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アルミニウム合金は軽量だが強度が弱いというイメージは過去のものになりつつある。パーデュー大学の研究チームは特殊なナノ構造を採用することによって、ステンレス鋼並みの機械強度を持つ超高強度アルミニウム合金が製造できることを明らかにした(Li et al., Adv. Materials online Jan. 22, 2018)。
この新しいアルミニウム合金は積層欠陥を結晶中に導入することによって高強度を持たせるところが特徴である。アルミニウムでは積層欠陥の生成エネルギーが高いめ、大量に導入することはできない。また積層欠陥が並んだ9R相と呼ばれる双晶境界の導入も困難であった。下はPd膜の9R相のTEMイメージ。
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研究チームは9R相についての研究で知られており、今回の研究ではナノドメインに9R相を導入する技術を開発したことで、機械的強度の向上が可能となった。マグネトロンスパッタリングでアルミニウム格子に鉄原子を注入することで、9R相が導入できることがわかった。その結果、ナノ双晶を導入した新型アルミニウム合金の機械的強度が飛躍的に向上し、ステンレス鋼と同程度にまでになった。
機械的強度の増大は分子軌道計算でも確認され、9R相導入プロセスも理解が進んだため、軽くて高強度のアルミニウム合金はステンレス鋼を置き換えることで自動車産業など多くの工業製品の軽量化につながると期待されている。