昨年12月に沖縄自動車道で発生した車6台が絡む事故で、はねられて意識不明の重体となった在沖米海兵隊の男性曹長について、産経新聞が「日本人を救助した」「勇敢な行動」と報じ、沖縄2紙を「無視を続けるようなら、報道機関を名乗る資格はない」などと批判した。ところが、米海兵隊も県警も、救助の事実を確認できていないと本紙に回答した。県警は産経新聞から取材自体を受けていないといい、事実を確認しないまま2紙を批判した可能性が高い。産経新聞広報部は「継続して取材を進めている」と述べた。

(資料写真)産経新聞東京本社

 事故は昨年12月1日、沖縄市知花の自動車道北向け車線で発生。曹長は前方の車に接触後、路肩に車を止めて降り、道路にいたところ後方から来た車にはねられたという。車両6台が絡み、うち1台は横転した。

 本紙は事故後、事故処理や捜査に当たる県警交通機動隊や交通指導課に取材。曹長が路上で何をしていたのかを尋ねたが、「確認できていない」と回答を受け、事実関係のみを翌日紙面で報じた。

 インターネットの「産経ニュース」で同月9日に掲載された産経新聞那覇支局長の署名記事は、曹長が横転車両の男性運転手を車から脱出させ、「自身を犠牲にしてまで日本人の命を救った」などと伝えた。沖縄2紙を「米軍差別」「日本人として恥だ」と批判した。

 12日付の産経新聞紙面も「日本人救った米兵 沖縄2紙は黙殺」との見出しで、救助に当たった曹長の回復を祈る運動の広がりを紹介する続報を掲載。これらの記事はネット上で拡散され、本紙に抗議の電話なども寄せられた。

 県警によると、車から助け出された男性は「日本人2人に救助された」と話している。交通機動隊や交通指導課は産経新聞の取材を受けていないという。

 海兵隊も「現場にいた目撃者によると、曹長は事故に巻き込まれた人々の状況を確認するため、道路脇に止まった後にはねられた」と説明。「目撃者の中で、曹長の救助活動を確認できた者はいなかった」と答えた。米カリフォルニア州の医療施設に転院した曹長の容体は現在安定しており、リハビリを続ける予定という。

 産経新聞広報部は「取材に関することにはお答えしていません」とした上で、「必要と判断した場合は記事化します」とコメントした。