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蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
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教えてD先生! その4

D「本日もやってまいりました教えてD先生のお時間です」
冥「本日も……。気づけばこのコーナーも4回目ですか。こんなコーナーが……」
D「私の貴重な出番ですもの。回数が増えるのは非常にいいことです」
冥「ああ。はいはい」
D「それでは、今回はちょっとずつ情報開示していきましょう」


Q、n%I=Wについて


D「転生者専用お助けスキルです。その実態は本来システムの適用外である転生者に、その恩恵を授けるための補助器具ですね」
冥「これがないとどうなるのです?」
D「ステータスもスキルも何にもないただの人間として、あの世界に放り込まれます」
冥「ただの人間ですか」
D「ステータスやスキルの補助がないので筋力や体力、知力もTHE人間。システムの恩恵を受けた現地人からしてみれば、貧弱極まりないでしょう。下手したら子供にも殴り負けるんじゃないですかね」
冥「それで魔物とかいるわけですか。普通に死ねますね」
D「あとは、システム関連の言語を日本語に翻訳する機能がついております。鑑定結果や天の声(仮)が日本語で表示されたり聞こえていたりしたのはそのためです」
冥「そうでないと現地の言語を覚える前は何が何やらわからないでしょうからね」
D「ちなみに、若干ではありますがスキルの取得やステータスの上昇値にボーナスがついています。まあ、誤差の範囲内なのですが」
冥「そうなのですか? てっきり転生者がやたら優れているのはあのスキルのせいだと思っていたのですが」
D「あれは転生者が優れているというよりかは、現地人が劣っているのです。片やシステムに酷使されて魂が劣化しまくった現地人。片やそんなものとは無縁で高校生になるまですくすくと育った魂をそのまま使った転生者。より優れているのはどちらかといえば答えは明確でしょう」
冥「ああ。それは確かに」
D「大昔、システムが稼働した直後であれば転生者に対抗できる現地人もゴロゴロいたでしょうが、劣化してしまった今、相対的に転生者が強くなっただけのこと。その大昔から生き続けている魔王アリエルのステータスを思い出せば、昔がどれだけ修羅の世界だったのかよくわかるでしょう。まあ、彼女のそれは長年の研鑽あってのものなので、あんなエグイのがゴロゴロいたわけではありませんが。せいぜいステータス4桁がゴロゴロいたくらいです」
冥「それでもステータス4桁くらいはゴロゴロいたわけですか。何それ怖い」
D「少々脱線しましたが、n%I=Wは転生者を補助するための装置です。死ねば転生者の魂を通常の輪廻の輪に戻して、その役目を終えます。まあその前に私がゴニョゴニョ……」
冥「え? なんですって?」
D「ナンデモアリマセン」
冥「怪しい……」


Q、D先生、転生者が地球に来たら受け入れてくれますか?


D「もちろんです。バッチコイですよ!」
冥「それはそれで面白そうとか考えてるんでしょう。まったく」
D「まあ、より正確に言うなら私は来るもの拒まず、去る者逃がさずです。来る者は拒みません」
冥「そこは去る者追わずじゃないんですか?」
D「イヤですねー。私が面白そうなネタを逃がすはずがないじゃないですかー」
冥「転生者の方々は地球に行かないほうが幸せですね」


Q、神についてあれこれ


D「神にも派閥やら何やらがあって、領土争いをしていることは前にチラッとお話ししたと思います。じゃあ、どうして領土争いなんてしてるのか? 神なんだからそんなちっぽけなことするのおかしくね? と、皆様疑問に思うことでしょう」
冥「星を奪い合っているわけですから、ちっぽけというわけでもないんですがね」
D「それでも神というなんかすごい存在にしてはやってることのスケールが小さい気がする。そう思われるかもしれませんが、星というのは我々神にとって重要な役割を担っているんです。というのも、神に必要なエネルギーを、星が吐き出しているからなんです」
冥「イメージとしては動物と植物の関係に似てますね。動物が吐き出した二酸化炭素を、植物が吸収して酸素を吐き出す。その酸素をまた動物が吸収して二酸化炭素を吐き出す。これと同様に、神は星から排出されるエネルギーを吸収し、星は神が使ったエネルギーを吸収する。実は星と神はそういった共生関係にあるんです」
D「しかし、エネルギーと一口に言っても、実はいろいろと種類があります。星が吐き出すエネルギーにも種類があり、それに適合できる神もまた変わってくる。基本的に生物型の神は地球のように、生物が住みよい環境の星に適合しやすいようです。どの星でも構わない、というわけではないということです。なので、それぞれ適合する星を奪い合う事態が発生します」
冥「適合した星にいるだけで神は安泰ですからね。過去編で龍がサリエルに怯えつつも、居座っていたのはそういう理由あってのことなんです」
D「加えて、星は常にエネルギーを排出しています。星にとってはいらないものですが、神にとっては重要なもの。たとえ適合できないエネルギーでも、加工することは可能ですので、それを排出する星を破壊しようとする神はほぼいません。過去編で龍が星のエネルギーを根こそぎ奪っていったのは、本当に数少ない例外措置だと思っていいでしょう。短期的には莫大なエネルギーを得られても、星がなくなれば当然それ以降エネルギーを生み出してくれなくなるので、長期的に見ればマイナスですからね」
冥「まあ、どこぞの誰かさんは割とポンポン壊している気がしますが」
D「そうですね。どこぞの誰かさんはそんなことお構いなしにぶった切ってますね」
冥「……」
D「……」
冥「この話はここまでにしておきましょう」
D「ソウデスネ」


Q、転生者たち精神年齢低すぎない?


D「これに関しては何とも言い難いですね。いくつか原因は考えられますが、仮説の域を出ません」
冥「珍しく歯切れが悪いですね」
D「私とて何でも知っているわけではありません。むしろ知らないように努力しているくらいです。知りすぎてしまうと、つまらないでしょう?」
冥「そういうものですか」
D「そういうものです。さて、転生者の精神年齢が低いように感じるのは、おそらくですが肉体に引っ張られているのと、環境のせいだと思われます」
冥「肉体はなんとなくわかりますが、環境ですか?」
D「ええ。転生者、特にエルフの里に監禁されていた人々は、籠の中の鳥、変化のない生活を送っていたわけです。変化というのは人を成長させるのに重要な要素です。新しいことがないと人は停滞し、停滞はすなわち成長を阻害します。日本であれば幼稚園に通い、小学校に通い、中学校に通い、高校大学、そして社会人と、肉体の成長に合わせて立場も変わっていきます。この変化が人を成長させる重要な要素だと私は考えています。変化があるから人はそれに合わせる努力をし、学んでいきます。しかし、変化のない生活をずっと続けていれば、成長はできない。ましてやエルフの里に監禁されていた転生者たちはお互いに前世からの知り合いという、刺激のない関係です。彼らが前世の高校生の延長として、停滞したまま過ごしてしまっていたとしても不思議ではないでしょう。というのが私の持論です」
冥「あっているかどうかはともかく、説得力はありますね」
D「あとは純粋に成長しようと努力しているかどうかでしょうか。人は意識して成長しようと努力しなければ、案外子供のままです。子供は時間が経てば勝手に大人になる、というわけではありません。子供が成長できる環境、成長したいと願うことができるようにしてあげなければ、いつまで経っても子供のままです。童心を忘れないといえば聞こえはいいですがね。いい大人でも中身は子供のまま成長していない。成長する気がない。そもそも成長していないという自覚がない。転生者たちは環境によって成長できなかったのではないか。環境によって成長しようという意識を封じられていた、とも考えられます」
冥「珍しく教育論的な真面目な話をしている!?」
D「失礼な。私はいつでも大まじめですよ?」
冥「え?」
D「え?」



D「ということで、本日の教えてD先生のコーナーを終わりたいと思います。それではまた次回」
冥「次回があることは確定なんですか……」

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