きない深みを与えている。

例えば、「攻撃をいなす」にしても、ガードする、回避する、そもそも当たらない位置に陣取る、という3パターンの行動がある。どれを選択するにしてもメリットデメリットがあり、武器によっても選択肢が異なる。

モンスターの攻撃はどれも厄介だ。遠距離まで届くブレス、近距離を薙ぎ払う尻尾攻撃。常に敵の攻撃を読み切り、着実な手段でいなす。ハンターと同じく、モンスター毎に得意とする戦法は異なるので、彼らの「癖」を読んで先手を撃つ快感は、正しく狩猟そのものと言える。

「攻撃を叩き込む」ことに関しても、本作は様々な「深み」がある。弱攻撃、強攻撃の使い分けは無論、コンボによる連撃、スタミナの管理、ゲージやビンや装弾数の維持など考えながら、常に敵の弱点を叩く。武器によって立ち回りは全くことなり、大剣のドデカイ一撃、双剣の華麗な連撃、操虫棍の的確な乗りサポートなど、考える立ち回りや、その武器での達成感もまるで別物だ。

更に、モンスターの部位毎にダメージが異なり、かつ部位破壊による追加報酬を鑑みて、常にどこを叩くべきか考える。最優先は頭だが、当然リスクが高い。尻尾は低リスクだが当てづらい。足の連撃では致命傷にならないが、確実に削れる…など。

ひろゆき氏はバカにしていたが、モンスターのために罠や爆弾を用意するのだって楽しい。これは単なるアクションでなくハンティングアクション。ハンターになりきって、ハンターノートとにらめっこして、強力なモンスターに備えてアイテムを揃えて対策する。

そして最後に、本作醍醐味のマルチプレー。複数人で狩ることで、状態異常や部位破壊のような自分の貢献が他人に見える上に、味方を攻撃しないよう工夫する余地も生まれる。元々硬派なアクションゲームだけに初心者にとってハードルが高い本シリーズだが、皆でワイワイ狩るという余地も残しているのが特徴だ。

 

さて、「モンハンは作業ゲー」という意見の多くは、特に上手くなろうとせずPTでフルボッコにしているプレイヤーか、本作を完全攻略したTA勢の2パターンかと思う。

前者はともかく、後者が『モンハン』というシリーズを好きになれないのは理解できる。実際、このゲームは奥深いだけに、覚える知識やこなすアクションも多く、楽しむには少なからず習熟が必要。あらゆるゲームがそうであるように、人を選ぶ作品なのは間違いない。

けど、特に考えずPTでフルボッコにした上で「作業ゲー」と断ずる評は迷妄の類だ。『MGS』のEAZYモードで「ヌルい」と言うほどにナンセンスだろう。PTなら簡単にクリアできるのは、一種の救済策だからだ。なまじ4人PTとしても、個人が上手ければプレイの質は格段に上がるのだが。

まして、適当にロックオンして連打するだけで勝てるアクションゲームが横溢する中、本作がそういった誹りを受ける謂れはない。「ターン制」と言われることがあるけど、それはアクションに限らずシューターですら同じなわけで。(特にカバーTPS)

こうした例に限らず、モンハンを「友達とのコミュニケーションツール」とも言われるけど、そういう側面があるだけで、本作はあくまでカプコンが打ち出しているように「ハンティングアクション」だ。一人で狩る、複数で狩る、大剣で狩る、弓で狩る。それも全てハンティングアクション、という懐の深さに過ぎない。

 

さて、本作は全面的に『モンスターハンター』とは何かという観点から、純粋なMeleeアクションゲームとしての質の高さを考察した。

無論、作品毎に色々欠点はある。特に初期はベースが良くても、操作性やカメラ、バランスに関しては不出来もいいところで。『2』で武器間のバランスが狂ったと思ったら、『3』で一斉削除されたり。携帯機ではスペック不足か、狭いマップで窮屈な戦闘を強要されたり、シリーズ毎にイマイチ進歩が見えなかったり。

こうした点は、先日発売された『モンスターハンターワールド』で大きく改善され、ハンティングアクションとして完成されたと考えている。その話についてはまたいずれ。

 

www.nicovideo.jp「極めていく」過程が一番面白い3Dアクションゲームだと思う。

 

*1:無論全てではない。『鬼武者』『デビルメイクライ』を始めとするカプコンの無数のタイトルを基点に、Team Ninjaの『NINJA GAIDEN』、プラチナ『ベヨネッタ』、SCE『ゴッド・オブ・ウォー』、フロム『アーマード・コア』など。こうした作品の中でもトップの売上を誇るのは『モンハン』だが