上杉周作
仮想通貨業界で話題の「テザー疑惑」を調べた「テザーレポート」の和訳。本当にテザーがビットコイン価格を吊り上げているのか?
いわゆる「テザー疑惑」が話題ですが、テザーの価格が、ビットコインの急落と緊密に連動していることを示した匿名レポート「テザーレポート」を、統計知識ゼロのぼくが連続ツイートで読んでみました。
テザー疑惑について、執筆時点で最も良いまとめはこちら → 仮想通貨「テザー」の疑惑が本当なら、市場が崩壊するかもしれない──信頼性を損なう“事件”が続発。記事より抜粋:
暗号通貨(仮想通貨)は、その不安定さからFUD(恐怖・不安・疑念)が支配する世界だ。そして現在、なによりもFUDを煽っているのが、Tether(テザー)という独自通貨である。
ビットコインをはじめとする多数の暗号通貨とは異なり、Tetherはいわゆるステーブルコイン(価値が変動しないよう設計された通貨)だ。大半の暗号通貨が激しい価値変動の影響を受けやすい一方で、Tetherは米ドルの価格に連動していることを謳っている。ビットコインとドルの取り引きを銀行で行うことは厄介で費用もかかりがちだが、Tetherはシンプルかつ低コストで、スピーディだ。
ところがこの数週間、懐疑論者たちがTetherのほぼすべての側面に一斉に疑問を投げかけている。その疑惑とは、流通するTetherの総額が、運営会社(通貨と同名のテザー)が保有する米ドルの総額と本当に合致するのか──という点だ。
もしテザーが本当に流通額と同額の米ドルを保有しているのであれば、理論上は保有者全員がいつでもTetherを同社に売り戻し、同額のドルを入手できる。この信用こそが、Tetherの米ドル連動制を支えているわけだ。
揺らぐTetherの信頼
Twitterや掲示板のReddit、ブログ、そして先日開催されたビットコインカンファレンスなどでは、外部監査を通じて米ドルの準備高をテザーが証明するよう求める声が噴出していた。テザーはその要求に応じていないうえ、同社の監査に向けて準備していた監査法人フリードマンLLPとの関係を打ち切ったという噂を公式に認めた。
『ブルームバーグ』は1月30日(米国時間)、米商品先物取引委員会がテザーに召喚状を送付したと報じている。同社の広報担当は「当社は定期的に捜査当局の法的審査を受けており、監督機関も調査を行っています。このような要望に対して一切コメントしないのは当社のポリシーです」としており、そのほかのコメントを控えている。
もし流通額と同額の米ドルを保有していないなら、理論上はテザーはいくらでも通貨を発行できることになる(これとは対照的に、ほかの暗号通貨は厳格かつ予測がつくルールに従って新しいトークンを生成する)。ほかにも、ビットコインの価格下落に合わせたタイミングでテザーが新規の通貨を発行し、Tetherを使ってビットコインを買いあさる──といった可能性も指摘されている。
一部の観測筋は、こうした購入行動が結果的にビットコインの価格をつり上げているのではないかと指摘している。ウォールストリートの元トレーダーで、現在は暗号通貨の新興企業各社に投資してコンサルティングを行うジル・カールソンは、次のように語る。「ビットコインなどの暗号通貨の普通ではない価格高騰は、Tetherが何もないところから発行されたことが原因の可能性があります。これは重大な懸念材料です」
もし投資家がTetherに不信感を抱けば、暗号通貨版の取り付け騒ぎに発展する可能性がある。また、Tetherは暗号通貨取引所の安定化に貢献している。その崩壊は、一部の取引所を完全停止に追いやり、数十億ドルもの資産を一晩で消失させ、ビットコインなどの新技術に対して高まりつつあった一般の関心を損なう可能性がある。
(中略)
テザーは昨年9月、監査の代わりと称して準備金の存在を実証するという文書を公表した。だが、提携金融機関の欄は黒く塗りつぶされていた。それ以来、Tetherの流通総額は4億5000万USDTから、22億8000万USDTへと約5倍に増加している(USDTはTetherの単位)。テザーは、この1月だけでも8億5000万USDTを新たに発行している。急ピッチで新たなTetherが発行されていることから、テザーの目的に関する疑惑が高まっている。
先週、Tetherの新規発行に関する統計分析が匿名で公開され、暗号通貨の業界で広まり始めた。このレポートは、ここ1年で新しいTetherが発行された時期が、ビットコインの急落と緊密に連動していることを示唆している。これまでも指摘されてきたことだが、それを裏づける重要な数字も出てきた。
今回はこの「Tetherの新規発行に関する統計分析」を翻訳しました。
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上杉周作と申します。日本とアメリカ育ち。シリコンバレーのエンジニアです。
プロフィール
1988年日本生まれ。カーネギーメロン大学卒。学位はComputer Science学士・Human-Computer Interaction修士。Apple・Facebook・Palantirでエンジニア職、Quoraでデザイナー職を経験。その後半年間日本でニートになり、2012年9月よりシリコンバレーの教育ベンチャー・EdSurgeに就職。2017年1月に退職して1年間、世界を旅する。NHK「ニッポンのジレンマ 2016年元日SP」「クローズアップ現代+」に論客として出演。
- メール: shu@chibicode.com
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